劇場公開日 2023年5月5日

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「料理が煮込むもの」ウィ、シェフ! R41さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5 料理が煮込むもの

2025年11月18日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

料理は希望を煮込む──映画『ウィ・シェフ!』を観て思うこと

料理は、人を幸せにする。そんな言葉を、私は何度も聞いてきた。
でも、この映画を観て、その意味が少し変わった気がする。
幸せにするのは、食べ物そのものじゃない。
そこに込められた「生きる力」かもしれない。

カティ・マリーは、一流レストランを去った孤独な料理人。
腕は確かだが、こだわりが強すぎて、居場所を失った。
そんな彼女が辿り着いたのは、未成年の移民たちが暮らす施設。
料理とは無縁の彼らに、カティは包丁の握り方から教え始める。
最初は混乱と笑い。
でも、やがてそれは授業になり、彼らの手は「生きる技術」を覚えていく。

この映画が問いかけるのは、ただの移民問題ではない。
「待っているだけでは、何も変わらない」──そんな無言の言葉が、胸に刺さる。
努力しても救われない者がいる。
強制送還された仲間の写真が、現実の重さを突きつける。
それでも、歩み続けることに意味がある。そう信じるしかないのだ。

カティは最後に笑う。
料理は、人を幸せにする。
幸せにできるなら、フランスに居続けることができる。
そのためには努力が必要だ。
全員が救われるわけじゃない。
でも、希望を煮込む鍋をかき混ぜる手を止めない。

料理は、ただの技術ではない。
人を救う「言語」であり、未来を描く「絵筆」だ。
料理人としての成功を捨てて、移民を救うという使命を認識したカティの決断に、涙が溢れる。

R41
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