劇場公開日 2024年10月11日

「ジョーカーと化した「彼」の、その後。」ジョーカー フォリ・ア・ドゥ しゅわとろんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0ジョーカーと化した「彼」の、その後。

2024年11月5日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

賛否の嵐が巻き起こっている「ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ」。ロッテントマトでとんでもない低スコアを叩き出した事が話題になっている。
私個人としては「賛」寄りだ。勿論言いたい事は沢山あるが、この映画をそれ程嫌いにはなれない。

前作で逮捕され収監された「ジョーカー」ことアーサー・フレック。そんな中での運命的な出会い、そして裁判を描いた物語である。

この映画は前作「ジョーカー」をどういう作品として捉えているかによってかなり評価が変わってくるだろう。
「夢だけが支えの持たざる者、アーサー・フレック」の物語として、あるいは「悪のカリスマ、ジョーカー」の誕生秘話として。恐らくは後者として捉えていた人が「否」寄りなのだろう。どちらが間違っている訳でも無い。そりゃ賛否も分かれようというものだ。

内容に関してだが……物語の殆どがアーサーの獄中と裁判所で展開される為スケールはかなり小さい。ミュージカル調である事がよく叩く材料にされているが、ミュージカルにでもしなければ非常に退屈な作品になっていただろう。選曲・歌唱共にハイレベルではあるのだが、事あるごとに歌い出すので少々のくどさは否めない。
しかしストーリー自体は、前作「ジョーカー」の流れを汲んだ、心を抉られる展開が満載だ。裁判やその後の展開でアーサーが「現実」と向き合う場面などは、実に陰鬱とした展開に胸が締め付けられた。

ホアキン・フェニックスの凄まじい演技は健在。「ボーはおそれている」でかなり増量していたが、そこからまた絞り直したというのだから恐れ入る。その役者魂には感服するばかりである。
ハーレイ・クインを演じたレディー・ガガも良かった。その妖しい存在感はホアキンと並べても全く見劣りしていない。

言いたい事はあるものの映画としては良く出来ていたが、大傑作だった前作には及ばないといった所だ。そして何より、前作の醍醐味であった様々な「考察」に明確な答えを出してしまった事は一部のファンにとってはマイナスポイントだろう。本作の哀しきストーリーの大部分を担ってはいるのだが、あの余白だらけの雰囲気が好きだった方にはお勧めできない。

「アーサー・フレック」の物語の続きが観たい、という方は是非劇場へ。レビューに影響されず、自分で鑑賞して、感じて欲しい。それが人生だ。

しゅわとろん