「大変面白く観ました!」はたらく細胞 komagire23さんの映画レビュー(感想・評価)
大変面白く観ました!
(完全ネタバレなので必ず鑑賞後にお読み下さい!)
結論から言うと、今作の映画『はたらく細胞』を大変面白く観ました!
今作は、娘・漆崎日胡(芦田愛菜さん)と父・漆崎茂(阿部サダヲさん)の、体内の細胞などの動きを擬人化して描いた映画です。
永野芽郁さん演じる赤血球AE3803や、佐藤健さん演じる白血球U-1146などの細胞などの抽象的な擬人化によって、そこにさらに他からのイメージが乗せやすい作品になっていたと思われました。
例えば、今回少しドジな役の永野芽郁さんは自身出演のドラマ「ハコヅメ~たたかう!交番女子~」を思わせ、佐藤健さんの動きは映画『るろうに剣心』を思わせ、対決する白血病細胞を演じたFukaseさんは映画『キャラクター』を思わせるなど…登場人物のキャラクター感情のイメージに、過去の出演作品による観客側からの重層化があったと思われます。
他の登場人物も、その人がこれまで演じて来た特徴あるキャラクターのイメージの凝縮があったと思われました。
その上で、私達が2020年から経験した、コロナ禍でのウイルスと免疫についての情報のイメージが擬人化され、体内の細胞の世界の描写に凝縮していたと思われます。
さらに、今もウクライナやイスラエルのガザ地区などで続いている、戦時下での人々の感情のイメージも、白血病細胞や放射線に対峙する細胞たちを通して表現されていたと感じました。
このことは、それぞれ擬人化され抽象化された役だからこそ余白があり、観てる方もそこに様々なイメージを乗せやすかったのが理由とも思われました。
そして体内の細胞世界の上に、現実の、父・漆崎茂を演じる阿部サダヲさんと、娘・漆崎日胡を演じる芦田愛菜さんの、素晴らしい演技が加わっていたと思われました。
阿部サダヲさんと芦田愛菜さんの演技のリアリティと深さは、(細胞世界とは別の)もう一つのしっかりとした柱として、この作品に説得力を映画にもたらせていたと思われます。
そして、娘を想い懸命に働いているのに不摂生になっている父・漆崎茂や、何の落ち度もなく素晴らしい人物であるのに白血病に罹ってしまう娘・漆崎日胡の描かれ方は、人間の矛盾や運命の理不尽さも含めて、人間に対する深い理解があるからこそ描くことが出来たと思われました。
一見するとこの映画『はたらく細胞』は単純な話で、子供向け教養作品にも思われます。
しかしながら、意外にも感銘を受ける作品になっているのは、イメージの重層化と、人間に対する深い理解が根底に流れているのが理由だと思われました。
多くの観客も非常に満足度の高い作品になっていたのではと思われました。
私自身も今作を僭越ながら非常に満足度高く面白く観ました。