「YRFスパイ・ユニバース本格始動♪ マーベルよ、これが『カーン・ダイナスティ』だ!!」PATHAAN パターン たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
YRFスパイ・ユニバース本格始動♪ マーベルよ、これが『カーン・ダイナスティ』だ!!
インド諜報機関「RAW」のエージェントたちの活躍を描くスパイアクション映画「YRFスパイ・ユニバース」の第4作。
心身の負傷により退役せざるを得なくなった諜報員/軍人で構成された特別チーム「JOCR」。その創設者であるパターンの前に、元RAWの諜報員ジムが現れる。インド政府に深い恨みを持つジムは、その復讐のため恐ろしい計画を推し進めていた…。
歴代インド映画興行収入ランキングで第8位をマークする、シリーズ最大のヒット作。『タイガー』シリーズ(2012〜)から主人公タイガーが、『WAR ウォー!!』(2019)からルトラ大佐が登場するなど、ここに来ていよいよユニバースが本格的に動き始めた。
主人公パターンを演じるのは、「キング・オブ・ボリウッド」との呼び声も高いスーパースター、シャー・ルク・カーン。世襲制が常態化しているインド映画界において、バックボーン無しでトップの座までのし上がってきた不屈の漢であります。
押しも押されもせぬスーパースターである彼だが、実は出演作の不発が続いており、コロナ禍も相まって2018年から本作までの約5年間はほとんど活動休止状態だった。もう彼の栄光もここまでか…と思われた矢先、本作の大ヒットにより再びスターの座に返り咲いたのだ。とことん不屈の漢だなシャー!
本人曰く、本作は彼にとって初めてのアクション・ヒーロー映画らしいのだが、とてもそうとは思えないほどに堂に入っている。インド、スペイン、アフガン、ロシアと、世界中を駆け回っての大活躍には胸躍らずにはいられない😊
まぁこの映画はなんと言っても役者の魅力で成り立っている作品である。
「イケオジ」なんて言葉をよく耳にするようになったが、この言葉はシャー・ルク・カーンの為にある!!
真田広之とジェイソン・モモアを足して2で割ったような、渋いながらもチャーミングなフェイスとバキバキすぎる肉体美。いや、本当にこれで50代後半なのっ!?とても信じられないっ!
世界広しといえども、シャー・ルク・カーン以上にセクシーなアラカンはちょっと居ないんじゃないでしょうか。なぜ日本でもっと有名にならないのか不思議な、イケオジの中のイケオジ♪
そんな彼とロマンスを繰り広げるのは、絶世の美女ディーピカー・パードゥコーン。この人、本当にこの世の者とは思えないほどの美人なのでありますっ💕
『パドマーワト 女神の誕生』(2018)で激ヤバ王女を演じていた時にはそれほど魅力を感じなかったのだが、本作の彼女はマジでヤバい…。どんな場面でも服の布面積が極端に少なく、常に我々男性観客の目を喜ばせてくれる。そのサービス精神や良し!
ベッドシーンもなければキスシーンすらない。しかし、シャー・ルク・カーンとディーピカーが醸し出すケミストリーは、観客をメロメロにしてしまう事だろう。アラカンとアラフォーとは思えない、インド人もびっくりな美男美女が織りなすロマコメアクション。これは一見の価値ありっ!!
ただ、肝心のスパイアクション要素は今ひとつ。いや、十分面白い!十分面白いのだけれども、どこか牧歌的というか間が抜けている。
ユニバースというジャンルの先駆けである「MCU」から多大な影響を受けていることは間違いないこのシリーズ。本作のアクションにはガッツリ『キャプテン・アメリカ』シリーズ(2011〜)からの影響が見て取れるのだが、本家と比べるとやはり緊張感が足りない。
CGのクオリティに差があるのは仕方ないにしても、脚本はもう少し練っても良かったのではないか。『WAR ウォー!!』をも下回るガバガバさ…💦2002年のアフガンにスマホってあったんすかね?
とはいえ、このユルさもまた本作の魅力である事は間違いない。肩の力を抜いてダラっと楽しむ事が出来る、娯楽に特化したスパイ映画というのもオツなものなのです♪
シリアスだったりバイオレンスだったりポリティカルだったりすると観ていて疲れちゃうからね。こんくらいがちょうど良えんよ。
もちろんアクションだけでなくダンスシーンも用意されているので、インド映画ファンの期待を裏切るような事はありません。どことなく『ワイルド・スピード』(2001〜)っぽさを感じさせるド直球なセクシーダンスなのですが、それでいて全く下品に見えないところがマサラ映画の凄さだと思う。ディーピカーさん、その尻のデカさは反則級だぞっ!
シャー・ルク・カーンと、タイガーを演じるサルマーン・カーン。ついにボリウッド3大カーンのうちの2人が揃った!エンドクレジットシーンのボヤキは、完全に自分達の業界内での立ち位置を弄るメタネタやないかい😅MCUの場合は大抵ここで次回作への前振りを行うのだが、そういう事は置いておいてとりあえずコメディ要素をぶち込んじゃうところに、インドらしい大らかさを感じずにはいられない。
3大カーンのうち2人が揃ったのだから、どうせなら最後の1人アーミル・カーンも召集して欲しい。いや、きっとしてくれる筈!本家『アベンジャーズ』では『カーン・ダイナスティ』という作品が色々あって企画段階でポシャってしまった訳だが、このYRFこそが本当の『カーン・ダイナスティ』だ!!
まだまだ物語は大きく広がりそうなので、今から楽しみ♪
ただ、今後も日本でちゃんと作品が公開されるのかはちょっと不安。『タイガー 甦る伝説のスパイ』(2017)も最近まで日本未公開だったしね。
公開されれば絶対に観るんだから、このまま止まらず日本公開していってください!お願いしますっ!🙇
※事の発端である「インド政府による憲法第370条の破棄」。それって一体何?早速ググってみましょう。
そもそも、インドとパキスタンの国境にあるジャンムー・カシミール州というのはめちゃくちゃきな臭いところ。ヒンドゥー教が圧倒的に優位なインドにおいて唯一ムスリムが大多数を占める州であり、インドとパキスタンの両国が支配権を主張してきた。そんなこともあり、この地を巡って印パ戦争という争いが3度も発生している。第一次印パ戦争後の1954年、インドは憲法第370条を施行。ジャンムー・カシミールの自治権を認めた。
しかし、2019年2月に州内に潜伏するイスラム過激派がインド保安警察に対し自爆テロを決行。40人の警官が犠牲となる。
インドはその報復として、第三次印パ戦争以来、48年ぶりにパキスタン領内への空爆を実行に移す。さらに、第370条を破棄する事でジャンムー・カシミール州の独立自治権を剥奪してしまった。これによりジャンムー・カシミール州は19年10月に廃止。ラダック連邦直轄領とジャンムー・カシミール連邦直轄領に分割され、インド連邦政府の支配下に置かれる事となった。
これがこの作品の下敷きとなっている歴史的な背景である。今後、更なる争いがこの地で起こるような気がしてならない。動向を注視しておく必要があるだろう。
※※タイトルの「パターン」とは、アフガニスタンの主要民族である「パシュトゥーン人」の事。主役を務めるシャー・ルク・カーンは、自分のルーツの半分はパシュトゥーン人であると公言している。
また、パシュトゥーン人はアフガニスタンとパキスタンの2国に分かれて分布しているが、これはイギリスがなんの配慮もせずに国境線を引いたためである。カシミール地方が印パの争いの火種になっているのも、元を正せば一つの国の中に無理やり国境線を引いたから。パシュトゥーン人とカシミールの歴史的立ち位置は非常に似ているのである。
パシュトゥーン人の多くはパキスタンに住んでいるが、このタイトルにはジャンムー・カシミール州に対するインドの高圧的な態度への批判が込められているのかもしれない。
オジサン、ということすら憚られるくらいの細マッチョイケメン!!
インドのオダギリジョーと言って良い(あ、オダギリジョーが日本のジャー・ルク・カーンですかね)ゴリマッチョには嫌悪感を示しがちな日本の女子にも好まれそうではありませんか!