「この時代にマッチした作品」夜明けのすべて k _さんの映画レビュー(感想・評価)
この時代にマッチした作品
SNSは主流になり、財布も仕事も携帯電話でできてしまう、そんなデジタル化が進む日本で、
時代に逆行するかのようにフィルム写真やアナログなものを好む人も増えているように思う。
今作は画質の荒い、平成初期のようなアナログな映像であることが印象的だった。
登場人物の服装や街も派手なものはなく、どこか質素で古い。
それでいて軸となるのは「パニック障害」と「PMS」。
このふたつの症状についてはここ数年で世の中に広く浸透したものと思う。
この作品が何年の設定なのか不明だが、
時代背景も映像も音楽も物語の進み方も、なんだかとてもちょうどいいものだった。
至ってシンプルで、ちょうどよかった。
職場でのあれこれに共感もした。
コピーを取って欲しい態度でない社員、ああ今日中に辞めようと決める時、逃げ出したい気持ち、お菓子を配る社員たちと群がりたくない気持ち、
誰もが一度は共感したことのある所謂「詰んでる」あの気持ち。
とってもよくわかると思いながら見ていました。
また、藤沢さんの着ているもの、お家のインテリア、携帯ケースなどの物たちは『上白石萌音』ってこうだよね。と言いたくなるようなコーディネートだった。
着てそう。暮らしてそう。冬のコートに髪を一つに結んでお顔が少し埋まるくらいマフラーぐるっと巻いて温かくしている萌音ちゃん。これは藤沢さんなのか?萌音ちゃんなのか?と錯覚に陥る。
みかんを食べて歩いているのはたまらなくかわいかった。
🧣🍊❄️
そしてなんといっても、メインキャストのお二人の共演はあの朝ドラなしでは語れないだろう。
いつどの時代で出逢っても、ふたりはバランスがよい。
「普通」を演じることに抵抗の無さを感じる。
人はどんな環境に身を置くかで顔色がうんと変わる。生き心地がうんと変わる。
そのことを無理矢理とか、強制とか、語りかけるでもなく、
ひとりの人の生活に寄り添うように見せてくれた作品だった。
今作を観ながらふと、
ああ、いい映画だな。とおもった。