家からの手紙のレビュー・感想・評価
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遠く離れた故郷から、アケルマンのいるニューヨークへ、母からの手紙は...
遠く離れた故郷から、アケルマンのいるニューヨークへ、母からの手紙は届く。
アケルマンの声で読み上げられるのは、母から来た手紙だけ。彼女が住んでいるニューヨークの風景がずっと映し出される。彼女の生活が故郷での生活とはかけ離れていることを、なんとなく、想像させる。
アケルマンの書いた返事の方は読み上げられないから、こちらで勝手に彼女が母にどんな手紙を書いたのか予想する。映画の余白。
手紙はずっと読み上げられているわけではなくて、街の景色や人々の移動だけが映し出されては流れていく時間も多い。手紙の届く時間の長さを感じる。手紙を相手に送ってやっと返事が来たあの安堵感を体感する。
「忙しくても返事を書いて送ってちょうだい」という母の言葉は、たくさんあったように記憶している。故郷とニューヨークの物理的な距離だけではなくて、心理的な距離感までも感じられた。つい、忙しくて、自分のことだけで精一杯になって、母への手紙に返事を出来ずにいる娘。余白の多い映画だから、いつのまにか、自分の母のことを考えていた。
そんな私は、アケルマンの母からの手紙が届く(読み上げられる)のを待ちきれなくて、寝てしまったの。
起きた時には、おそらく船に乗っていて、ニューヨークの景色が離れていく最後のシーンだった。
アケルマンは母に帰ることを伝えたのだろうか、母は娘の帰郷を喜んだのだろうか。私には結末がわからなかったけれど、ニューヨークの街は美しく霞んで、遠く離れていった。
ニューカラー好きには、たまらん世界観!
う〜ん… これはイイ…
まるで、スティーヴン・ショアや、ジョエル・マイヤウィッツなど(南部のエグルストンは、ちょっと違うかな)ニューカラーの世界が映画として動き出したかのようだ。
あの世界観が好きな人には、間違いなくグッと来るだろう。
つくづく70年代のニューヨークは、当時のアメ車も含めて、本当に絵になる。
あの頃のアメ車好きの人にも結構お勧め。
エトランゼ特有の孤独感が、また堪らない。
あの当時の荒涼で渇いたニューヨークの街並みをカメラで水平移動しながら、実家からの愛情たっぷりの手紙が、ひたすらフランス語で語られる。
ひっきりなしに送られて来る母国の家族からの愛情、しかし、それとは微妙にスレ違いながら彷徨い続ける孤独なアケルマンの審美眼…
う〜ん… 素晴らしい。ずっと観てられる。
アケルマンは全作観てないけど、今のところ、これが最高傑作。
とはいえ、ちょっと長尺だったかな。
ちなみにラストは、ジャームッシュの『パーマネント・バケーション』の元ネタ?
尚、タイトルの方は原題そのまま『ニューズ・フローム・ホーム』の方が、あのドライな世界観には合ってたと思う。
彼女が、あえて”英語”のタイトルにして、”Letter”でなく”News”(近況の便り)とした意向は、ちゃんと踏まえないとアカンよね。
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