「とりあえず主演女優賞くらいはあげないと。」ミッシング sokenbiteaさんの映画レビュー(感想・評価)
とりあえず主演女優賞くらいはあげないと。
この監督、人の嫌な部分を撮るのが本当にうまくて。
嫌な部分、というかそれが人同士のやりとりの中に表れる場面というか。
この映画でも、石原さとみ演じる母親がもう頭から嫌な感じ全開で。
ただそれが、ほんとにそれを狙ってズバリ描いてるのが伝わってくるので、思わず居住まいを正して、そういうものを受け取る気構えを持って見なければ、と思わされました。
見る前はもう少し普通めというか、美人の優しい母親が、突然娘が消えて悲しみに引き裂かれて、みたいな感じを想像してたのですが、全然違いましたね。
そんな、悲しみをおいしく頂く、みたいな上品なものじゃありませんでした。
なので、正直見てる間結構不快です。
それがずっと続きます。
ずっと質の高さがキープされているので、つまり嫌なとこを延々えぐってるので笑、見てる方はもうたまらないです。
ところが、その向こう側に、ごくたまに真に迫った本当の悲しみが映し出される。
これがもうすごくて。
あの、石原さとみの・・・、なんと形容すればいいのだろう、あの声は。
見ているこっちの心まで壊れてしまいそうな。
これから先こんな絶望を映画の中で目にすることがあるだろうか、とまで思えるような場面でした。
日本アカデミー賞なんて、余裕で取るんじゃないですかね?
まあ実際に取るにしろ取らないにしろ、そのくらいの価値があることは誰もが認めるであろう、素晴らしい演技でした。
映画のテーマとしては、形の上ではSNSや報道番組により個人の悲劇がどのように消費されるか、という類のものかと思いますが、自分が感じたのは、逆説的ですが、人を信じる、ないし人の世を信じる、それしか答はないんじゃないか、そして実際それは可能なんじゃないか、ということでした。
百万のNoに、1つのYesで勝てることもある。
そういう種類の話でもあると思うので。
日本アカデミー賞…
前回、ゴジラにばかり賞を与えた挙句、杉咲花に主演女優賞をあげなかったので信用ゼロです。笑
ただ自分の中でも今のところ主演女優賞筆頭は石原さとみ。
ストーリーではなく、人物の感情でこれほど揺さぶってくる作品はなかなかないと思う。