「非誕生譚「悲劇のピエロ」」ジョーカー フォリ・ア・ドゥ はなまるさんの映画レビュー(感想・評価)
非誕生譚「悲劇のピエロ」
海外でかなり低評価とのこと。
がぜん興味が湧き上映当日に劇場へ。
前評判の影響もあってか予約席は閑散としてました。
この映画をひと言で表現するなら「悲劇のピエロ」。
主人公のアーサーは喜劇に心惹かれています。
しかしその生き様は悲劇そのものでした。
海外で低評価の嵐なのは悪役としての期待があったからかと。
しかし中身は、生まれに苦しみ、その期待に殺された男の物語。
彼を観てきた観客さえレビューにて加害者役にされる作り込み。
寂しく哀れな男ですが、6人も殺害しており同情の余地なし。
最後はかっこ悪く地味で痛々しく例の笑顔すら出せず死にます。
せめて「男」ではなく「ピエロ」として飾るのは慈悲やも。
さてこの男…ピエロですが、二重人格を演じられませんでした。
愛を友情を知らず、少し触れるだけで歓喜し素が出てしまう。
まるでババ抜きでジョーカーを掴まされ続ける悲劇の処理係。
ただ面白くもあり恐いなと思ったのは「もしも」の世界。
上映された内容は喜劇好きのアーサーにとって最悪のシナリオ。
しかしどこかで惨劇を好めばスーパーヴィランが誕生したか。
アーサーには悪いですが「悲劇のピエロ」として終わり安心。
彼にはヴィランとしての悪運があり、才能が芽生えかけていた。
それを法廷でのやり取りなどで偶然にも摘み取れた気がします。
もし惨劇を愛するアーサーが生まれれば、例のジョーカー誕生。
悲劇的な自らの生き様に惚れ惚れし、皆にもプレゼント。
愛や友情より惨劇こそ人生の価値と最低最悪のピエロになった。
そんな「もしも」の世界の「最悪ピエロ」は良く知ってる。
なので今更それを映画にされても二番煎じで見飽きただろう。
この映画はそんな着飾るヴィランが生まれなかった世界線。
誕生秘話なる映画と対になる非誕生譚とでもいえばいいのか。
スーパーヴィランが偶然にも生まれなかった映画がこれです。
自分だけでここまでイメージできず興味深い作品に出会えた。
①ヴィランではなくアーサーのその後が気になった人
②映画内の不幸・苦痛・惨劇を客観的に受け止められる人
であれば、斬新な映画として娯楽になったのではないか。
最後に「もしも」の世界について。
終わりにアーサーをめった刺しにした自称サイコパス。
あれがフォリアドゥで、未来のジョーカーになったりなんて。