劇場公開日 2024年5月17日

「自分も碁はさっぱりで」碁盤斬り 野川新栄さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0自分も碁はさっぱりで

2024年5月27日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

知的

2024年映画館鑑賞37作品目
5月26日(日)イオンシネマ石巻
ACチケット1400円

原作は古典落語
いくつかの変更点は監督や脚本家というよりプロデューサーの指示だろうけど
古典落語にチャンバラというか武士道精神が加わりどうやら笑いの要素は消えてしまったようだ
落語の方は知らないので是非そちらの方も近々鑑賞するつもりだ

監督は『凶悪』『女子の事件は大抵、トイレで起こるのだ。前編後編』『日本で一番悪い奴ら』『彼女がその名を知らない鳥たち』『孤狼の血』『止められるか、俺たちを』『凪待ち』『ひとよ』『孤狼の血 LEVEL2』『死刑にいたる病』の白石和彌
脚本は『ゲレンデがとけるほど恋したい。』『機関車先生』『日本沈没』『クライマーズ・ハイ』『天地明察』『雷桜』『草原の椅子』『彼女の人生は間違いじゃない』『凪待ち』『Gメン』の加藤正人

粗筋
江戸長屋の貧乏浪人柳田格之進は娘お絹と2人暮らし
教養高く器用な格之進は判子作りで生計を立てていた
格之進はあらぬ疑いをかけられ役職を解かれた元彦根藩藩士
碁が上手く目利きがあり生真面目な性格の格之進はドケチで評判が悪い質屋の萬屋源兵衛を碁によって改心させむしろそれで萬屋は評判が良くなり商売繁盛
それがきっかけで格之進と源兵衛は親しくなりたびたび碁の勝負で親交を深めていった
そんな折に彦根藩の梶木左門から格之進濡れ衣の真相を聞かされた格之進は怒り心頭に発する
さらには源兵衛50両紛失の疑いもかけられ武士の面目丸潰れ
お絹の説得で切腹を思い留まった格之進は判子を売るなどして親しかった吉原遊廓の大女将お庚にお絹を預けその代わりとして50両を借り萬屋に渡した
年が変わればお絹は下働きから遊女として店に出ることになっていた
それまでに濡れ衣を着せ妻を死に追いやった仇の柴田兵庫を倒すため江戸を離れた
兵庫もその罪が発覚し役職を解かれ浪人生活を送り各地の碁会に顔を出し賭けで生計を立てていた
滋賀中を探したが見つからず京都にまで足を運んだ格之進は遂に兵庫を見つけ本懐を遂げた
江戸に戻った格之進は紛失した50両が萬屋屋敷の中で見つかったと知りお絹を引き取り約束通り源兵衛と手代の弥吉の首を刎ねることになったが

碁がさっぱりわからない
将棋の映画同様の問題点を曝け出す
それでも役者の演技力と演出と音楽でなんとかカバーする
名優國村隼の功績は今回も高い
敵役もいい芝居じゃないか斎藤工

惚れた男と共に逃亡を企てたものの捕まりお仕置きをされる遊女の叫び声はショッキング
女性看守が男性囚人を責めるSOD作品が大好きな自分には到底受け入れることができないシチュエーション
女性の悲鳴に興奮する男性も少なからずいるかもしれないが自分は全くそれに当てはまらない

クールだった格之進が妻の自害の真相を知り人格が鬼に変わってしまう草彅剛の芝居は秀逸

碁で勝負をつけるという展開は驚き
週刊誌編集部のコントで喧嘩を始めた志村仲本が「暴力はやめよーぜ」と将棋で決着をつける件を思い出した
だがそれでは終わらないのはそこはやはり白石和彌

碁盤があんな見事にスパッと切れるもんですかね
日本刀恐るべし
アマゾンの大切断みたい

弥吉とお絹は結婚する運びとなり丸く収まるのだがちょっとそれは強引に感じた
アニメ『キン肉マン』のフェニックスとビビンバを思い出した
まっ榊原郁恵にしたって松嶋菜々子にしたって結婚する前は相手のことをとても嫌っていたらしいし男女関係の行く末とはわからないもの

最後は1人旅に出る格之進
彦根の方に戻り自分の報告のせいで役職を解かれ路頭に迷った元藩士4名に対して謝罪行脚の旅に出るのか
そののち彦根藩に伝わる高価な掛軸を4名とその家族のために売り払った責任を取り切腹をするのかそれはわからない

落語にオリジナルの要素を加えたため多少複雑になってしまったことは多少のマイナスポイント
それでも娯楽時代劇映画としては充分及第点でむしろ傑作の部類といっても過言ではなく決して褒めすぎだと感じない

配役
清廉潔白な性格で彦根藩の殿の信頼を得ていた一方で周囲から恨みを買い濡れ衣を着せられ浪人生活をする羽目になった柳田格之進に草彅剛
格之進の娘のお絹に清原果耶
萬屋の手代の弥吉に中川大志
格之進を慕う彦根藩の武士の梶木左門に奥野瑛太
萬屋の番頭の徳次郎に音尾琢真
京で碁会を営み格之進と兵庫の勝負を見届けることになった長兵衛に市村正親
柳田親子が住む長屋の大家の八兵衛に立川談慶
入水自殺した格之進の妻の志乃に中村優子
格之進の仇となる元彦根藩藩士で凄腕の碁打ちの柴田兵庫に斎藤工
吉原半蔵の大女将のお庚に小泉今日子
江戸で質屋を営む萬屋の亭主で碁打ちの萬屋源兵衛に國村隼

野川新栄
katowankenobiさんのコメント
2024年5月29日

旅に出たのは掛け軸を売ってできた金を渡すためじゃないてすか?

katowankenobi
きのこ亭さんのコメント
2024年5月29日

元の落語の方も、人情噺に分類されるものなので、笑いはほんの少し、演者によっては皆無だったりします笑
演者によって少しずつ違うところもあるのが、落語の醍醐味です!
是非これをきっかけに落語にも興味を持って頂けたら嬉しいです(落語好きアラフォー)
といいつつ、柳田格之進を確実に聴くことが出来る落語会は稀なので、柳田格之進の落語を聴くならYouTubeなどがオススメです。
今は亡き古今亭志ん朝さんの高座が、少し笑いどころもありオススメかな??

きのこ亭