「先進国とセレブの傲慢さと地元のしたたかさ。結果、やっぱりミア・ゴスの存在感が際立つ「リゾート地闇堕ちスリラー」」インフィニティ・プール ITOYAさんの映画レビュー(感想・評価)
先進国とセレブの傲慢さと地元のしたたかさ。結果、やっぱりミア・ゴスの存在感が際立つ「リゾート地闇堕ちスリラー」
いわゆる「リゾート地闇堕ちもの」?
義父のコネで1作だけ出版できた小説家の男と妻は、とある国家の観光地らしい目玉が全く無い治安が極めて悪い名ばかりリゾート地にアイディア探しのため数日滞在する。
しかしそこでは、観光客が殺人を犯した場合、大金を払えばクローンを作ってくれて、代わりに死刑にすることができるという裏ルールが存在していた。
平凡な私だったら、まず普通に主人公が処刑されてしまい、いたんブラック・アウト。
フェード・インして、それを見ていたもう一人の主人公が、過去を回想するか、
処刑前のシーンから始まって、どこかおかしいと気づいた彼が、捜査して驚愕の真実を発見!
みたいになると思うのですが…(ハリウッド低予算C級作の見過ぎ)
そこは焦点ではないらしく、
殺人もクローンもバカンスのお祭り騒ぎと割り切って楽しんで、金で解決、帰国時は普通に戻る、というのが本物のセレブの考え方。
殺人すらも利用して生きる現地人のしたたかさ。(クローン出来るならもっと儲ける方法はいくらでもありそうだが。)
その周りを、物珍しさと興奮で、ただただおろおろする、にわかセレブ、しかもそのクローン(だろう)という男の情けなさが満載でした。
デヴィッド・クローネンバーグの息子というレッテルを常に貼られる、ブランドンの監督・脚本作です。
監督の、他人の意識を乗っ取る殺し屋システムを描いた「ポゼッション」は観ました。
仮面のイメージや幻想と現実が錯綜し、観た後、ざらついた感覚が残るところが本作と共通の感想です。
が、でも、結局、とにかく、セレブ夫人を演じたミア・ゴスの存在感に尽きる。
さすがです。
予告で印象に残っていたのは、マウスピースをはめた「ウォレスとグルミット」のウォレス似の顔のみでしたし。
題名の『インフィニティ・プール』は、ミア・ゴス演じるセレブ夫人の夫が現地で設計していた施設で、「プールのふちに手すりなどの視界を遮るものがなく、目の前に広がる海や湖と繋がっている様に見えるプールのこと」。
自分が本物かクローンか、現実か幻想か、管理地内か柵の外か…など様々な境界のあいまいさを象徴して言うのでしょう。