「本当の僕を見てほしいと言えても、社会はそれを許さないのだろう」ジョーカー フォリ・ア・ドゥ Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
本当の僕を見てほしいと言えても、社会はそれを許さないのだろう
2024.10.11 字幕 イオンシネマ京都桂川
2024年のアメリカ映画(138分、 PG12)
前作『ジョーカー』の続編映画
前作の事件の裁判を中心に、閉鎖病棟で出会った女患者との関係を描いたクライムドラマ
監督はトッド・フィリップス
脚本はスコット・シルバー&トッド・フィリップス
物語の舞台は、ゴッサムシティにあるアーカム州立病院
そこには5人を殺して裁判を控えているアーサー・フレック(ホアキン・フェニックス)が収監されていた
アーサーは社会現象化しており、それを封じる目的もあったが、病院内でも徐々にその影響は出つつあった
ある日、別の病棟に足を踏み入れることになったアーサーは、そこでリー・クインゼル(レディ・ガガ)と出会う
彼女に心を奪われたアーサーは、時間を作っては彼女と会う時間を増やしていった
映画は、ほぼ法廷劇になっていて、その他はミュージカル映画のような演出がなされていた
かなり体感時間が長く感じる作品で、1、2行でまとまりそうな軽い内容が薄く薄く引き伸ばされている感じがした
見どころは元同僚のゲイリー(リー・ギル)が証言台に立つシーンで、それ以外はあまり印象に残らないシーンが多かった
ジョーカーと言うアイコンに成りきれないアーサーが、ジョーカーであることを捨てると言う流れになってリーは彼の元を去り、狂信的な崇拝者に刺されて終わるのだが、元々アーサーにはジョーカー的な資質はなく、前作で神格化しすぎたものを普通に落とし込むと言うアンサー的な内容になっている
社会現象となって模倣犯まで生まれたことを考えると、「ジョーカー誕生」を望んだ人々は映画内の狂信的なファンと変わりはない
そうしたものを裏切ることになっているのだが、前作でアーサーがジョーカー化した経緯を考えると妥当な落とし所にように思えた
いずれにせよ、前作の予習は必須の作品で、それを踏まえた上で本作を観てどう思うかを素直に受け止めた方が良いと思った
「ジョーカー=アーサー?」という感じの人だとこの帰結は当然で、それでもなお「アーサーにジョーカーになってほしい」と言う人には不評なような気がする
アーサーを超えて自分がジョーカーになると言う気概のある人以外は、結局のところ踊らされているピエロを俯瞰したいだけの人なので、1週間もすれば映画のことなど忘れているのではないか、とも思った