家からの手紙のレビュー・感想・評価
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都会の孤独
当映画館のホームページで気になったので鑑賞しました。 私は現在60歳を過ぎ九州で暮らしていますが、30年近く東京で暮らしていたので、色々なものが自分と重なり心が揺さぶられました。都会の孤独をスタイリッシュに描いています。 この類の映画に興味のない方だと1ミリを刺さらなかもしれませんが、アメ車好きであれば興味がわくと思うます。1970年代自動車産業の栄光を独り占めしていたアメリカの車、リンカーン・キャデラック・シボレー・ダッジ等がスクリーンいっぱいに出てきます。アメ車好きにはたまらないと思います。 本題の戻りますが途中で気が付きましたがアングルがすべて人間の普段歩行する目の高さの撮影にこだわっています。上空からやローアングルは一切ありませんので本当にその場所にいるような感じがします。それとやはり静かな感動を呼ぶのはラストの岸から離れていく船上からのアングルです。 ブルーレイや配信がスタートしたら再鑑賞したく考えています。
素晴らしかった
シャンタルが自分宛てへの母親の手紙を読み続け、 カメラはひたすらにニューヨークの街並みを追っていく。 娘の気持ちは母の手紙からしか見えない。 しかし、最後にはニューヨークを旅立つ。 その答えの出し方も鮮やかだし、 道中にさまざまな考えを巡らせられるのも この表現方法ならではだと思う。 人々を切り取ること、 人々を見つめること、 それは背景を読み取ろうとすること 自分自身をも見つめること 想像すること、創造すること。 全てが故郷につながり、 そして母親につながってしまうのだ。 とにかくこの母親への愛がたっぷりと詰まった映画は、 唯一無二のドキュメンタリー映画だといえる。 実際に母親の姿も娘の姿も出てこない本作が持つ力は 凄まじい。 私たちは、私たちの中で母親像、娘像を夢想する。 それは、かつての大切だった人かもしれないし、 有り得たかもしれないその人の姿かもしれない。 そして、いま大切にすべき人なのかもしれない。
遠く離れた故郷から、アケルマンのいるニューヨークへ、母からの手紙は...
遠く離れた故郷から、アケルマンのいるニューヨークへ、母からの手紙は届く。
アケルマンの声で読み上げられるのは、母から来た手紙だけ。彼女が住んでいるニューヨークの風景がずっと映し出される。彼女の生活が故郷での生活とはかけ離れていることを、なんとなく、想像させる。
アケルマンの書いた返事の方は読み上げられないから、こちらで勝手に彼女が母にどんな手紙を書いたのか予想する。映画の余白。
手紙はずっと読み上げられているわけではなくて、街の景色や人々の移動だけが映し出されては流れていく時間も多い。手紙の届く時間の長さを感じる。手紙を相手に送ってやっと返事が来たあの安堵感を体感する。
「忙しくても返事を書いて送ってちょうだい」という母の言葉は、たくさんあったように記憶している。故郷とニューヨークの物理的な距離だけではなくて、心理的な距離感までも感じられた。つい、忙しくて、自分のことだけで精一杯になって、母への手紙に返事を出来ずにいる娘。余白の多い映画だから、いつのまにか、自分の母のことを考えていた。
そんな私は、アケルマンの母からの手紙が届く(読み上げられる)のを待ちきれなくて、寝てしまったの。
起きた時には、おそらく船に乗っていて、ニューヨークの景色が離れていく最後のシーンだった。
アケルマンは母に帰ることを伝えたのだろうか、母は娘の帰郷を喜んだのだろうか。私には結末がわからなかったけれど、ニューヨークの街は美しく霞んで、遠く離れていった。
なんだろう、むず痒いようでいてこのあったかさは。
固定のショットで映し出される当時住んでいたというNYの街の記憶。 時折聞こえてくる母からの手紙を音化した声。 その内容には子を想う母親の心配、日常の出来事がふんだんに詰まっていて、あぁ、世界中のお母さん達が想うこと、表現することってやっぱり似てるんだなぁと素直に思う。 またそれを素直に受け取れない娘の立場も併せて。 娘の成長を感じながら、同時に切なくも思う母親の心情とNYの街並みが徐々に溶け合っていく… 類を見ない映画体験ができた。
ニューカラー好きには、たまらん世界観!
う〜ん… これはイイ…
まるで、スティーヴン・ショアや、ジョエル・マイヤウィッツなど(南部のエグルストンは、ちょっと違うかな)ニューカラーの世界が映画として動き出したかのようだ。
あの世界観が好きな人には、間違いなくグッと来るだろう。
つくづく70年代のニューヨークは、当時のアメ車も含めて、本当に絵になる。
あの頃のアメ車好きの人にも結構お勧め。
エトランゼ特有の孤独感が、また堪らない。
あの当時の荒涼で渇いたニューヨークの街並みをカメラで水平移動しながら、実家からの愛情たっぷりの手紙が、ひたすらフランス語で語られる。
ひっきりなしに送られて来る母国の家族からの愛情、しかし、それとは微妙にスレ違いながら彷徨い続ける孤独なアケルマンの審美眼…
う〜ん… 素晴らしい。ずっと観てられる。
アケルマンは全作観てないけど、今のところ、これが最高傑作。
とはいえ、ちょっと長尺だったかな。
ちなみにラストは、ジャームッシュの『パーマネント・バケーション』の元ネタ?
尚、タイトルの方は原題そのまま『ニューズ・フローム・ホーム』の方が、あのドライな世界観には合ってたと思う。
彼女が、あえて”英語”のタイトルにして、”Letter”でなく”News”(近況の便り)とした意向は、ちゃんと踏まえないとアカンよね。
湿度の高い母からの手紙
ニューヨークの乾いた空気 もうね、20ドル届いたよ。ありがとうって言っとこ? 途中何度も吹きそうになった 母の時間は静かにゆっくり流れ、娘の時間は目まぐるしく過ぎゆく 時には母の心配する想いもニューヨークの喧騒に掻き消される 途中飲食店で飲み物に物凄い量の砂糖を入れてる人が写ったけどあれは演出なのか?
映像と手紙だけで、この面白さ。
定点カメラでRECされた70年代のNYの空気を閉じ込めた映像と共に、母から送られるNYにいるアケルマン宛の手紙が読まれる。ただし、アケルマンから返信される手紙は読まれないため、母からの返信で内容を推察するしかない。言ったら、それだけの映画。シンプルながらにして雄弁。 原題はNews from homeで、Letter from homeじゃないところが愛。大学入学のために北海道から東京に出た身としては、当時の心境がカブる。
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