「ミッキー18が出てくるまでが長く、ラストの先住民との対決は某名作アニメを思い出してしまった」ミッキー17 Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
ミッキー18が出てくるまでが長く、ラストの先住民との対決は某名作アニメを思い出してしまった
2025.3.31 字幕 イオンシネマ京都桂川
2025年のアメリカ映画(137分、G)
原作はエドワード・アシュトンの『Micky 7』
クローン技術にて使い捨て要員となった男を描いたSF映画
監督&脚本はポン・ジュノ
物語の舞台は、2054年の地球
クローン技術を用いた複製技術を確立した人類は、その運用についての議論が白熱していた
そこで容認派の政治家・ケネス・マーシャル(マーク・ラファロ)は、地球外にて「エクスペンダブル」限定の運用を考案する
各種団体から資金を得たマーシャルは、コロニーを飛び出て、惑星エフルへイムを目指すクルーを募集し始めた
一方その頃、高利貸しからの借金に首が回らなくなったミッキー(ロバート・パティンソン)と友人のティモ(スティーヴン・ユアン)は、期日が迫り脅迫を受けていた
二人はなんとかして逃げようと考え、その宇宙船の乗客に応募する
そして、ティモはフリッターと呼ばれる運送機のパイロットとして潜り込み、ミッキーはエクスペンダブルとして乗船することになった
エクスペンダブルは、記憶を抽出して保存し、肉体はリプリメントとして再生することになり、特に危険な仕事に従事することになっていた
宇宙放射線の人体への影響を調べたり、惑星で生きるための人体実験などに使われていた
ミッキーが死ぬと、新たに肉体は再生されて、継続した記憶を持つように注入される
それによって、思い出したくもない記憶を呼び起こすこともあり、情緒不安定にもなってしまうのである
映画は、そんなミッキーは船内警備班のエージェント・ナーシャ(ナオミ・アッキー)と出会って、体の関係を重ねるようになっていく
空虚に思えた任務も、彼女との出会いで癒されるようになり、4年の航行を終えることができた
ナーシャはミッキーが複製されるたびに関係を持つのだが、その性格は毎回違っているという
それらも全て受け入れていく中で、ミッキーは17回目のリプリメントを受けることになったのである
物語は、この17人目のミッキーが船外活動にてクレバスに落ちる様子が描かれ、そこでティモがあるものを見たことによって「ミッキーは死んだ」と報告する場面から描かれていた
それによって、ミッキー18が生まれるのだが、実はこの時にミッキー17は死んではいなかった
ティモが見たのは惑星に生息する生物で、彼はてっきりその生物に食べられたと思い込んでいた
だが、その生物は彼を巣穴から出して助け、それによってミッキー17は宇宙船に戻ることができたのである
この状況をマルティプルと言うようで、それが見つかった段階で、両方が廃棄されると言うのがルールとなっていた
これはプロジェクトを行う上での約束事であり、それを知ったナーシャと、エージェントのカイ(アナマリア・ヴァルトロイ)が良い争う場面があったりする
見つけた者には報告義務があると言うものだが、そもそもここまでに技術を要しながら、生体追跡はおろか、ミッキーが死ぬのも目視だったりする
マイクロチップの埋め込みとかで生体反応が消えてから複製すると言う技術はなく、あくまでもローカルなものとなっていて、それゆえに起きたヒューマンエラーのようなものだった
クリーパー(先住民)との会話も即席翻訳機で難なくできるようなガバガバな世界観なので、真面目に観ると損をするかもしれない
映画のラストはどんでん返しのようなものに見えるが、その意味が分かっても、生き残った方がどうなったのかとか、複製されたアレがどうなったのかは描かれない
それゆえに終わったのかどうかもわからないと言うぶつ切りにも思えるエンドになっていた
いずれにせよ、実はイリファ(トニ・コレット)が元々マルティプルの存在となっていて、その片方が生き残ったまま、夫を複製すると言うエンドなのだが、それだけで再度マーシャルの天下になるとは思えない
このシーンはラストの機械の破壊の際にミッキー17が思い出すシークエンスなのだが、そこからセレモニーの間に、イリファダブルとマーシャル2がどうなったのかはわからない
さらに、唐突にこの技術は「ある連続殺人犯の作った技術だった」と説明されるのもナンセンスで、色々とツッコミどころが多いように思う
人類が手にしている技術と、細やかな描写が詰められておらず、過剰カロリーを消費しているミッキー&ナーシャが生体的に疲弊しないとか、過剰な食料を得る過程なども説明セリフで終わっていたりする
また、予告編の最後の方にちらっと映っているクリーパーについては、個人的には「ナウシカの王蟲」だと思ったし、その後の展開も「王蟲の怒りを鎮めるには王蟲の子どもを群れに返す」と言う、そのまんまやんと言うツッコミが入ってしまった
それゆえに、新しそうに思えるものも全て古臭く感じられるので、映画館に足を運ぶほどの作品なのかは微妙だなあと思った