「テンポが悪く、盛り上がりに欠けて、社会風刺も今一つ」ミッキー17 tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
テンポが悪く、盛り上がりに欠けて、社会風刺も今一つ
何度死んでも蘇る「使い捨て人間」という着想は面白いのだが、話がモタモタしていてテンポが悪く、どうにも退屈してしまった。
ミッキー17と18が同時に存在するようになったところで、彼らが協力して、独裁者に立ち向かっていくのかと思ったら、18が薬物の密売に手を染めた友人を殺そうとしたり、優良な遺伝子の女性がミッキーを奪おうとしたり、借金取りから逃げるために友人がミッキーを殺そうとしたりといったエピソードが続いて、話がどこに向かっているのかが分からなくなる。ここのところは、もっと登場人物を絞り込んで、シンプルな筋立てにした方が良かったのではないだろうか?
同一人物のはずなのに、片や気の弱い小心者で、片や激情型の武闘派と、ミッキー17と18のキャラクターが違いすぎることにも違和感を覚えてしまう。
打倒すべき独裁者も、妻の言いなりになっているだけのダメ男で、すぐにでも倒せそうな気がするし、惑星の先住民であるクリーパーも、翻訳機のおかげで意思の疎通が簡単にできてしまい、神秘的な存在とは言い難い。こんなことだから、クライマックスの、クリーパーの大群の中での独裁者との対決も、盛り上がりに欠けると言わざるを得ない。
「使い捨て人間」という設定にしても、劣悪な環境で酷使される労働者の悲哀や切実さが十分に描かれているようには思えず、社会風刺という面でもパンチ力が感じられなかったのは、残念としか言いようがない。
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