パリタクシーのレビュー・感想・評価
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やがて怒りは消え、敬意と信頼がほとばしる
このタクシー運転手は最初から苛立っている。それこそ世の中の全てに腹を立ててるんじゃないかと思えるほど目は釣り上がり、二言目には悪態が飛び出す始末。しかし一人の高齢のマダムとの出会いによって、彼の仏頂面が突き崩されるのだから出会いとは実に尊いものだ。こういう時、生まれも育ちも違う二人が徐々に心を引き寄せあう流れは容易に予想できるが、しかしマダムが打ち明ける「打ち明け話」には、かつて時代の風潮や性差の壁に屈することなく、母として、女性として日々を必死に戦い抜いた自負と誇りがほとばしり、聞く者を強く惹きつけてやまない。パリ市内の端から端まで。それはまるで記憶と場所を辿りゆくタイムマシンのよう。そして彼女の物語を受け留める相手としてこのタクシー運転手ほどふさわしい者はいない。いつしか怒りは消え失せ、心からの敬意の眼差しに変わる。シンプルな構造ながら、一人の男のかくも移りゆく姿にも胸打たれる一作だ。
人との繋がりが希薄になりつつある今だからこそ
車が交通違反スレスレで街を行き交うパリ。その最たるものは凱旋門の周辺で露わになる譲り合い精神のなさだ。そんなドライバーにとってはきつい街で長年タクシー運転手をしている主人公、シャルルが抱えるストレスがいかほどのものかは想像に難くない。さらに、薄給、無休、免停スレスレという三重苦にあえぐシャルルは、しかし、ある日「終活」に向かうという92歳のマダムを後部座席に乗せたことで、きついなりにももう一度人生と向き合ってみる気になる。偶然がもたらした出会いの物語は意外な方向へとハンドルを切っていくのだ。
最初は面倒だったマダムの"寄り道リクエスト"(←ここが肝心)に応える過程で明らかになる、女性にとっては生きづらい時代の痛々しい記憶が、シャルルの挫けた心を宥め、再生させていくプロセスが実に自然だ。上手い作劇と、演じる2人の俳優がともするとパターンに陥りがちな設定を味わい深いものにしている。主な舞台はタクシーの車内だが、車窓に映るのは人間が積み残してきた苦い歴史の断片たち。このスケール感が最大の魅力だ。
人との繋がりが希薄になりつつある今、是非、見て欲しいメイド・イン・フランスの名編である。
良い作品なのに邦題が安っぽいなぁ…
年老いたマダムとタクシードライバーとの出会いを描く秀作だった。
あの期間であの結末はどうなのかと思うところはあるものの、ダイナ・ワシントンの歌声とパリの街を美しく・魅力的に切り取った撮影は素晴らしかった。
自身、一度しか訪れた事はないが、パリは裏通りまでもが美しく素敵な場所だった。その当時を思い出し、感慨深く映像を見つめていた。
今のメディアには決して映らない移民で溢れ、変わり果ててしまった現在のパリをなんとか元に戻して欲しいものだ。
幾つに見える?
おおよそ最後は見当がつきながらの鑑賞だが、それでも彼女の過酷な運命はどこに希望を見出せばよいのかと思う程。自殺の才能もなかったと言っていたが、女性の生きていく指針となったという事だとしたら凄いよね。今でも女性の生きて行きにくさがあるが当時進んでいたと思われるフランスでさえそういう状況であったのだとしたら本当に酷い話。
数時間共にしただけで永遠の人にもなるし、ずっと一緒にいてもそれだけの人にもなる。人って色々よねー
素晴らしい人生讃歌
採点4.2
92歳のマダムとの、人生を彩るようなロードムービー.
短い、ほんの一晩の出来事ではあるのですが、人生を彩るような時間とはまさにこの事でしょう。
あと変な言い方ですが、何だか二人が恋に落ちているようにも見えました。
そうしてたどり着いた先、彼女をおろした後の寂しさがまた切ないんですね。
そして叶った再会と手紙。その暖かさには涙したものです。
自身で人生のライトを落とし、その後の若かりしき頃のダンスシーンが実に美しい。
何とも素晴らしい人生讃歌でした。
ユーモアは人に与えられた唯一の特技のようだ。
苦虫を噛み締めてもその虫は死なない。理不尽はこの世ではデカイ顔をしているし迎合すればするほどに自らを窮地に追い込む。しかしながら悪い事ばかりが続きはしない。冗談や減らず口で人生は変わるわけはない。そんな思い噛み締めて日々暮らしている人がいるならこんな映画でも見てみると良い。老齢な女性の放つシニカルでユーモアに溢れたひとこと。母親が死んだ夜にだってクスッと笑うことができるはず。哀しみにだってきっと終わりはあるのだよ。まだ生きる道はいくらでもある。そんな励ましを冗談混じりに話せる女性には想像を絶する苦難があるわけで、てもそれを口にすることなく生き抜いてきたわけで、もう終わると思った時にこのタクシードライバーに会えたことはほぼ奇跡に近いことだったのだろう。
この世での出会いはあいみたがい。
四六時中笑顔でいようなんてそんな無茶は言えないが苦しい時は面白く可笑しいジョークを考えることにしようと思った。
最後の晩餐
心が温まる映画。老いたマドレーヌの青い瞳が可愛らしくてこんな風に歳を重ねられたらいいな、青は無理としてあんな辛い人生も嫌として。シャルルの滅多に笑わない顔からの笑顔も素敵。まあまあある設定のような気もするがパリの街並みフランス語の響き辛い過去にも良かった思い出を探るマドレーヌの強さ、とても温かく濃厚であった。最後タクシー代払わないシーンは伏線とは思ったけどそこは払っておこうよ、とは思った。一日乗ったらかなりの料金では、なんて突如現実的な自分がいた。好きな映画
まあ、わかりはするけど、
よくとらえようとすると「深くていい映画だ」ともなるし、穏やかさ、トシをとることの意味、人生を達観することなどなど伝わるけど、個人的には途中まで中だるみした感があってそこまで感銘を受けるほどでもなかったかな、と。
顔を醜く見せるも見せないも表情ひとつ
タクシードライバーのシャルルは怒っている。
社会に、自身のおかれた環境に、そして自分に。
彼の表情は険しく貧そだ。
誰もが近づきたくない。
そんな彼の車に乗ったマドレーヌ婆さん92歳との会話。
会話の内容は衝撃的だが、彼女の柔らかな瞳がその悲劇性を包み込む。
会話が進むにつれて、シャルルの表情が和らぐ。
と、同時に無骨で魅力的な顔が現れる。
顔を醜く見せるも見せないも、表情ひとつなのだと改めて気づいた。
最後の小切手は蛇足だ。
手紙とタクシー代だけでよい。
⭐︎4.1 / 5.0
9月20日(金) @ AP映画(2023)
パリタクシー
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お互いが自分の人生を重ねて、相手を想い、心を寄せる
まさに一期一会🥺常に人に優しくありたいと思える優しい作品
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まるで人生相談タクシー
ダニーブーン扮する46歳免停寸前のタクシー乗務員シャルルは、リーヌルノー扮する92歳のマドレーヌケレールの自宅へ無愛想にお迎えに行った。マドレーヌは介護付老人ホームへ入居するところだったので生まれ育った所を見たいと言った。
タクシー乗務員にとってはよくしゃべる客が得意とは限らないが、まるで人生相談の様に語られては思わず引き込まれるかもしれないね。一生タクシーで生きてく乗務員の不安も語ってしまったね。やっぱり人生の先輩で威張っていない優しい人はいいね。こんなお客様ばかりなら全く問題はないだろうにな。
どんな思い出も、人生
人に使われず自由だが1日12時間、休日もほとんど取れず、経費も自分持ちで安いお金で働かざるを得ないタクシードライバー。人生に嫌気がさした八方塞がりのシャルルが乗せたのは、美しい青い瞳の上品で毅然とした92歳の老婦人だった。
ぶっきらぼうな彼に語りかける彼女が老人ホームへ移る旅は、これまでの過酷な人生を振り返る旅となる。生きにくかった日々を過ごしたいくつもの場所に立ち寄る。辛いけれど、かけがえのない大切な思い出。静かに語り続けるユーモアに満ちた人柄が、シャルルのやさぐれた気持ちをほぐしていく。彼女の短い旅は、シャルルが生き直すための旅でもあったのだ。
人を変えるのは、ほんの1日の出会いでいい。そんな切なくあたたかな気持ちになる映画。
人との出会いって大事
92歳の高齢女性を目的地まで送り届けるタクシードライバー。
その女性はあちこちに寄り道を希望する。
そして語られる女性の凄まじい過去。
ドライバーも最初はイライラしっぱなしだったのが
その高齢女性に心が動かされひと時の時間を共有する。
最初はドライバーの家族の顔が見えなかったけど
ラストになって内縁の妻そして娘の姿に出会えてよかった。
人との出会いって大事にしないといけないですね。
パリ、青き空の下の思い出
20数年前、私は数日間、パリを旅した。
貸切タクシーなんて優雅なものではなく、地下鉄と自分の足でどこまでも街を歩いた。スリに気をつけながら・・・。
歩道から見上げる街並みは、映画のセットのようにどこまでも風格があって、スカイラインが揃っていて、一直線に伸びていた。セーヌ川に架かる様々なフォルムの橋は絵になる美しさだった。
しかし、目を下に向けると、歩道にはゴミや犬の糞が・・・。凱旋門の上から眺めた放射状の街並みは、屋上にところ狭しと並べられた室外機とタンクと水蒸気だかなんだかわからない煙で一気に現実に引き戻された・・・。
美しき夢の世界と現実が同居している街なのだと思った。
朝、昼、夜。車窓から観るパリの街は、どこまでも美しい。夢の世界だ。
フランス映画なのに、バックに流れる曲は英語歌詞のアメリカ懐メロ。違和感を覚えたが、話が進むにつれてどんどん馴染んでいくから不思議。
豪邸から施設に移るというマダムとドライバーが最後どういう関係になり、どのような別れになるのか、なんとなく想像がついた。でも、そこに至る過程のマダムの物語は想像を超えたものだった。
マダムが語る壮絶な過去。厳しい現実の世界。愛と戦いの日々を乗り越えてきた彼女。しかしその佇まいはときに悲しみと憂いと静かな怒りを見せながらも、どこまでも穏やかで、ユーモアで、お茶目。ドライバーの苛立ちとささくれだった心がどんどん柔らかくなっていく。
寄り道だらけの1日は、死期を悟ったマダムが人生の節目を振り返る最後の旅だった。距離にして数10キロの旅だが、ドライバーが年間12万キロ走っても手に入れられないような1日になったに違いない。だから、愛する人と一緒に彼女に会いに行った・・・。多分、言いたかったのだろう。「ありがとう」と。
生きていく中でぶつかる厳しい現実。
それを美しい風景と音楽と、滋味ある演技で丸ごと包み込んで、暖かで静かな余韻を残す映画だった。
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