劇場公開日 2023年6月16日

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「年輪を重ねたニーソン版は渋みが加わって好感度高し」探偵マーロウ 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0年輪を重ねたニーソン版は渋みが加わって好感度高し

2023年6月28日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 リーアム・ニーソンの出演100本目の映画は、探偵フィリップ・マーロウが主人公のハードボイルド。アクション俳優の印象が強いニーソンヘの先入観のせいか、マーロウとしては年齢を重ねているためか、序盤は違和感を感じましたが、年を重ね、渋みを増した名優の演技が、枯れた味わいを感じさせてくれて、ハードボイルドな世界との親和性を持たせてくれました。

 原作はレイモント・チャンドラーの小説でなく、ブッカー賞受賞作家、ジョン・バンヴィルが別名義で書いた小説。「ロング・グッドバイ」の続編として公認されているそうです。

 舞台は1939年のロサンゼルス。私立探偵、フィリソソ・マーロウ(リーアム・ニーソン)の元を、見るからに裕福そうなブロンドの美女クレア(ダイアン・クルーガー)が訪ね、「突然姿を消したかつての愛人を探してほしい」と愛人の行方捜しを依頼してきます。映画業界で働いていたというその男はひき逃げ事故で殺されていましたが、クレアは「街で見かけた」と言い張るのです。
 マーロウがロサンゼルスの街をうろつき、クラブの支配人、美女の母親の女優(ジェシカ・ランク)ら、怪しげな人間の間を行ったり来たり。
 マーロウものの定型だが、複雑極まる「三つ数えろ」(1946年)などと比べれば、はるかに分かりやすい。それでも一癖も二癖もある結末。単純な勧善懲悪にはならならず、捜査を進めるにつれ謎が深まる“ハリウッドの闇”の深さに、探偵マーロウが辿り着く真実には、そうなのかと驚きました。
 律義でユーモアがあり、決して推理を諦めないマーロウは健在でも、ニーソンが演じたことで品性や誠実さがにじみ出て新たな魅力になっていると思います。「三つ数えろ」のハンフリー・ボガートが演じた、粋で色気のあるマーロウとは別人と思って見るといいでしょう。

流山の小地蔵