「欠落した愛情を求める悲劇 ジョーカーはね、と言い出しそうなリー」ジョーカー フォリ・ア・ドゥ ごまだんごさんの映画レビュー(感想・評価)
欠落した愛情を求める悲劇 ジョーカーはね、と言い出しそうなリー
プレミアでみました。
今作は主人公がアーサーとして生きようとしたが、誰もアーサーに見向きもしない。
突如登場したレディガガが演じるリーもジョーカーに恋をしたひとり。
アーサーに自分を受け入れ愛してくれる存在が現れたのかと思ったら、リーはアーサーに見向きもせず彼の中にいるジョーカーのことしか見ていない。
本来の自分は透明人間として扱われ
寄ってくるのは自分の表面しか見ていないような人間ばかり。
いくらジョーカーが愛されようと
アーサーの心は愛や承認欲求に飢えてゆくばかりでジョーカーとアーサーの間の乖離を埋めることが出来ず「こうであってほしい…」といった妄想症状が悪化してゆく。
たびたび現れるミュージカルはアーサーが作り出した極めて都合の良い妄想であるがゆえにチープなステージでなんだか妙に元気いっぱいな曲調。(曲自体は素晴らしいです!)
これは人間として成熟できなかったゆえの彼の幼稚さが伺えるような演出だったのかな、と思いました。
話が進むにつれてミュージカルのカットインが増え、つまりアーサーの都合の良い妄想が頭の中で止まらなくなっている。
彼はエンターテイナーに心の底からなりたかったのだ。
そう願えば願うほど周囲の人間は「ジョーカーになれ!!!」と声を大きくする。
次第に彼はリーや社会に認められようと自分をジョーカーとして着飾ってゆく、
そして衝撃のラスト。
今作は哀れな精神病患者が孤独ゆえ、欠落した愛を欲しがるゆえ自ら崩壊してゆく悲劇の物語だったと思う。
見方によって感じ方や解釈が変わる作品だと思うので気になる方は劇場で確かめてほしいです。
映画を見るまではClose to youをウキウキ気分で聞いてましたが劇中で演奏が始まった時、気味が悪すぎてヒェってなりました笑。
思い返しては追記:
リーの演技が素晴らしかった。
境界性パーソナリティ障害とソシオパスを煮詰めたようなジョーカーへの詰め寄り方、倫理観の無さをガガは素晴らしく演技してたと思います。
あなたを絶対に逃がさないと言わんばかりの表情でロックオンして、その目はアーサーの瞳の向こうのジョーカーを見つめていました。
アーサーは逃げられるわけがない状況でジョーカーへと仕立て上げられてしまったと言っても良いと思います。
そんな歪んだ愛なのに、さも純愛かのようにロマンティックに歌い上げる姿が不気味で不気味で・・・
けど自他境界が壊れている人の恋愛ってこんな感じだなと感じました。
恋愛してるときは自分は純愛をしていると信じて疑わず尽くしに尽くすのに
ふとした瞬間に相手を見限ってさっと捨ててしまう
人としての土台の無さと言うか。
リアルでした。
この役はガガの積み上げてきた音楽シーンがあったからこそ務まったと思いました。