劇場公開日 2023年8月11日

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「要するに『2001年宇宙の旅』ミーツ『マトリックス』、自分探しの旅で覚醒したケンが物語を引っ掻き回す壮絶なバカ映画」バービー よねさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0要するに『2001年宇宙の旅』ミーツ『マトリックス』、自分探しの旅で覚醒したケンが物語を引っ掻き回す壮絶なバカ映画

2023年8月12日
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映画が始まった瞬間に古参の映画ファンを爆笑させるマニアックなツカミからトップギアで爆走する壮絶なバカ映画。ところどころで奏でられるチープなシンセサウンドも相俟って感じるのは80年代に製作された『トップ・シークレット』、『フライングハイ』や『裸の銃(ガン)を持つ男』といった一連のZAZコメディーっぽさ。ウィル・フェレル、ケイト・マッキノン、マイケル・セラといったトップクラスのコメディ俳優で脇を固めてヘレン・ミレンやジョン・シナといったビッグネームもシレッと起用してほぼ全編セット撮影という贅沢さに惚れ惚れします。

とにかくキラキラなバービーランドを全面に出して宣伝していましたが、ストーリーはしっかり地に足が着いたもので、地に足が着いていること自体を何度も何度も擦るメタ構造の隙間に紆余曲折のバービー史、男の子あるある、女の子あるある、お母さんあるある、お父さんあるある、フェミニズムあるある、大企業あるあるを丁寧に挟み込んでオーブンで一気に焼き上げているので激辛だけど胃がもたれない。個人的には延々と擦られる男の子あるあるにタコ殴りにされました。これは痛い。しかしそんな辛辣なギャグの絨毯爆撃に炙り出されるのは私は一体何になりたいのか?という自問であり、『2001年宇宙の旅』や『マトリックス』へのオマージュが導く先でバービーが開く扉の向こうにある光景に腰が抜けました。スゲエオチだ、これ!

ということで、ネガティブキャンペーンがやかましい中ですが、この夏必見の作品。吹替版もありますけど、ヘレン・ミレンがナレーターをやっているのでどうせ観るなら字幕版。出来れば耳を澄まして字幕では巧妙に躱されている辛辣極まりないセリフにのけ反って下さい。

あとスゴイなと思ったのはマテル社。自社をここまで誇張した自虐ギャグに使う態度に感心しました。タカラトミーには絶対出来ないことです。

ちなみに前列でお母さんと観ていた女の子には相当難しい内容だったらしくずっとお母さんに質問していました。てっきりPG12だと思ってましたがGなんですね。確かにお子様が観てもそれなりに楽しめる作品ですけど質問に即答するのは結構大変だと思います。

よね