「旅は道連れ世は情け」パリタクシー ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
旅は道連れ世は情け
木曜日の昼間なんですが、めちゃくちゃ人が入ってました。公開規模が小さいのもありますが、ここまで惹きつけるものがあるんだろうなと思いワクワクしながら鑑賞。
小さいけれど、とても中身の詰まったロードムービーでした。タクシー運転手と92歳のおばあちゃん、たまたま交わった2人のそれぞれの思いを吐露して、互いを分かり合っていく様子がとても微笑ましい作品でした。
老人ホームへ向かうためにタクシーを呼んだマドレーヌおばあちゃん。92歳とは思えないくらい生き生きしていてかわいらしいです。演じたリーヌ・ルノーさんも御年94歳と、なんともたくましいおばあちゃんです。そこにやってきたタクシー運転手のシャルル、かなりイライラしていて、最初の出会いは互いに好感触では無さそうでした。
マドレーヌが遠回りを提案して、パリの街をぐるぐる回る中で、マドレーヌの辛い過去がだんだん明かされていきます。子供を産んだあと、再婚した旦那は今で言うDV夫、だけれど1950年代は離婚はほぼ無いもので、亭主関白が当たり前の様な時代だったため、中々逆らう事ができなかったそうです。
子供にまで暴力を振るったので、怒り心頭のマドレーヌは睡眠薬で旦那を眠らせたあと、バーナーっぽいもので男性器を焼くという、まぁ何とも痛い描写がありました。そうしたくなるほど胸糞な旦那だったので、ちょっとスッキリしました。その後の裁判はどうにも納得できないまま禁錮判決を受けてしまいましたが、現代ならこんなのは許されないよなとマドレーヌに同情するばかりです。
禁錮明けで帰ってきたあと、空白の時間に息子が苦労していた事、ベトナムに戦場カメラマンとして行くも、巻き込まれ死んでしまい悲しみに暮れてしまう、とやはり辛い事は続いていました。
そんなマドレーヌの話を聞きながら、会話をどんどん楽しむシャルルの表情はどんどん明るくなっていきますし、一緒にアイスを食べたり、ディナーを共にしたり、運転免許が取り締まられそうになった時に助けてもらったりと、関係性が深まっていく様子がとても微笑ましかったです。
幸せな短い旅の後、老人ホームに入りましたが、その後すぐに心臓病で亡くなってしまい、恩人と家族を合わせる事が出来ずに悔しそうなシャルルでしたが、その想いをしっかりと受け止めていたマドレーヌが、自分の遺産をシャルル一家に渡すと言う、見返りを求めていなかったシャルルに最大限の恩が返ってくるという気持ちのいい終わり方で物語は幕を閉じました。
90分と短くコンパクトにまとめられていて、役者陣の演技もしっかりと堪能できる。公開規模が小さいのが残念ですが、とても面白いロードムービーでした。こういう人生の終活が出来たら良いのになぁ。
鑑賞日 4/13
鑑賞時間 12:25〜14:05
座席 B-13