「フェミニズムと多様性をバービー人形に託した女性の生きる道」バービー Gustavさんの映画レビュー(感想・評価)
フェミニズムと多様性をバービー人形に託した女性の生きる道
女の子向けの着せ替え人形バービーが暮らすバービーワールドと現実の世界を比較して、今アメリカ人が抱える女性の生き方を追求する多様性を主題にしたミュージカル仕立てのファンタジーコメディ。女性優位社会のバービーワールドのピンクが引き立つ色彩の艶やかさとデザインの可愛らしさが観ていて微笑ましい。対してバービーの製造元のマテル社の重役たちが全て男性なのが意図的で、ドジなCEOで笑いを誘うがコメディとしては不発に終わる。
主演のマーゴット・ロビーは、10年前の「アバウト・タイム~愛おしい時間について~」の若さ溢れる好演と4年前の「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」の魅力的な演技以来だが、美しい金髪と均整の取れた素晴らしいプロポーションで人工的なバービーの人間化にピッタリ嵌り主演をやり遂げている。ケン役のライアン・ゴズリングもマッチョ体形で熱演しており、歌の貢献もして男らしさに目覚める難役を好演。しかし、この主演ふたり以外に目立つ役者がいないのが残念。バービー人形の持主のグロリアとサーシャ母娘の関わり方も脚本として活かし切れていない。
映像の楽しさと主演ふたりの演技に魅了される作品。物語より見栄えに重点を置いた撮影の創作力は素晴らしい。ストーリーについては、ハリウッドの女性監督が今何を表現すれば良いのか悩んでいることが伝わる内容で、フェミニズムや多様性に関して社会にどう迎合して批判を浴びないように創作するかに留まっている印象を持った。真面目に子供向け映画を創作して、結局は自分らしさを求めて生きて行くしかない女性の現実に辿り着く選択に、特別作家の個性は感じませんでした。