「実写で初めて見えたテーマ」はたらく細胞 よっちゃんイカさんの映画レビュー(感想・評価)
実写で初めて見えたテーマ
原作未読、アニメは視聴済。
まずスタッフ陣が最強すぎた。
監督は『翔んで埼玉』等独特なファンタジー世界を描くのに定評のある武内監督、アクションはるろ剣のチーム、CGは白組、という事でこの超人気原作を実写化するにあたって最強の布陣で臨んだ事がよくわかる。
ストーリーの再構築も見事。最序盤の掴みのエピソードは原作エピソードを持ってきて未読者にも既読者にも親しみやすいオープニングにして、オリジナルの人間パートを挟みつつ(おそらく)原作未登場の白血病編に繋げていく構成は巧みとしか言いようが無い。
また、人間パートのドラマをあえてあるあるの単純なドラマにする事であくまで主役は細胞たちであるという事を見せつつ、体内のドラマがある事で、その外側のあるあるドラマの深みもさらに増すという好循環になっている。
そして人間パートで起こった事が体内の細胞側のドラマのクライマックスにも繋がっていて思わず胸が熱くなる。
骨髄移植の際の体内パートの神秘性はこの作品がまだまだ未解明なことも多い生命について描いてる事を思い出させてくれる。
ここまででも素晴らしかったのだが、この作品のもっと素晴らしいのは最後の骨髄移植前の赤血球からの手紙である。
この手紙で体内で懸命にはたらく細胞と現実の我々がリンクしてきて、会社とかそういう規模ではなく、この世界で我々が生きるとはというテーマ性を感じる事ができた。
このテーマはアニメを観ても感じなかったものであり、人間パートも付け足した実写版ならではの産物ではないだろうか。
演者の中ではFUKASEさんの哀しいラスボス役の演技が光る。このラスボスの細胞のストーリーも素晴らしい改変だった。