「絶賛している人は、もちろん献血やドナー登録はお済みですよね?」はたらく細胞 おきらくさんの映画レビュー(感想・評価)
絶賛している人は、もちろん献血やドナー登録はお済みですよね?
まさか病気で苦しんでいる人を感動ドラマとして消費して終わりなんてことはないですよね?
それって人として最低だと思うのですが、大丈夫ですか?
負担が無いといえば嘘になります。
でも、それで人の命が救えるんですよ。
こんなに簡単に他人の命を救えるチャンスってなかなか無いと思うんですけどね。
煽ってすみません。
つい口が滑りました。
ここから、元々最初に書いていた映画の感想です。
漫画は未読でアニメは未見。
数年前、とある病気にかかり、同時期にオリンピック有望選手が同じ病気にかかった影響で日本中が震撼。
その結果、ネットやラジオではその病気についての特集が頻繁に行われ、可能な限り貪るようにチェックしたおかげで、血液についての知識はそこら辺の人よりは自信がある状態で本作を鑑賞。
前半はまるで教育テレビ。
血液についての知識を観客に叩き込む作り。
白血球VS菌のバトルは戦隊ヒーロー風で子供が好みそうな感じだが、専門用語が割と多用されていた印象で、完璧に理解していた人は少なそう。
アクションが予想以上の切れ味で、『るろうに剣心』実写版を想起。
白血球役に佐藤健が起用された理由をここで理解。
前半最大の見せ場は、お腹を壊した阿部サダヲの体内で行われる、便VS肛門括約筋の攻城戦。
便意で苦痛に歪む顔をこんなに長く見せられる映画が、未だかつてあっただろうか?
阿部サダヲの熱演が光る。
劇場では笑いが起きていたが、個人的には「いったい自分は何を見せられているのだろう」と冷めた目で観ていた。
ゲイネタで笑いを取る場面。
昔のテレビや映画では多用されていて、それがゲイ差別に繋がっていたため、最近は見かけなくなったと思っていたので、未だにそういう場面があったことが残念だし、軽蔑せざるを得ない。
Netflixのドキュメンタリー『トランスジェンダーとハリウッド』を観るべき。
中盤から急に重いドラマが展開。
ネットの感想を見ると、子供には見せられないという意見がちらほら。
そういえば映画後半、劇場で子供の騒ぐ声が遠くの方から聞こえていたが、もしかしたら嫌がっていたのかな。
芦田愛菜が病気のことを知る場面で、思わず涙。
さっきまで漏れるかどうかの話をしていたのに…
歳をとって、若い人の将来が閉ざされそうになる話に弱くなった気がする。
ただ、個人的にはこの病気のことを暗く描いて欲しくない気持ちが強い。
昔は必ず亡くなるイメージだったが、医学の発達で今はちゃんと治療すれば助かる可能性が高いと思うので。
この病気を思いっきりお涙ちょうだいの道具にしていて、「なんだかなあ」という気分になった。
終盤は鈍重。
映画内でも医師が説明する通り、治療の目的は「血液の細胞をゼロにすること」なのに、体内では細胞たちが生き残るための活動を『火垂るの墓』のテンションで永遠と繰り広げるので、まるで「血液の細胞をゼロにすること」が悪いことかのように描かれていて、頭が混乱した。
あまりの冗長さに、感動で泣いていた人も涙が引っ込んだのでは?
以上、個人的には気になる点も多い作品だけど、泣いてしまったのは事実だし、エンドロールは今年観た映画で一番良かったし、この映画を通じて献血やドナー登録が増えることを期待して、この評価。
以下、おまけで個人的経験からこの映画で変に感じたところ(という建前で思い出を書きたいだけ)。
①白血球が変異してから1ヶ月後、日胡は学校まで普通に歩いて登校。
その時に鼻血を出して入院することになっていたが、自分は体に違和感を感じた後も無理し続けた結果、1ヶ月経った時にはまともに歩けなくなっていた。
数歩歩いたら失神しそうになっていたので、家から職場までタクシー通勤。
②病気を知った時、日胡は激しく動揺していたが、自分は病名を聞かされた時、「あ、そうですか」という感じだった。
案外そういう人、多いのではと勝手に推測。
一緒に病名を聞いていたうちの親は号泣していたけど。
③裕福ではない家庭なのに、入院してすぐに個室対応なんてあり得るのだろうか?
ドナーが見つかって移植の準備をするようになってから個室に入るイメージ。
④抗がん剤後、日胡はニット帽を被っていたが、眉毛はそのままだったのが違和感。
全身の毛が抜けるので、自分の脚がモデル並みの美脚になっていて、うっとりした記憶がある。
頭の毛を剃らずにシャワーを浴びたら、床が毛だらけでホラー映画みたいになっていた。
⑤長期入院のため、治療は辛いが慣れる。
個人的に本当に辛かったのは、世間話をする相手がいなくて孤独感が凄かった。
その点、日胡は熱心に見舞いに来てくれる人がいて羨ましかったし、恵まれているなあと思った。