劇場公開日 2023年8月11日

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「観たい度◎鑑賞後の満足度◎ ピンクの金平糖をまぶしたゴーヤみたいな映画。見た目に魅せられて口に入れ表面の甘さを楽しんでいたら、砂糖が溶けて中身を噛んだ途端苦味が出てきた或る意味哲学的!と思った映画。」バービー もーさんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0観たい度◎鑑賞後の満足度◎ ピンクの金平糖をまぶしたゴーヤみたいな映画。見た目に魅せられて口に入れ表面の甘さを楽しんでいたら、砂糖が溶けて中身を噛んだ途端苦味が出てきた或る意味哲学的!と思った映画。

2023年8月13日
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鑑賞方法:映画館

※2023.08.22.08.14. 3回目の鑑賞[シネマサンシャイン大和郡山]
3回目の鑑賞で初めて泣いた。本作はバービー人形の世界から説き起こしたグレタ・ガーウィグ監督の人間讃歌だ!
 ※2023.08.21. 2回目の鑑賞[シネマサンシャイン大和郡山]
①冒頭、堂々と『2001年宇宙の旅』をまんまパクっているところで並みの映画ではないだろう、と掴みはバッチリ。
モノリスの代わりにポーズを取っている水着姿のマーゴット・ロビーの偉容。
そして赤ちゃん人形を打ち付けて赤ちゃん人形を叩き壊していく幼女。不穏な映画という予感も漂わせる。
②と思ったら、本編に入った途端繰り広げられるピンク・ピンク・ピンクのガーリーでドリーミーな世界。
私のバービーとケンのイメージからすると、ちょっとトウがたっているように思う主役の二人だが、まあ見ていて暫くは楽しい。
③定番バービー(マーゴット・ロビーのキャスティングで成功の半分が決まったようなもの。接写するとさすがに年齢ーもう37なんだねーを感じさせるが、劣化し出したバービーにはちょうど良かったかもしれない)が劣化し出した最初の兆候としてベタ足を持ってきたのも上手い。完璧をきすためにはいつもハイヒールを履いて爪先立ちでいなくてはならないなんて(後の展開の伏線にもなってます)男からしたら苦行以外の何者でもないな。(私は脚の筋肉を衰えさせない為に階段だけは爪先立ちで登っているけど結構しんどい。)
④女の子に乱暴に扱われたバービー人形は劣化するか、その女の子(か、かつて女の子だった女性)の精神状態に影響されると聞いたマーゴット・ロビーのバービーは自分の遊び主を見つけに現実世界に行くことに。
なかなかこの発想は男には出けませんな。(子供の頃は女の子と一緒にリカちゃん人形で遊んだことはあるけれど。)
そしてバービーに気の有るケンも何故かついてくる(普通であれば二人はいずれ恋に落ちてくっつくか、という在り来りの展開を大きく裏切ってくれます。でもこれは後の話。)
⑤現実世界にやって来た二人は予想通り浮きまくり。
バービーにいたってはメンヘラだの、人形遊びは5歳で卒業したの、如何にもフェミニストの女の子には「女性の地位を50年後退させた」だの「ファシスト」だの散々な言われよう。
どの業種(肉体労働含め)でも女性が当たり前に活躍していないし、バービーランドで信じられている事とは真逆の有り様に茫然自失。
ただ、この辺りでバービーの自分探しなんて話になったら予想に反して退屈な映画になりそうだなと、少し危惧も芽生え出す。
一方、女の子の人形を作っているのに何故か重役は男ばかりのマテル社。
何年後(忘れた)までに重役の何%かを女性にすること(うちの会社なんかどうすんだろ?と延長雇用の身ながら心配していますが)をやっと言い出した日本とは違うと思っていたUSAでこの設定。
ここでまた、よくあるフェミニズム全開の話になっても、それはそれで陳腐だな、という危惧も芽生え出し、加えて現実世界に現れた「製造物」を元に戻そうという騒動も『カイロの紫のバラ』みたいで既視感満載、と期待感がかなり萎み出す。
⑥と、ここで話に捻りが生じる。バービーと離れて単独行動を取っていたケンは、現実世界が男社会であり、ケンはあくまでバービーの“相手役/添え物”であるバービーランドとは違うことに気付きバービーを置いといて一路バービーランドに逆戻り(自分の野望のためなら好きな女も置いていくというところ、如何にも男、単細胞なところも如何にも男)。
でもって、かなり都合よく自分の遊び主に巡り遭えたバービーが歪みを正すべく遊び主の娘とバービーランドに戻ったら、何とそこはケンによって「ケンダム」という男社会となっていた!(マッチョのマンメード版ケンにジョン・シナが扮しているお遊びあり)。
そう、これは男社会で抑圧されてきた女性たちが立ち上がったウーマンリヴ⇒フェミニズム運動の裏返しだったのである!(と、そこまで力まんで良いか…)。
ケンが“バービーランドでは毎晩がガールパーティーで、僕らがどんなに寂しかったか、これで分かったろう!”とバービーにいい放つところ。
女性が男性の添え物と見なされてきたこと(僕らの子供の頃はまだ此の通念が十分に生きておりました)への女性の手痛いしっぺ返しか皮肉か?ボーボワールの『第二の性』が頭を過ったりして…
⑦でも此の映画はここでもう一捻りする…
「ケンダム」を「バービーランド」に戻し男社会中心にしようとした(多分)新憲法成立を阻止するため、バービー(マーゴット・ロビーの)はじめ遊び主母娘、変り者バービー、廃版になったケン人形やアラン(男の子の人形もバービー側にはいます)が反撃に出る。
現実世界の(現代の)「男社会」では一見女性たちも男女平等を勝ち得たようにも見える。しかし、実は

そして、その方法はケン(男)たちの自尊心・虚栄心・嫉妬心を煽って対立させること。(男のこと、よく分かってらっしゃる。)
⑧で、案の定ケン(男)達は内輪揉めをはじめ敵味方に分かれて喧嘩(これが大きくなれば戦争だね)し出す。まあ、バービーランドなので武器はなくオモチャしかないから見ていて安心。
でもって、ケン達が小競り合いしているうちに、ちゃっかり「ケンダム」を「バービーランド」に戻し憲法改正を阻止しちゃった。
⑨だが、“フェミニズムが正しい!だから何がなんでも勝つの!”なんて短絡的に言わないのがこの映画の本当のミソ。
「バービーランド」のケンたちは実は現実社会での女性たちの裏返し。

もーさん