「【”蝋燭の炎に灯された陰影ある室内で碁盤に向きあう謹厳実直なる武士の決意。”今作は白石和彌監督の見事なライティングとカメラアングル及び草薙剛の圧倒的演技に依る、見応え充分な復讐時代劇である。】」碁盤斬り NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”蝋燭の炎に灯された陰影ある室内で碁盤に向きあう謹厳実直なる武士の決意。”今作は白石和彌監督の見事なライティングとカメラアングル及び草薙剛の圧倒的演技に依る、見応え充分な復讐時代劇である。】
ー ご存じの通り、今作は、古典落語の人情噺である「柳田格之進」別名「碁盤割」が原案であるが、白石監督の室内のライティングや多様なカメラアングルにより見事な復讐時代劇になっている。
今や、邦画の名監督と言っても良い白石和彌監督の手腕が炸裂しているし、柳田格之進を演じた草薙剛の抑制した演技と、激烈な演技に魅入られる作品である。ー
■柳田格之進と娘のお絹(清原果耶)。格之進は身に覚えがない藩の財宝である狩野探幽の掛け軸の盗難事件の罪で近江藩を脱藩し、江戸の貧乏長屋で暮らしていた。だが、ある日藩の旧知の士、左門(奥野瑛太)が訪れ、真相を伝える。
それは、盗難事件は常々格之進の謹厳実直な生き方を苦々しく思っていた同じ近江藩士の兵庫(斎藤工)が起こした事であり、妻の仇である事も判明する。
そんな中、懇意になっていた商家の萬屋源兵衛(國村隼)の丁稚の弥吉(中川大志)から50両を盗んだ嫌疑を掛けられ、格之進はお絹を知り合いの女郎屋の主、お庚(小泉今日子)に預け、大晦日までに返せない場合は遊女にするという約束で50両を借りて”もし、違っていたら源兵衛と弥吉、お前の首を・・。”と言い残し兵庫を追うのであった。
◆感想
・序盤の、賭け碁で勝負する源兵衛と格之進を映すシーンの室内の陰影や、碁石を打つ手元を撮るアングルにより、作品世界に一気に引き込まれる。
ー 格之進が優勢だったのに、源兵衛の打ち方を見てお庚から頼まれた篆刻を彫る内職で得た一両を碁盤の上に置き去る姿。
その姿を見て源兵衛はそれまでのケチな賭け碁の打ち方や、果ては儲けが第一だった商売の仕方まで変えるのである。ー
・そんな格之進に齎された冤罪の真相。そして彼は同じ近江藩士だった兵庫を、それまでの静な顔から只ならぬ殺気を身に帯びながら追う姿。
ー 前半の比較的穏やかな展開から一転する。そして、草薙剛さんの演技の幅にも改めて驚く。-
・中山道の掛け碁をしている所を当たる格之進の元に、兵庫は江戸に向かったという報が入り、彼は兵庫を追い、江戸の賭け碁屋を仕切る長兵衛(市村正親)に正座して願い、漸く兵庫と会うシーン。
二人は碁盤を挟み、首を掛けた一戦に臨む。藩一の碁の腕を持つと豪語する兵庫に対し、”石の下”という石の取り方で形勢を逆転させた格之進。
窮した兵庫は碁盤の上を切っ先鋭く剣を水平に振るうが、間一髪交わした格之進は庭での一騎打ちで長兵衛の助太刀もあり、兵庫は長兵衛の右手を切り落とす。
ー 迫力ある殺陣であり、且つ兵庫の“武士の情け、解釈を・・。”と言う言葉通り、首を切り落とすのである。所謂、斬首である。武士としては”恥”とされる最期である。-
■その後、格之進は源兵衛の屋敷に乗り込み源兵衛と弥吉の首を落とそうとするが、二人の”切るなら、私を‼”と言う姿を見て、源兵衛秘蔵の一度だけ格之進と囲んだ貴重な碁盤を一刀両断にするのである。
<その後、お庚の粋な計らいで遊女にならずに済んだお絹は、兼ねてから彼女に惚れていた弥吉と祝言を挙げるのである。
その姿を見ながら、再び穏やかな関係になった源兵衛と格之進は穏やかに会話を交わしている。
そして、格之進は一人芒ヶ原の道を足早に歩み去るのである。
今作は白石和彌監督の見事なライティングとカメラアングル及び草薙剛の圧倒的演技に依る、見応え充分な復讐時代劇なのである。>
おはようございます!
時代劇裏切らないですね!
本作深みのあるストーリーって感じでしたが、鬼平の方が私好みでした。
鬼平はストーリードシンプルなんですけどね。
共感ありがとうございます。
「鬼平」と連チャンで観ようと、今日になったのですが、圧倒的な差を感じました。
けちを付けるなら、首を差し出す二人のやり取りがギャグみたいだった事位。