劇場公開日 2024年10月11日

「これぞいま作るべきジョーカー作品」ジョーカー フォリ・ア・ドゥ 辻井宏仁(放送作家)さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0これぞいま作るべきジョーカー作品

2024年11月1日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

力強い圧倒的な悪のカリスマを描いた
ノーラン版ジョーカーとは異なり
精神的な脆さを抱えながら
言わば神輿に担がれるようにして世に放たれた
か弱く繊細な悪を描いた
トッドフィリップス版ジョーカー。

儚く切なく美しく、胸が締め付けられ
ジョーカー、と言うよりもアーサーのことが
たまらなく愛おしくなる…そんな作品だった。

ダーク法廷バイオレンスミュージカルとでも言うべき
革新的な新規ジャンル開拓。
ホアキンフェニックスとレディガガ、
2人の才能が溶け合う数々のシーンに
ゾクゾクしっぱなし。素晴らしい。

誰かの期待に応えようと自分を偽り
人生を翻弄されてきたアーサーは
刑務所で出会った運命の女性に希望を見出すが
ふとふと溢した弱い素顔によって
またしても孤独な暗闇に堕とされていく…。

観客が望む展開とは真逆をいくエンディング。
裏切りのない物語なんてクソ喰らえ。
マーケティングじゃ作れない高み。

過去のジョーカー作品に倣うのは愚かの極み。
映画の思考停止に未来はない。

これぞいま作るべきジョーカー。

辻井宏仁(放送作家)