「おもしろ…い?」バービー ひかるさんの映画レビュー(感想・評価)
おもしろ…い?
まず世界観が合わなかった。あのバービー世界のピヨピヨした感じが受け付けなくてなかなか情報が頭に入ってこなかったけど『まぁバービーの世界だし…』と思って観ていた。そして定番バービーが死を考え始めたところからグッと興味を惹き始めたが、その後の人間世界に行ってからが微妙だった。バービーの世界は振り切った世界なのはわかるけど、人間社会まで割とデフォルメされた世界観でバービー世界の単純さに対して人間世界はもう少しリアリティを持って描かれないと対比としての面白さがないのでは…?と思ってしまった(女社会と男社会という対比にはなっていたと思うけど)
また、人間社会でも一部の人間にバービー社会が認知されていたり、あの世界そのもののルールがよくわからなかった。役員秘書の女性のバービーってことはわかったけど、定番バービーは現実世界に無数に存在しているはずなのに、バービー社会では一人しかいないのは何故だろうか?また、後半はほとんど言葉で主張を繰り返すばかりになっていて観ていてうんざりした。
女性の生きづらさや困難を描くのであれば、もう少し上手いやり方はあったのではないだろうか?ケンが支配する世界で洗脳されたバービー達を洗脳から解いて、元の世界に戻す。でも、以前の自分達の振る舞いも反省してケンにも歩み寄るってなるけど、ケンが自分も判事になりたいと言っても了承はしない。そして、アランという中立、中性的なキャラクターは都合の良いお世話キャラクターとして描かれているのは都合が良くないだろうか?また、現実世界のバービーを作っているメーカーは女性をターゲットにしながら重役は全員男性で差別的だ。もし世の中の男女格差を批判するのであれば、彼らが報いを受けなければいけなかったのではないだろうか?男性社会でも既得権益についていて、男らしさを増長させているのは彼等の存在が大きいはずだ。一口に男性と言っても権力の世界から爪弾きにされて、その辺縁にいる利益を得られづらい男性も多くいる。そして、そんな所謂弱者男性は自分が得られなかった利益の理由を自分より社会的立場の弱い者達に向ける(そして彼らがミソジニーやインセルになる)
人種問題などは社会の構造批判になるが、男女問題の時に男性の存在そのものが攻撃対象になることがうんざりするぐらい多くなる。それは、実際にある男女の格差を縮めることはなく、むしろ対立を激化すると思う。女性は溜飲を下げ、男性は言葉を失うがそれは一時的なもので裏ではより深い対立を産んでいると思う。
この映画はまさにその象徴のように感じた。誰が利益を得ているのか、もう一度考えた方が良いかもしれない。