パスト ライブス 再会のレビュー・感想・評価
全234件中、161~180件目を表示
すれ違い、実らぬ恋もあるのです
予告から、大人の泣けるラブストーリーを期待して、公開初日に鑑賞してきました。公開初日の夕方時点での評価は3.7となかなかの高スコア。きっと誰もが自分の恋愛経験を重ねて、共感的に鑑賞したのだと思います。
ストーリーは、韓国で暮らし、互いに好意を抱いていた12歳の少女ナヨンと同級生の少年ヘソンは、家の都合でナヨンがカナダに移住したことで離れ離れとなり、12年後にネット上で再会するものの、それぞれの夢や人生を大切にするために再び連絡を取り合うことをやめるが、さらに12年後、思いを断ち切れないヘソンはナヨンのもとを訪れ、ついに再会を果たすというもの。
人生にタラレバはないですが、それでもそんなことを考えたくなることは誰にでもあります。まして、行動を起こさなかったことで実らなかった恋なら、なおさら後悔し続けてしまうのではないでしょうか。ヘソンがナヨンを思い続けて12年、やっと所在がわかり、オンラインで楽しく会話できたのに、それぞれの夢や生活があって会いに行けず、また距離をおくことになってしまったのはなんとも切ないです。今の自分の夢や生活を優先して相手が来ることを望んでいたのでしょうか、距離に物怖じして会いに行かなかったのでしょうか、会うことで夢をめざす気持ちが揺らぐことを恐れたのでしょうか。そんな自分たちを、互いに子どもだったと振り返る言葉が印象的です。
それでも思いを断ち切れず、やっと再会する二人ですが、今度は思いをきちんとと伝えるものの、それ以上には踏み込みません。互いに、相手の中の自分の存在を確かめられたことで、区切りをつけようとしたのでしょう。それで満足したわけではないと思いますが、これ以上踏み込んではいけないと考えたのではないでしょうか。ラストで、ヘソンを見送った後のナヨンの号泣に、一気に気持ちを持っていかれ、思わずもらい泣きしてしまいました。
そんな彼女を外で出迎え、優しく抱き寄せるアーサーがメチャクチャいいです。ナヨンを愛し、信じてはいるものの、ナヨンとヘソンとの間には決して自分は入れないことを自覚し、そこに嫉妬や不安を感じ、それを感情的にならずにナヨンに伝える姿が素敵です。本作中でもっとも共感できた人物です。彼の人柄に触れたことで、ヘソンは潔く身を引くことができたし、ナヨンも踏みとどまることができたのでしょう。そういう意味では、三人とも大人だったのだと思います。長い年月をかけ、さまざまな経験をして大人になったのでしょう。人生にタラレバがないように、ムダな経験もありません。ナヨンとヘソンの恋が実ることはありませんでしたが、その経験が二人を成長させてくれたことは間違いないと思います。
主演はグレタ・リーで、外国で大きな夢をめざす野心家でありながら、ヘソンへの思いを滲ませるソヨンを好演しています。共演のユ・テオ、脇を固めるジョン・マガロらも、大人の恋を感じさせる抑制した演技が素敵です。
24歳パートが残念
予告編から“大人のラブストーリー”の雰囲気を感じ、楽しみにしていた。
【物語】
ソウルに暮らす12歳の小学生ノラとヘソンは互いに惹(ひ)かれ合っていたが、映画監督の父親と画家の母親がカナダ移住を決心し、ノラ一家が引っ越したことで2人は突然離れ離れになる。
12年後ノラ一家はさらにアメリカ・ニューヨークへ移住していた。ある日ノラはふとヘソンを思い出し、彼をネットで検索したところ、父親の映画作品サイトへのヘソンの投稿を発見する。 ヘソンは兵役を経験し、大学生になっていたが、ずっとノラとの再会を夢見てネット上でノラを探していたのだった。
二人はオンライン上で再会を果たし、しばらくオンライン上での会話を繰り返すが、それ以上の関係を築くことなく再び連絡は途絶えてしまう。
さらに12年が経ち、その間にノラ(グレタ・リー)は別の男と結婚していた。 ヘソン(ユ・テオ)も別の女性との恋愛を経験したが、結婚へ進めずにいた。あるときヘソンはノラが結婚したと知りながらも自分の中に消えない気持ちを整理するため、ニューヨークへ向かう。
【感想】
正直言うと、ちょっと期待ハズレ。期待が大きかっただけに。
作品は12歳、24歳、36歳と3つのパートに分かれており、12歳と36歳のパートは悪くないと思うが、24歳のパートが納得行かなかった。
初恋を24歳までずっと引きずっていたヘソンと半分忘れていたノラ。その温度差は“あるある”で、構わないのだけど、24歳で再び2人の思いが燃え上がらないと、36歳のパートが成り立たないと思う。 ところが、24歳の2人の行動が消化不良。100年前なら「ソウルとニューヨークで文通していてもお金の無い二人は会いに行けませんでした」もあるだろう。が、21世紀の話だ。12年間探し続けた愛する人の居所が分って、会いに行かないヘソン。 毎日航空券予約サイトを眺めていたというノラも仕事が忙しいとしても、強い思いがあれば2泊3日の弾丸逢瀬でも行くでしょ? それをしないのはその程度の思いだったようにしか見えない。
そう思えてしまったので、36歳のパートを観ても気持ちがイマイチ盛り上がらなかった。
ヒロイン グレタ・リーは特別美女ではないけれど、魅力は感じられた。それだけに余計惜しい気がした。
観賞後に読んだところによると、脚本・監督のセリーン・ソンは韓国生まれで、両親が芸術家で12歳のときカナダに移住、ニューヨークで劇作家になるという経歴はノラそのもの。というところからすると、この作品は自伝的作品っぽい。
であれば、なおさら24歳パートは狂おしい思いを生々しく描いて欲しかった。
韓国映画のラブストーリー作品である“ビューティー・インサイド”に痛く感動し、それに迫る作品を期待してしまったのだけど、残念ながら遠く及ばなかった。
運命かタイミングか
久しぶりに胸がきゅうっと締め付けられるような映画だった。男女のうちどちらかが病に倒れたり亡くなったりしない展開なのに、こんなにも切なく胸が苦しくなる物語はあるだろうか。
인연 イニョン。漢字で書くと因縁となり、日本語漢字では悪い意味で用いられるが、韓国語では「縁・ゆかり」の意で用いられる。それともう一つ。Past Livesは前世。
前世からの縁。来世への縁。神秘的な意味を信じれば信じるほど、運命の相手だって確信は強くなるのに、それが叶わないことがもう本当に…神様が与えたこういう運命なのだろうか、人生は何事もタイミングなのだろうか…と思わされる。
ヘソンとアーサー。ヘソンが英語ペラペラじゃなくてよかった、アーサーが韓国語達者じゃなくてよかった、とつくづく思う。二人はかろうじて英語でやり取りしていたけど、これが完璧に意思疎通できる会話だったらきっとヘソンとアーサーはお互いに傷つけていたかもしれないよね。
ヘソンとナヨンがなぜ結ばれない運命になってしまったのかと、第三者目線での後悔?というか何というか…この感情をどう説明したらいいかわからない。とにかくもう胸が痛い…。
エンドロールでナヨンの名は併記されていなかった。彼女の人生のアイデンティティはもうとっくにそして完全にノラだったのだ。それを見てまた悲しくなる私…。だってヘソンにとってはノラじゃなくてナヨンなんだからさ。
袖摺り合うも多生の”イニョン”
韓国で生まれ育った少女テヨン(後のノラ)と少年ヘソンの、24年に渡る”イニョン”を描いた作品でした。”イニョン”とは、朝鮮語で”縁”を意味する言葉だそうで、日本語の”縁”同様、仏教概念を源泉とする同義の言葉として使われていました。他国で上映するならいざ知らず、日本語でもお馴染みの”縁”という言葉があるのに、敢えて作中の字幕では”イニョン”を使っていたのはちょっと不思議ではありました。ただ、仏教的な意味合いを離れて、余りに広義に使われる”縁”という日本語を避けることで、2人の前世からの何重にも折り重なった関係性を、翻訳上でも表現したかったのかなと解釈したところです。
ついでに言うと、英語の原題である”Past Lives”の意味は”前世”であるのに対して、邦題はそれに”再会”を付け加えており、これは現世での再会だけでなく、前世で”イニョン”があった者が現世で再会すること、そして現世で”イニョン”があった者が来世で再会することをも意味しており、こちらも中々に優れた邦題だったように思います。
小学校のクラスメイトにして、共に成績優秀なテヨンとヘソンの2人は、互いに恋心を抱いていましたが、12歳の時にテヨン一家はカナダへ移住。テヨンはノラと改名し、さらに単身アメリカへ移住、作家として活躍する。一方ヘソンは兵役を経て中国に留学するが、基本韓国に留まる。そんな2人が12年後にネット上で再会を果たし、一見恋仲になったかと思いきや、遠距離恋愛にありがちなすれ違いの末に関係は断たれる。その後程なくしてノラは同じ作家のアーサーと結ばれる。
しかしさらに12年後、36歳になった2人は、ノラの住むニューヨークで再会。夫を持つ身のノラは、ヘソンとの再会の喜びを夫に隠しもせず、夫は複雑な心境に追い込まれるというお話でした。
個人的に非常に興味深かったのは、ノラとアーサーの会話。朝鮮語が分からないアーサーが、ノラに対して「君の寝言は全て朝鮮語。自分の知らない世界があるようで怖い」と告白。そんな言葉はヘソンを交えての会食で具現化し、ノラとヘソンは朝鮮語で語り合う。勿論アーサーは置いてけぼり。カメラはノラとヘソンのみを映し、アーサーは敢えて映さないところにゾクッとさせられました。仮に自分がアーサーの立場なら、気が変になるのは確実だと思ったところでした。
結局ノラはアーサーの元に留まり、ヘソンは帰国の途に就きますが、両者の”イニョン”は来世にも引き継がれるのは確実と思わされて物語は終了しました。いや~、アーサー可哀想😿
最後に本作と直接関係のない話題を一つ。私の妻は外国人なので、母国語と日本語を話せますが、ノラと違って寝言は多言語。きっと見ている夢のシチュエーションによって、日本語だったり母国語だったりを使い分けているようです。ノラの寝言に関しては、韓国で生まれ12歳でカナダに渡り、現在はアメリカに在住する本作の監督であるセリーヌ・ソンの体験を物語化しているのではと推測します。ノラにしてもセリーヌ・ソン監督にしても、在カナダ及び在米24年、我が妻も日本に来て24年なので、ちょうど同じ期間母国語と異なる言語を話す外国で暮らしている訳ですが、寝言に関しては人それぞれなんだなと、変なところに関心した作品でした。
そんな訳で、アーサーに深く同情するとともに、移住した人の寝言の話題を提供してくれた本作の評価は、★4とします。
大人による大人のための映画
これぞ本当の大人の恋愛
韓国と米国の合作ですが、やっぱり米国の映画の方が近いかと。というか、監督も韓国からカナダへの移民なのですね。監督の実体験が混ざってるのかも知れません。
12歳、24歳、36歳と、それぞれの年齢の恋愛もそうですが、目標を聞かれたり、過去を振り返ったり、なかなか切ない部分もあります。
特に人と人のやり取りは、セリフ以上のものが感じられて切なかった。
あんなに簡単に「好き」と言えたり、手を繋げる年齢も懐かしいですね。24年振りにあって「ハグ」されて戸惑うとか、なかなか良いです。
「縁」のあるふたり、くっついて欲しいような、欲しくないような。
ラストシーンも良かった。
「大人」にはとても良いストーリーだと思います。
ただ、ニューヨークへの憧れが強いというか、「The」ニューヨークの景色が気ななります。ニューヨーク好きにはたまらないですかね。
まったく同じストーリーで日本人版ができるでしょうか?見てみたいですね。
さっちゃん
とんでもない殺人映画じゃ無いか!
初恋の忘れられないあの切ない思いを静かに殺し、大人として成仏させあの思いを海に沈める話だ。
おじさんもおばさんも殺されたんじゃ無い?
これで死んで無かったら嘘だ。
皆んな不倫とか浮気とかした事有る?
俺は無いよ、清廉潔白ですよ、だってパートナー居ないもん。
でもね、心引きずり引き出されグッサリ刺されましたよ。
俺に現在パートナー居たらもう劇場後に死にたくなるんだろうな。
今日もアホみたいなTシャツに一人で劇場向かった俺だけど、今も忘れられないあの子や、寝る前に思い出す初恋の娘だって居ますよ。
うわー。会いたいなーー。
俺みたいな人生モテた事も無いダメ男なんかに好きって言ってくれたあの娘、今頃子供も居て幸せな人生歩んでるんだろうな。
ただ会いたいな。
あの子もこの映画見てたら狂い死にするかもね。
あの頃みたいに門限には返すよ。
ただただステキで、凶悪な映画見たんだ。ってキミに話して笑い合いたいよ。
あくまで個人の感想です
韓流ドラマによくあるフォーマットをコメディ色を排除してセンチメンタルに作った、退屈な作品でした。
いい年して小学生の頃の思い出に囚われるかな。好きな子がいたとしても何して遊んでたかも覚えていないし、それと輪廻転生とくっつけられて話されても普通ならドン引かれると思いました。恋愛脳が高校生で止まった男女の話で、つまらなかったです。韓流にありがちなピューリッツァ賞だのトニー賞取る!とか言ってたり、異常に物分かりのいいユダヤ人がいたり、、、。面白い韓流ドラマはこれに記憶喪失やらすれ違いやら双子の兄弟やらが出てきて盛り上がるのですが。
この映画って、恋愛に酔ってる2人の脳内を映像化したものと勝手に思いこんでしまった。つまらん。
結果
そうなるとは思いましたが、やっぱり少し残念でしたね。2人ともそこまで思い合えてたのは凄い事ですよね。やはり、何かの縁があったのでしょうか。長い年月をコンパクトにまとめてましたが、とても見やすかったです。
ずっともどかしい。
小学生の頃、突然の別れで離れ離れになった男女幼馴染みのナヨン(女)とヘソン(男)の話。
韓国ソウルに暮らしてた頃とは別名を名乗るノラ(ナヨン)と、初恋の相手がナヨンのヘソン、ある日、母との電話で幼馴染みの彼を思いだし、その子の名を母から聞き検索、FBでヒットし、ヘソンのSNSを覗くと自分の事(ノラ)を探してると知る事に…。
タイトルにも書いたけど、とにかくもどかしい。でも、こういう恋愛もありますよね。
てっ、言うか自分の経験ともリンクする部分があって、その頃を思い出しました。
お互い好きな関係なのにタイミング悪くその時は相手がいたりで一緒になれない、ずっといるのに友達以上の関係になれない(これリンクした部分)、24年ぶりの再会でお互い好きと言いたいけど、言えない言わないで、ノラの旦那の送り出してあげる優しさと大人さ、ラストのノラを抱きしめてあげるアーサーにも涙。
アーサーという旦那がいなくてハッピーエンドも観たかったけれど、この本作のもどかしさやノラとヘソンの距離感がたまらなかった、電車内だかバスだか忘れたけど「手すりで触れそうで触れない手」う~んもどかしい!(笑)
わぁーお、ワァーオ、わぁーオ!
指揮官と擁護者
人って何故か限りなく反対の人に惹かれる。
友達とかは違うのに。
離れてしまうと今度は共通部分が邪魔をして。
ラストのやりとりが彼女にとって彼が運命の人だと痛感するであろう「まさに」の瞬間で。
リアル。
恋するって不思議
今年一番泣いた
ずるいよね、こういう切ない設定。
カナダへの移住は両親の意思決定で、歴史に飲み込まれたとかではなく、奇跡みたいなこともない。どこにでも起こっていそうな、悪く言うと捻りのない展開。ただ、今でないとこういう流れにはならない。
2人が別れた2000年前後は父親の机にワープロがあったように、インターネットが今ほど普及する前だった。その12年後はSkypeができるようになっている。最初に別れた時に「LINEするからねー」みたいになっているとこうはならず、こういう過渡期でないと、このストーリーは生まれない。
学校で成績1位2位を争っていた2人。特に女の子の方は自分の意思で移住したわけではないがカナダ→NYで作家として成功することを夢見ている。結婚相手はNY出身の同業者。彼の方は一般的な韓国人男性と同様に兵役へ行き、中国に語学留学するものの普通のサラリーマンになっている。12年後のネットでの再会後やり取りを止めた後も、2人とも割と早く次の展開があったりして。しかし12年前に画面越しに喋ったとは言え実際に会うのは12歳の時から24年ぶり。
それに直面した時のアメリカ人の夫の心境も複雑で、相手は自分の母国語を普通に喋るが自分は相手の母国語が全くわからない。妻の寝言は韓国語にも関わらず。これって国際結婚あるあるでは?知らんけど。
バーのシーンがクライマックスで、また夫のアーサーの複雑な表情がアップになるのも良い。この3人の誰もがサイコじゃなくて良かった。
主演よりヘソン役の俳優がすごく良かった。また人の良さそうなジョン・マガロのキャスティングも絶妙。
エキストラの赤いカチューシャのおばさんが2度出てきた⁈
切ねぇ〜
2024年劇場鑑賞80本目。
お互い恋心を持っていたが遠く離れ離れになった幼馴染同士が12年後男の執念でライブチャットができるまでになったが、好きになりすぎて自分の夢がおろそかになるのを怖がった女性に一回ライブチャットをやめようと提案され、そのまた12年後・・・という話。
多分こういうパターンで恋がつぶれていく二人は現実でよくありそうで、今泉力哉監督の作品でありそうだな、と思って観ていました。まぁ韓国語がわからないもう一人の登場人物の横でずっと韓国語で話しているシーンはその人の気持ちを考えるとやりきれませんでしたし、最後のシーンでもあんなことされたら傷つくだろうなぁと思って切なかったです。女の方は知らん。男二人がかわいそうな話でした。
今週のおすすめ枠。会話は少ないがぜひぜひ。
今年134本目(合計1,226本目/今月(2024年4月度)8本目)。
(前の作品 「リトル・エッラ」→この作品「パスト ライブス 再会」→次の作品「人生って、素晴らしい Viva La Vida」)
こちらの作品は、アメリカ・韓国の合作という特殊な映画の成り立ちです。
よって、アメリカや韓国映画にありがちな展開にならず、アメリカを舞台に韓国人男性と女性との出会いを、年も利用した「ずらし描写」も入れることで会話少な目(ただし、情報量はたっぷりあり、混乱させることはない)で読み取るという、人によって理解も感想もかなり変わってくるかな、といったところです。
どうしても合作という性質上、アメリカにも韓国にもどちらにも文化依存するような内容を入れづらかったと思われる点から、展開がどうしても一つか二つかに読めてしまう(韓国文化、アメリカ文化がどうこうといた話はほぼ出ない)点はどうしても言えます。
ただ、会話少な目のそんな中でも、20年近くたっても成り立つ愛はあるのか?また過去のことは?といったことに主軸テーマを置いた映画なので、この点については描写が丁寧です。会話が少ないのは、「それぞれで考えてね」という趣旨にしたかったのだろうと思います。
上記の事情があるのでやや見方が複雑になるのですが(あまり話してくれないなど)、ただそうであっても、また舞台が日本でもアメリカでも、あるいは、登場人物が日本人であろうとアメリカ人であろうと、「時を超えて人を好きになること」に力点が当たっていることは明らかですので、ここでの解釈割れは起きないかな、と思います。
会話が少なく、行間を読む知識(テクニック)も必要になりますが、観た後の充実度はとても高いという映画です。まよったら「6回みたら1回ご招待」系でも推せます。
採点については、以下の点が気になったものの、おそらく説明があるほうが良いかなといったところです。こちらで書いておきます。
-------------------------------------------------------------
(減点0.2/アメリカのパソコンを使うときに、別に紙にハングルの母音子音を書きだすシーン)
「舞台」はアメリカなので、アメリカのパソコンが使われていますが、当然その場合、通常の入力は英数字入力だけです。しかしWindows11ほか一般的なOSは、他言語対応としてキーボードで他言語もタイプできるような設定もあります(オンラインで、スカイプ等で韓国語やスペイン語、中国語などを学習する場合、その設定が求められる場合もあります)。
ただ、その設定をやっても使用しているキーボードに、ハングルの母音子音が浮かび上がるようになるわけではないので(高性能なUSBキーボードだと可能なのかな…)、「どの位置を押せばどの母音子音が出るか」を暗記しなければならず、そのために書き出しているシーンがありますが、あれはこのことをです。
-------------------------------------------------------------
女性らしい目線で描いたさりげなさ
幻想が妄想になっていくのを止めるのは現実的な彼女の言葉
2024.4.6 字幕 TOHOシネマズ二条
2022年のアメリカ&韓国合作の映画(106分、G)
12歳の時に離れ離れになった幼馴染の24年後の再会を描いたヒューマンドラマ
監督&脚本はセリーヌ・ソン
原題の『Past Lives』は「前世」という意味
物語の舞台は韓国のソウル、12歳のナヨン(ムン・スンア)とヘソン(イム・スンミン)が描かれて始まる
クラスで成績優秀の二人は、いつもナヨンが1位で、ヘソンが2位だった
だが、この時はヘソンが初めて勝ち、それが原因で彼女は泣いてしまう
ヘソンは「僕はずっと2位だったけど泣かなかった」と、ナヨンを慰めた
二人はお互いに好き合っていて、その関係がずっと続くと思っていたが、ある日、ナヨンは家庭の事情で、カナダのトロントに移住してしまうことになった
お互いの母親は二人に思い出を作らせてあげようと、果山国立公園へと出向く
別れを惜しむナヨンに、母(ユン・ジヘ)は「失うものがあれば得るものもある。あなたも彼に何かを遺してあげなさい」と言った
物語は、その12年後、24歳になったナヨン(グレタ・リー)が、父(チェ・ウェニョン)のFacebookにて、ヘソン(ユ・テオ)メッセージを見つけるところから動き出す
カナダに移住することになったナヨンはノラという英語名で活動していて、ヘソンは彼女を見つけることができなかった
ナヨンはヘソンに友達リクエストを送り、それによって二人は、12年ぶりに「パソコンの画面上」にて再会することができたのである
映画では「イニョン(인연)」についての奥深さと輪廻転生、前世についての関わりが描かれていた
さらに12年後にあたる、36歳の二人の再会にて、彼は「ナヨンは今世では去る人なんだ」と思うようになっていて、それはナヨンの「あなたが愛した12歳の私はもういない」という言葉によるものだった
心と言葉が裏腹になっている二人だが、ヘソンはナヨンと今の夫アーサー(ジョン・マカロ)との関係に踏み込みたくないと考えていて、さらに彼女の言葉が自分の感情を整理してくれたことに感謝している
バーで3人が話すシーンが冒頭にあって、そこで男(アイザック・パウエル)と女(Chase Sui Wonders)の会話が流れてくる
3人の関係はどうだろうと話す、彼らの想像をはるかに超えた関係が、そこにはあったと言えるのだろう
映画は、俯瞰して見ると「自分のことを24年も想ってくれている男がいる」という前提で再会することになっていて、その想いの源泉が打ち砕かれていく様子が描かれていく
寄りを手繰り寄せる世界線がありそうだが、これまでヘソンを支配していたものからの解放になっていて、逆にナヨンの方が過去に縛られる人生を送ることになる
24歳の時に話さないことを決めたのもナヨンで、その後アーサーを誘惑したのも彼女だった
その間にヘソンも上海の交換留学生(ファン・スンオン)と出会い恋仲になるものの、彼は彼女と結婚するイメージが持てていない
その理由はナヨンがいたからで、それらの想いが「直接会うことによって」ある種の幻想との別離へと繋がる
二人の関係を切ったのもナヨンの言葉「12歳の私はもういない」であり、この言葉によってヘソンは「今世では去っていく人なんだ」と結論づけるのである
いずれにせよ、ビターエンドの作品で、24年間のヘソンの執着が、そのままナヨンに移行する様子を描いていく
これまではナヨンを守るのは自分だという想いがあったものの、これからはアーサーがその役割を担うことになる
アーサーの心情は心苦しいものがあるが、それが妻の選択でもあるので、それを受け止める以外に方法はない
二人が結婚9年目に入っても子どもがいない原因の一つがヘソンとの過去である可能性もあり、今の複雑な関係は子どもが生まれることで解消される可能性はある
問題は、それまでにナヨンの心が保つのかというところだが、彼女なら立ち直るのではないかと思えてくる
これが誰の過去のお話かはわからないが、それを乗り越えた今があるから作品として仕上がっているのではないだろうか
全234件中、161~180件目を表示