「この映画の好きなところ(2024.3.9)」夜明けのすべて Mさんの映画レビュー(感想・評価)
この映画の好きなところ(2024.3.9)
1.松村さんの演技
何と言えばいいんだろう。とても自然で、なんか、そこに実際にいる人が話しているような雰囲気。全面的によい人というわけではないが、なんとなくにじみ出ている優しさ。淡々とした感じ。
2.流れている曲
通奏低音という言葉がまさにふさわしい、ずっと流れている木琴とビブラフォーンの間のような音。心が休まる。この映画の雰囲気を形作っている。
3.思わずクスッとするシーン
「そこで1人で怒っておいてください」や、会社のよいところをいってる間に、駅までの距離等の不満が出てくるところなどのユーモアのセンス。
4.社長の優しさ
この会社が優しいのは社長の人となりのおかげだろう。主人公が雇ってくれたお礼を言うシーンでも、さらっと流して別の話題に行くようなところ。今回、気づいたがホワイトボードの名前、全員名字だけなのに、社長のみフルネームだった。美術の担当の方が、しっかりこだわっておられるのがわかった。
5.プラネタリウムと死生観
物語の始めの方で、「だれがいなくなっても困らないように」という台詞がある。これは事務的なことを言っているだけのはずなのだが、プラネタリウムの語りの中で、「人は死んだら星になるという人がいるが、実際は死んだら何もなくなってしまいます」というような言葉がある。一見、冷たい言葉のようでいて、何か、すべての物を包み込むような優しさをたたえているように思えた。この原作の小説との一番の違いはこのプラネタリウムに関するもののように思う。今回見て、このプラネタリウムを実施した日が2024年3月9日であることに気づいた。この映画、つい先日までは未来の話だったんだ。
6.ざらざらとした画面の質感
私は、本棚があるとどんな本が並んでいるのか題名を見たくなるような人だが、題名が読めそうで読めない解像度(?)。元々は、この映画を見たきっかけは、ある監督が自分の作品そっちのけで誉めておられたから。同じ照明の方がされているようだが、明るすぎず暗すぎず、なんとなく落ち着くような画面が好き。
7.渋川さんの演技
ずっと「空飛ぶ広報室」のカメラマンのイメージだった渋川さん。昨年、海外作品の「ブラックパンサー2」のネイモア役で出てると思ったら、今回は一番感情を揺さぶるシーンを演じてくれました。
8.二人の関係
ポスターから見て、てっきり恋愛映画と思っていました。あんなに仲良くなっても、恋愛関係にならなかったところは、(私にとっては)とてもよかったです。
〈以下、以前に書いてたレビュー〉
見て「いい映画だったなあ」と思う人のみ読んでください。
〈映画を見て好きになった人への紹介〉
nobodymag.comというサイトに
三宅唱インタビュー(2024年2月6日、六本木 聞き手・構成:梅本健司)
という記事があって、そのインタビューが素晴らしい。
読みながら、監督ってこんなことまで考えているのか!と、思わず唸らされました。
私がこの映画の印象として「優しい気持ちになれる映画だなあ」と感じたのも、そうなることを意識して監督が撮っておられたのだということがわかります。
インタビューアの方もしっかり映画に取り組んで(なんか変な表現ですが)おられて、的確な質問をされています。そのおかげで、インタビューの内容がとても深いものになっています。
原作にはある「ある映画」については「権利が取れなかった」との表現で、そこが使われなかった理由を明かしてあります。
監督の言葉一つ一つが、この映画を見た者にとっては、「へー、そうだったのか」と思ったり、「なるほどなあ」と感心したりのオンパレードです。
私が一番心に残ったのは、三宅監督の
まずはとにかく俳優がちゃんとキャラクターをつかまえることが大事なんだなと改めて学びました。
という言葉でした。
〈上のインタビューと合わせて読んでいただければ〉
かみのたね
特別鼎談 三宅唱×濱口竜介×三浦哲哉
偶然を構築して、偶然を待つ
― 『夜明 けのすべて』の演出をめぐって
という対談も相当面白いです。「かみのたね」というサイトにあります。
〈以下、以前のレビュー〉
二度目の鑑賞。
「いつ誰がいなくなっても大丈夫なように」。映画が始まってまださほど時間の経っていない中でのおばさんの言葉に、思わずドキッとしてしまいました。
何気ない会話の中の言葉だったのですが、人の儚(はかな)さを感じさせる言葉でした。儚いからこそ尊いというか、いつ何があるのかわからないのが人生の常というか。
ある程度生きてきた人ならば(たぶん)みんなが持っているであろう後悔や喜びや悲しみやそんなものをすべて含んだ言葉に聞こえました。
この映画の優しさを作り出しているものは何か考えてみました。
もちろんストーリーはあります。そこここにあるちょっとしたユーモア。落ち着いた画面。作品を通して流れているあたたかな音楽。そして何よりこの作品に命を吹き込んだ役者さんたち。私は特に山添くんを演じた松村さんの演技に心ひかれました。
今年の作品では「ロストフライト」と並んで私のベスト映画である本作品。
一度この映画をご覧になられた方なら、ご存じの通り、改めて「優しい気持ちになれる映画だなあ」と思いました。プラネタリウムを見たくなりました。たい焼きも食べたくなりました。
書きたいことが溢れ出るような気持ちがしていますがうまく表現できません。
みなさんたちはどんな所が心に残りましたか?
〈元々のレビュー〉
「アポロ13」はわかりました。もうひとつの「おじいちゃんたちが宇宙に行く映画」って、どの映画のことですか? よろしければ教えてください。(漫画なら浦沢直樹の「NASA」っぽいですけど)
ある監督が、自分の映画はそっちのけで誉めておられたので、興味をもって見に行きました。誉められただけのことはありました。その監督に感謝です。
優しい気持ちになれる映画でした。いい映画です。みんなに見て欲しいです。
りょうさんが子ども思いのお母さん役になっていて驚きました。(「踊る大捜査線」の犯人役のイメージが強かったので)
追記
ふと思ったのですが、夜明け前が一番暗いというのは、実は間違いではないのか、と。
確かに気温は夜明け前が一番低くなるような気はしたのですが・・・。
しょうもない話ですみません。
〈小説を読んでからの追記〉
小説を読みました。途中から「ボヘミアン・ラプソディー」のサントラを聞きながら読みました。
この小説、映画とはだいぶ違いました。
ただ、映画にも小説にも共通しているのは、「恋人でもなく、友達でもなくても、助け合える関係ってあるんだなあ」と思えたことです。
小説もよい話でした。
が、この小説をほんとに上手い具合にアレンジして、この映画は作られたんだなあ、とも思いました。
脚本、監督、その他映画に関わった方々の力量を改めて感じました。
こんにちは
共感とコメントありがとうございます。
Mさんのレビュー読ませて頂いて、
監督インタビューを幾つも、2回目の鑑賞、そして
原作の読破。その熱感と情熱に圧倒されています。
松村北斗さんへの感じ方が似ていて嬉しく思っています。
渋川清彦さんが思わず嗚咽を漏らすシーン。
川添が栗田工業(?)に腰を据える決断を知り・・・
ここまで成長したかと思ったのでしょうか?
良いシーンでしたね。
はい、昨日からU-NEXTで配信になり、
待ちかねていたので早速観ました。
派手な映画でないのに、「名作」と呼ばれる映画だと
思ってしまいました。
共感とコメントありがとうございます。
宇宙人ジョーンズが出ていたアレみたいですね
プラネタリウム実施した日、私が見た時点では過去です。
3/9まではごく近い未来の話だったんですね。この間になにか大きなことがあるかもしれない、未来は分からない、不思議な感覚になります。気づいたMさんの感覚が素晴らしいです
Mさん、コメントいただきありがとうございます。芋生さんはクールビューティーかと思いきや、すごく柔和で笑顔のキュートな方でした。ますますファンになりました。
ほんとに細かいところまで監督が考えておられるのがすごかったです。
監督という仕事は大変だけどやりがいがありますね。
私たちは、その監督の術中に見事にはまった、ということでしょうか。
とてもよい映画だと思いました。
コメントありがとうございました。幾つものエピソードや小道具たちの中に、制作者が込めたメッセージを発見して、それがさりげない優しさだったりすると、その映画が大好きになりますね。
私は逆に、あれだけ仲よくなった(夜?に家を訪問など)のに、恋愛関係に発展しないのが、意外でした。また、彼女の転職をあっさり認めたのも不思議な感じがしました。彼女にとっては、あの会社に勤めている方が、絶対によいように思いましたので。
何度か見返しましたが、見るたびに優しい気持ちになれる作品です。
コメントありがとうございました。恋愛要素を持ち込まないことで、二人が抱えてる生きづらさにちゃんとテーマが絞られて、見やすく共感できる映画だったなと思いました。
松村さん。いいですね。
私はアイドルとしての松村さんは全く知りませんが、素晴らしい役者さんだと思いました。
昨年から映画をよく見るようになったのですが、監督って、凄いなあと思うことがしばしばです。
ここでの評価も、最初は単純な好き嫌いで決めていましたが、映画を作り上げることの大変さを感じるようになって、なかなか低い評価を出せなくなりました。
その映画の中で、ストーリー、役者の演技、その映画の持つ雰囲気など、何か惹かれるものがあると、つい星5をつけてしまい、他の方々に比べると、ずいぶん高めの評価になってるかもしれません。
好きな映画に関する話を読んだりすると、つい嬉しくなってしまいます。
「ディアファミリー」ですか。楽しみにしておきます。ありがとうございました。
ありがとうございます。私も監督のお話を聞くたびに、こんなとこまで考えていたのかと頭の下がる思いです。二時間くらいでさらっと観終えてしまうのが申し訳なく、どれ程の時間を費やして一本作り上げるのか、改めて映画って素敵だなと思いました。
主演の二人も別のところでは、夫婦役の経験もあり、あの自然体のなんとも言えない空気感はそう言うところからも来てるのかな、とも感じました。松村さんは現役アイドルであるけれど、俳優として真剣に取り組んでいる姿を応援しています。近々公開されるディアファミリーにもお医者さん役で出られるようでまた、楽しみにしています。
映画っていいですね。どんな作品に出会えるかわくわくします。
10回ですか。それはすごい。
私は6回ですかね。
見るたびに心が癒されます。
私も今年見た中では一番ですかね。
レビューに書いたインタビューを読みながら、監督の仕事っておもしろいなあ、凄いなあ、と思いました。
何よりも、私たちが感動しているところは、監督が意図して感動させてるんだと知ったことにはビックリでした。
本日観てきました。封切りから10回くらい通いました。もう上映館も少なくさびしいです。途中からはコメンタリー付きで三人の楽しい会話にほっこり心地よく
何度観ても飽きることなく、新たな発見と、何より自然体の演技に癒されました。感想はMさんが語ってくだった通りで語りきれません。私の一番のお気に入りです。 Toshi
とても自然でリアルな映画だなぁ、上白石萌音さんはどんどん素敵な俳優になってるなあ、なんでもかんでも恋愛にするのでなくてよかった。わたしは人へのプレゼントや差し入れやお菓子選びがとても下手です。だからあんな風にできたらなあと溜め息です
お返事ありがとうございます。何かの記事で読んだんですが、本作が16ミリで撮影されてるのは予算的な都合だけでなく、荒い画質に味があるからなんだと思います。人間の心の中の記憶は映像的にはデジタルのように鮮明ではなくぼんやりとしたもの。鮮明過ぎない柔らかくて優しい画面が人の心に浸透しやすい作品なのかなと、ふと思いました。コット見たかったんですがこのところ体調を崩して仕方なく断念しました。お返事は結構ですよ。
レントさんへ
コメントありがとうございました。「愛がみなぎる」と書かれると、なんか非常に照れ臭いのですが、確かにとても好きな作品になりました。今年見た邦画では一番です。
洋画では「コヴィナント」や「ロストフライト」「コット、はじまりの夏」などが好きになりましたが、「コット」はこの作品と同じく優しい気持ちになれる作品でした。
インタビューはほんとによかったので、ぜひ読んでみてください。この映画に関するだけでなく、「映画を作る」ということ自体についての興味が湧いてきます。
talismanさんへ
松村さんって元々はアイドルの方なんですかね。私はまったく知りませんでした。
映画の最初の頃の長髪姿の横顔が江口洋介の若い頃にそっくりで、ビックリするくらい似ていました。
受け答えや表情が、ほんとにいそうな人に見えて、凄いなあと思いました。
実際につきあっていくのと、映画で体験したような気持ちになるのとでは、まったく違いますよね。
インタビューは、かなりおもしろかったので、ぜひ読んでくださいね。
映画の監督って、こんなにもいろいろ考えているんだと感動しました。
コメントありがとうございます。優しいMさんらしいレビュー、心が洗われる思いです。
ある日、昼休み1時間過ぎても彼女が戻って来ない。携帯も出ずで皆んな心配していたが、それぞれ仕事もあるので仕方なくそのまま待っていた。
しばらくして戻った彼女に訳を聞くと。。自分のお土産に誰も手をつけなかった事が不安になって戻れなくなったと。。「ゆきさんのお土産は1日でなくなった。私のは2日経っているのに残っている」と。。お、お〜ん。。
私のは個包装のクランキーだったが、彼女のはパイナップルあんのお饅頭で、1度開封したら食べ切らないと。。な、物だったから、みんなまとめて休憩に入る日じゃないと食べにくいし、好みもあるよね。。説明してもこだわりになってしまって仕事どころではなくなる。私も仕事が止まる。
こんな事(と言ってはいけないが)が頻繁に起こると、こちらも疲労困憊でした( ; ; )
そんな記憶が蘇り、私にとっては心がギュッとなった作品でした。
インタビュー、読んでみますね!
そうなんです。
私はこの映画を気に入って、(普段は原作を読んだりはしないのですが)珍しく原作を読みました。
見たことのある映画でしたから、後半はサントラを聞きながら読みました。
原作もいい話でしたね。
Mさんこんにちは。
紹介されているインタビュー、読みました。いいインタビューですよね。
>原作にはある「ある映画」については「権利が取れなかった」との表現で、そこが使われなかった理由を明かしてあります。
これ、「そうなんだ!」と思いました。原作ファンは、きっとここは好きな場面ですよね。
今回、自分は映画から原作という流れだったので、映画は映画で、このシーンがなくてもしっかりとまとまっていて、どちらも楽しめた「お得感」がありましたw
大吉さんへ
「西の魔女が死んだ」見たことありませんでした。
本は読んだことがあり、評判の割に私は今一つだったので、映画があっても興味を持っていませんでした。
今度、配信にないか見つけてみようと思います。
りょうさん、「西の魔女が死んだ」でもお母さん役で出ていました。
ゲームやインターネット、携帯電話(今ならスマホひとつ)がなくても豊かな生活を送ることができるって内容で、スターが出ていなくても、CGやアクションがなくても良い映画を作ることができるってことを示しているみたいで、好きな作品です。
Mさん、いつも有り難うございます。私は大病を患ったこともなく割と安穏と生きてきたため、苦しんでいる人の気持ちが分からず寄り添ってあげることが出来ませんでした。結果、一番大切なものを失ってしまいました。
お恥ずかしい次第です。
この映画、本当に観てよかったです。
亞レックスさんへ
あるインタビューを読んでいたら、その雨のことについて触れた場面がありました。
見た時にはまったく意識していなかったのですが、監督というのは物凄くいろいろなことを考えているのだなあ、と改めてビックリし感心しました。
雨のことなどまったく気にしていませんでした。どの場目のことなのかもわからない状態です。
今度見る時には、ぜひ気にしておきたいと思います。
教えていただきありがとうございました!
「いつ誰がいなくなっても大丈夫なように」。
引き継ぎや後進の育成がされていなかったために苦労しているので、身に沁みています。
(現在10人にも満たない会社で、入社5年ほどで3人見送りましたので…)
はい。その映画自体は自分には今一つだったのですが、静かな監督で、自分の作品の主張はあまりせず、この「夜明けのすべて」をほめられていたのでビックリでした。
監督の作品はよくわからなかったのですが、この監督に対する信頼感はできたので、次の作品(あるいは過去の作品)が映画館でかかるのを楽しみにしています。
コメントありがとうございます。最近レビューを書くことを始め、俳優さんや制作に携わる人に対するリスペクトや義務のように感じてやっています。映画好きの人達とのコメントを通しての交流も、生きがいの一つになっています。
あんちゃんさんへ
岸井さんも凄い俳優さんですね。あの映画も好きでした。
岸井さんはドラマの「99.9」で初めて知った役者さんでした。最初、なんかしょうもないなあ、とただ楽しむだけでしたが、CDの「そば煮るね」に感動して以来、ファン(?)になりました。
ただのおもしろい人ではなかったようで、今の活躍がウソのようです。
ノブ様さんへ
よい映画でした。確かに映画で見るのと、間近に対応しなければいけないのは違いがありますね。
でも、こんな映画を見ると、自分も優しくならなきゃと思います。
コメントありがとうございました。「ケイコ、目を澄ませて」はやはり岸井ゆきのの凄まじい体技に目を奪われてしまいます。三宅唱監督の映画づくりのきめ細やかさがよく伝わるのは今作のほうかもしれません。写真で見る限りはかなりコワモテですがこころ優しい人のようです。
なるほど、あの場面なんですね。
私は中学生のインタビューで、この会社のよいところの場面で、すっかりこの会社のことが好きになったんだなあ(それ以前の様子からもわかってはいましたが)と実感できました。
ジャンパーの場面は見逃していて残念です。
共感とコメントありがとうございました。
ジャンパーを初めて着るのは、藤沢さんの家に携帯を届けるために出かける前です。ああ、心も栗田科学の一員になったんだと思ったら泣けてきました。
顔を見ずに帰るところ、自分だったらきっと顔を見ようとするなぁとMさんと同じように思って観てました。さりげないけど、なかなかできないことですよね。
いいねありがとうございます。一人で怒っててもらっていいですかって今度機嫌悪い人がいたら使ってみようと思ってます 笑 おじいちゃんが宇宙へ行くってスペースカウボーイでしょうか?
Mさん、共感とコメントありがとうございます。
りょうさん、若いお母さん役で
素敵でしたね。40代かな?
月日の流れを感じました。笑
映画の様に寄り添える人に
なる事が出来ればと思いました。