夜明けのすべてのレビュー・感想・評価
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誰にでも夜明けは訪れる
PMS(月経前症候群)やパニック障害について色々と知ることが出来たというだけでも本作を観た甲斐があったように思う。幸い自分の周りには藤沢や山添のような病気を抱えた人はいないが、もし偶然街中で遭遇したら…と思うと、決して他人事のようには観れない。現代は特にストレス社会である。精神的に疲弊してしまう人は多いのではないだろうか。そういう意味では、非常に現代的なテーマを扱っているように思った。
ただ、作劇上、気になる点が幾つかあった。
まず、藤沢や山添の周りに悪人が一切いないという点である。現実にはここに出てくる以上にシビアな状況があると思うのだが、それらが意図的にオミットされているような気がした。
山添の恋人の退場の仕方も取って付けたようでいただけなかった。むしろ描かないことで物語に余白を残しておいた方が、観る方としても色々と想像できて良かったのではないだろうか。
演出面でひっかりを覚える個所もあった。藤沢のモノローグで始まるオープニングシーンである。おそらくPMSの症状の解説という意味があったのかもしれないが、いささか安易な処理で個人的には余り感心しない。
監督、共同脚本は「ケイコ 目を澄ませて」の三宅唱。本作には同名小説(未読)の原作があるが、これが原作準拠なのか、それとも監督のアイディアなのか分からない。しかし、少なくとも「ケイコ~」の三宅氏であればもっとスマートな演出が出来たのではないか…と落胆させられた。
色々と不満を書いてしまったが、だからと言って本作が凡作と言うつもりはない。むしろこれらの不満点を補って余りある点もたくさんあったので述べておきたい。
まず、藤沢が山添の散髪をするシーンがとても印象に残った。ここで山添は初めて笑みをこぼし、それまでの暗く鬱屈したキャラに一気に朗らかさが加味され印象がガラリと変わった。この演出は見事だと思う。
山添の元上司も良い役所だった。特に、後半のレストランのシーンは見ているこちらも思わずホロリとさせられてしまった。余計な言葉など一切ない。その表情だけで感動を引き出す演出が素晴らしい。
そして、本作の最大の美点は、藤沢と山添の関係を安易に恋愛に発展させなかったことだろう。他人には理解しづらい特別な病を抱える者同士。困った時には助け合い、時には厳しいことを言い合い、まるで人生の盟友のように並び立つその姿を見て何だか羨ましくなった。
この”近からず遠からず”の距離感にも納得しかない。他者と深く関わらないことで傷つかない人生を送って来たであろう二人のバックストーリーが想像できた。
クライマックスはかなりベタな展開ではあるものの、ここでの藤沢の朗読の内容も素晴らしかった。人生における金言と言ってもいいだろう。映画のタイトルの意味が噛み締められた。
鯛焼き
食べ物の使い方がいい。シュークリーム、しば漬け、鯛焼き。
トンネルの使い方もうまい。あの風景はレイニーデイインニューヨークを思い出した。あのトンネルの向こうに行くかどうかが境界線。
人数が少ない分、会社の雰囲気は人次第な中小企業っぽさがよく出ていた(この会社は良い方に)。エンドクレジットでみるとチームビルディングの専門家も入っていたようでなるほどと思った。すごい目配り。
上白石萌音の朗読が上手!!圧巻。
同時代を生きている人が撮った映画だなあとしみじみ思う。細かなディテールが今なんだよなあ。
出てくる人も映るものもちゃんと考えられてて、なんでこれが?みたいのがない。
ジャンバーを着る場面がさりげない!!ここを居場所と思ったのでジャンバーを着ます!!!ってのではなく、ちょっと出てきまーすってときに着るの。周りもちょっと気づくけど何か言ったりしない。
オープニングの黒いスーツと第一ボタンまで留めた真っ白なシャツで、真面目な性格と、硬めの会社であることを説明するとか。
中学生ふたりも視点を変えるよいアクセントになっている。お母さんはシングルマザー?いろいろあったから優しいんだろなと思わせる。
エリート目指してそうな彼女との微妙な噛み合わなさ。好きだから理解して支えたいとは思ってるけど、どうしてももう気持ちが重ならない感じ。外で話せる?と言って、外で話すシーンはきっぱりカットも潔かった。
元上司に復職希望伝えるのにエアロバイク漕ぎながらっていうのが今どきっ子〜。知り合いの20代男性ならありえる。リアルだ。絶妙だ。アラフォーは驚愕だよ。正座だよ、そもそもzoomでは無理だ。
グリーフケアのミーティングもさりげなく、関係性や彼らの背景がうまく説明されていた。お姉さんのこともあったからなおさら心配したんだよね
退職のはなしを仕事しながらさらっと伝えるのも、以前から転職しようとしてるのは伝えてたんだろうなあと、その関係性が現れていた。
ただ、2000円以下に見える商品をあんなちんたら箱詰めしてたら利益出ないでしょ〜というのは気になる。1箱15秒でしょ。社員8人くらいいたし。人件費、考えて。望遠鏡が利益率高いんだろうか。別工場で光学機器作ってるとかかもしれない。
身近な人がパニック障害なのでこんな風に辛いんだなあと思った。症状について知ってはいたけれど、演技で見るとまた身につまされる。
イライラしたとき、あんな風に対応してくれたらいいんだなあ。優しい時代になったものだ。そしたら私ももっとうまく優しくできたかもしれないな。私もあそこまでではないけどずいぶんイライラしてしまっていたから早く病院いけばよかった。
映画館、月曜の夜の回に20代くらいの人たちがよく入っていた。だれか俳優目当てなのかもしれないけれど、この感じが若い人に響くのかな。
本篇前の予告ではたくさん若い恋愛映画がかかっていて、つくづく興味ないのだなあと思う。年のせいか時代のせいか。恋愛以外の人間関係もあるよねえ
植物に水をあげるとき、おはようって言うのいいな
夜明け前の闇が一番暗いのなら、朝が来るまでうずくまってていいから生きよう。
メンタルヘルスが言われて久しく、心療内科が家の最寄り駅近くにいくつかある現代。
「夜明けのすべて」は、PMS(月経前症候群)の藤沢さんやパニック障害の山添くんの日々ををのぞき見しているような気分になります。
しみじみと、心にしみわたる映画でした。
私は女性ですが、生理の時に体調や気分が悪くなることが全くなく、食欲が増進して2キロくらい増量するのがデフォです。
生理によってこんなに重い症状を抱えている人もいるのだとびっくりしました。
余談ですが、私の生理不順は、妊娠・出産でなおりました(生理周期が一定だと便利!)。
友人は、胃下垂が、妊娠時子宮が大きくなったことでなおり、栄養を十分吸収できるようになったそうです(その分、食べた分だけふっくらするようになりましたが)。
藤沢さんのような人も、妊娠・出産すると、体質が大きく変わる可能性はあります。
移動プラネタリウムの藤沢さんのナレーションは、素敵でした。
藤沢さんの声で語られる言葉に、共鳴しました。
「自転しながら公転している地球では、一度として同じ夜明けはない」
心して生きます。
この移動プラネタリウムのところで、唯一涙しました。
藤沢さんと山添さんの勤務先の社長の、自殺された弟さん。
映画では、弟さんは写真でしか登場しませんが、とても印象的でした。
彼は、移動プラネタリウムの原稿の元ネタになる音声と文章を遺していました。
頑張り屋さんで、昼よりも夜が好きで、きっと何らかの生きにくさを抱えていたのでしょう。
普通や常識に対する同調圧力や、違反者に対するヒステリックな反応を見ていると、少数派はしんどいと共感します。
彼の言葉をきちんと受け取りたいので、原作を読んでみます。
ちなみに、私は夜より昼が好きです、夜は得体がしれなくて怖いなと感じるからです。
個人の特性と、効率性や社会常識とのバランス。
自分を知り、社会との関係性を調整しながら、各々かけがえのない1日を積み重ねていけたらいいなと思います。
しみじみとした優しさ
邦画の良さがギュっと詰まった大傑作
歩きみかん…^_^
やさしい時間をありがとう。
持ちつ持たれつ、お互いがお互いを自由に。
PMSに悩まされる藤沢さんと
パニック障害に悩まされる山添くん。
生きたいとは思わないけど死にたくはない。
そんなふうに思いながら生きていくのは
とてもつらくて毎日が退屈で苦行。
電車に乗れず行動できる範囲が狭く世界も狭い。
ひとりの世界に閉じこもるような山添くん。
普段は温厚で人当たりが良さそうな藤沢さんは
月経の前になるとまるで人が変わる。
ちょっとしたことですごく怒る。
炭酸水を開ける音にさえ怒る。
そんな2人が徐々に心を開いていって
お互いがお互いの世界を広げてあげるような話。
そのきっかけになったのは…
山添くんの髪の毛を藤沢さんが切ってあげたこと。
なのではないか?と個人的に思っている。
このシーンはゆるいオーダーを受けて
あとは北斗さんと萌音さんのアドリブだったのか?
と思うくらいに自然だった。すごく面白かった。
北斗さんの笑い方がほんとに弾けていました。
山添くんはPMSを理解しようと
パニック障害のかかりつけのクリニックで
本を借りて読んでみたり…
藤沢さんは電車に乗れない山添くんの
行動範囲が広がればと乗らない自転車をあげたり…
あたたかな人間関係がおだやかに築かれていく。
観ていて心が和やかになっていきます。
山添くんと藤沢さんが勤めている
中小企業の方々もすごくアットホーム。
一緒に働く方にも2人は恵まれていたと思う。
僕も昔、中小企業に勤めていたんだけれど
なんだかとても懐かしかったな。(余談)
生きても死んでもどっちも良さそうな山添くんが
希望を見出して「すごくないですか⁈」って
前職の上司に仕事の話をしていたシーンは
僕もその上司と泣いていました。
出会う人、出会う環境よって、
人は変われる。生き方が変わる。
山添くんと藤沢さん以外の登場人物も
重い問題を抱えているのだけれど
みんなで支え合って生きているという描写が
しっかりとあって全体を通してあたたかな作品です。
エンドロールがこれまた良かったです…
山添くん、これからもゆったりと生きてね。
藤沢さん、辛くなったらまた戻ってきなね。
そう、声をかけたくなりました。
全てが優しい良い映画だった。俳優陣全員素敵で、上白石さんが特に良か...
三宅唱らしさは所々にあって。でも彼特有の若さ・瑞瑞しさ故の荒々しさ...
三宅唱らしさは所々にあって。でも彼特有の若さ・瑞瑞しさ故の荒々しさはなく。ベテランのような、巨匠のような。「きみの鳥はうたえる」のラストの素晴らしさが大好きな自分にとっては寂しいけれど、
しかし彼の作品を見るには今が一番いい時かも知れない。嵐と静粛の間。
未だ頭の隅にひっそりと
3回観ました。1回はコメンタリー付き上映です。
主人公ふたりはあるきっかけをもとにお互いが「相手に何かできないか」と考え
始めることでストーリーが動きだします。
ふたりが恋愛には発展しない物語というのは知ってたとはいえ、お互いを気遣い
相手の為に一生懸命何かをしてあげたり、ふたりきりのシーンが多いと普通なら恋愛に
発展しない訳はないと思うのですが、目を合わせて会話することがほとんどなく、
萌音さんと北斗さんの自然な演技で「このふたりは無いな」と思わせてくれます。
ふたり以外の登場人物もとても魅力的に描かれていて、そんな優しい人ばっかり
いるわけない!ではなくどこかに優しい人がたくさん集まった場所がひょっとしたら
あるのかもしれないと希望が見えました。
静かに、贅沢に、心に残る余韻にずっと浸れる作品です。
自分には合わない
人生の接点での深い出来事
生きづらさを感じる人たちと社会の距離感
生き辛い、しかし、生きたい
うつ病が心の風邪と言われて久しいが、実態は何も変わっていない。本作は心の病に苦悩しながらも、社会と向き合い懸命に生きようとする二人の男女の物語である。
人間は一生の間に色々な病に罹る。治癒する人もいれば、持病として一生その病と闘う人もいる。それでも、大抵の人は、普通の社会生活を送ることができる。日本の社会もそれを認めている。しかし、一つだけ日本の社会が許容できない病がある。心の病である。
本作の主人公は二人の男女。PMS(月経前症候群)で、月に一度、月経前に精神状態が不安定になり発作が起きる藤沢美紗(上白石萌音)と、パニック障害で、突発的な発作が起きる山添孝俊(松村北斗)である。二人は転職先の会社で隣り合った席になる。そして、ある日、山添のある行動が美紗の発作を誘導してしまう。そのことを切っ掛けに二人は自分の境遇を打ち明け、友達とも恋人とも違う互いに助け合う関係を築いていく・・・。
二人の距離感が絶妙。発作が起きた時には助け合う。普段は自己主張をぶつけ合うが、喧嘩にはならない。心の病に罹った者同士の相互理解、相互信頼ができ、心の病と闘う戦友と言うべき関係だから。
生き辛い、しかし、生きたい。という文字が画面に映し出された時には、はっとした。二人は心の病に不寛容な生き辛い社会に絶望せず懸命に生きようとしている。挫けていない。胸が熱くなった。
二人は、出会ってから徐々に生気に溢れ、プラネタリウムの企画では、見事にミッションをクリアする。生まれて初めて二人が生きている喜びを感じた瞬間だろう。
二人が出会った転職先での仕事仲間達は、二人の病に寛大で、出来過ぎ感、違和感があったが、社長もまた心の闇を抱えた人間だと知り得心した。己の痛みを知るものは他者の痛みを理解できるのである。
日本社会の心の病に対する不寛容は、過去の偏見と理解不足が生み出したものである。心の病を熟知し、心の病に罹った人達が生きがいを感じる社会作りが喫緊の日本社会の課題だろう。
社会の中で苦しんでる人を知ってもらうことも映画の魅力
パニック障害、PMSなど見た目では認識できない病が沢山あります、私達が認識することで優しい社会になっていくんだと思った。
零細企業の社長役の光石研さんがとても優しい、それが社員に連鎖していく。
そんな優しさに上白石萌音、松村北斗の心も穏やかに周りのことも見られるように変化していく様子がわかりやすく描かれている。
中でも松村北斗が会社や同僚に否定的な態度だったのが、自転車に乗り、会社の作業着を
着るようになり、出先から差し入れを買って帰る。
病で苦しんでる人だけでなく、精神的、家庭環境に苦しむ人を助けるのも周りの人なんだな。周りの人の優しさは伝わり、連鎖するように。
夜を苦しみに例えるならば夜明けは優しさという太陽により夜明けが来るとさえ思えた、人に優しくなれる映画でした。
やや単調
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