「ポン・ジュノ監督らしさ満載のSFブラック」ミッキー17 bunmei21さんの映画レビュー(感想・評価)
ポン・ジュノ監督らしさ満載のSFブラック
『パラサイト 半地下の家族』で、アカデミー賞外国作品賞を受賞したポン・ジュノ監督が、今度は、未知の惑星を舞台にして描いたSFブラック・アクション。彼の作品は、『パラサイト…』は勿論、『スノー・ピアサー』等でも、格差社会の底辺で蠢く者からの、苦痛な叫びをテーマとしている作品が印象的。本作もまた、権力者の命令で、自分の命を投げうって何度も生死を繰り返す任務を課せられるという、搾取された男の不条理な境遇を描いている。
舞台を未知の惑星にすることで、SF作品としての重厚感もある一方で、ポン作品らしく、やはり現代社会への痛烈な批判を含めたブラック・ユーモアとしての面白さもある。絶対的な権力を持つラスボスの言動は、最近、大国で大統領に就任して、自分さえよければ良いと、やりたい放題しているアイツをパロっているのだろうとも思う…(笑)
借金を抱え、取り立て屋から命の危険を感じたミッキーは、地球から逃れる為に、内容もよく読まないで、未知の惑星での仕事の契約書にサインしてしまう。その仕事とは、自分がレプリカントとなり、命がけの任務に就いて、何度も生死を繰り返すという、虐げられた内容だった。ミッキー自身、最初こそ死への恐怖はあったものの、それを17回も繰り返す中で、「どうせまた、レプリカントとなってた生まれ変わる」と、死の苦しみを受け入れ始めていた。
そんな矢先、ミッキー17号が、未知の生物の餌食となり死んだと思い、新たな18号をコピーしてしまったが、実は17号は生きていて、18号と遭遇してしまう珍事が発生する。当初は、互いに受け入れられなかった17号と18号だったが、次第に2人の境遇を生み出した共通の敵は、その権力者であると気づき、権力者への叛旗を翻し、反撃を始める。そこにまた、惑星の未知の生物との戦闘が絡めることで、SFアクション的な要素も高めていく。しかし、この生物がどこかで観たことのある生物で、そのフォルムや群れとなって蠢くシーン、ミッキーとその生物が心通わせる辺りは、『風の谷のナウシカ』のオームにそっくりだった。
出演者は、主役のミッキーには、最新の『バットマン』を演じたロバート・パディンソンが務めたが、個人的には、『バットマン』より『ハリー・ポッター』のセドリック役の方が印象深い。悪役の権力者には、『ハルク』のマーク・ラファロが演じ、ミッキーの悪友ティモ役には、『ウォーキング・デッド』でグレン役を務めた、スティーブン・ユアンが久しぶりに懐かしい顔を覗かせていた。