アンダーカレントのレビュー・感想・評価
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「人をわかる」という幻想
銭湯を営むかなえは2か月ほど前に夫に失踪され、臨時の手伝いとして堀という男性を雇い入れた。友人のつてで探偵に夫の捜索を依頼したかなえだが、彼女自身心の奥深くに、暗い記憶を秘めていた。
月毎に章立てて、季節で言うと夏から晩秋までの間のかなえと周辺の人々の様子を淡々としたタッチで描く。かなえの心の闇、堀の正体、失踪した夫の真意は中盤を過ぎるまで伏せられており、ちょっとしたミステリーのような風味もある。
特に堀は、真実が明かされる前はよく見るとさなえの兄と彼女を殺した犯人、どちらとも取れるように描かれていて、感情の見えない彼の挙動にはかすかな緊張感が漂っていた。
今回原作漫画は未読だったが、あえて未読のまま鑑賞し、その後原作を読んでみた。(原作を先に読むことも多いが、相違点の確認作業のようになって映画を楽しめないことが多い気がして。以下、原作のネタバレも含みます)
身近な誰かについて、全てを理解している、と臆面もなく自負する人はむしろ少ないだろう。だが私たちは普段、この人は概ねこういう人だ、という見込みのラベルを周囲の人間に対し貼って生きている。
そして日常を重ねる中で、そのラベルが見込みに過ぎないことを忘れがちだ。しかし実は、それは自分と相手の関係性の中という偏った視点から見えた相手のごく一部かもしれないし、あるいは相手がこちらに対し故意に見せている偽りを信じ込んでいるだけなのかもしれない。
この作品の主要な登場人物は3人とも、秘密を抱えていることをほのめかす描かれ方をされている。その秘密を想像しながら、そういえば自分は普段周囲の人たちに対して、こんなふうに彼らが見せない内面への想像力を働かせることが少ないなと気づく。
また、かなえの夫である悟の生き方と、探偵が拾い集めた彼の周囲からの評判を見ていると、人間の表層の姿、側から見た印象がいかにあやふやなものか考えさせられる。彼のように全くの嘘で固める人間はさすがに少ないだろうが、誰しも自分以外の人間に対しては多少なりとも自分を繕って見せる場面があるはずだ。むしろそれが自然な姿だと思う。
この作品は、人間の表面の姿と内面が違うことを否定的には描かない。人間の心は複雑で、時に自分自身のことさえ捉えきれないことがある。ましてや自分以外の人間を理解することは、本来途方もなく困難なことだ。
身近な存在であっても、相手のすべてを知ることは難しい。そう自覚する謙虚さと、大切な相手であればこそ、その分からない部分の存在にさりげなく目を凝らし、受け止める気持ちを持つこと。人と向き合うというのは、そういうことなのだと思わされた。
終盤、食卓で他愛のない会話から堀が号泣し、自分はさなえの兄であると打ち明けた直後、二人が距離を置いて散歩する光景に切り替わった。
幼いかなえが口をつぐんだのは犯人の恫喝によるものであって、彼女に罪はないから、かなえが堀に謝罪する必要はないと個人的には思う。彼女が、身の上を打ち明けた堀に彼の妹との最後の記憶を語ったかは分からないが、ラストカットで散歩する2人の間にはおだやかな空気が流れていた。彼らは互いに信頼しあえる関係になったと信じたい。
最後に2人はこうなりました、という明確な説明のないオチで、これはこれで決して嫌いではないが、原作ではどう描かれているか(あわよくば何らかの解釈の助けになる描写がないか)気になって、観賞後に原作を読んだ。
なんと原作では、堀はバスに乗りませんでした、というところで終わっていて、堀の告白も散歩のラストもない。映画以上の(見る側への)委ね具合に驚いた。
漫画ならこういう終わり方は個人的にわりと好きだ。でも確かに、この通りの終わり方で映像化されたら、映画としてのカタルシスには欠けるだろう。実際、映画でずっと無表情だった堀が泣いたところで、私はちょっともらい泣きしてしまった。なんとも上手いアレンジをしたものだ。原作を先に読んだ人はまた違う感想になるのかもしれないが。
それ以外は、尺の都合で省かれたエピソードはあるものの、台詞の細かい部分までかなり原作に忠実だ。原作の方がコメディタッチのやり取りが多いため、相対的に映画の方が重ためな雰囲気になっているが、映像化されて重要な部分が削られてしまっている、という印象はなかった。
それにしても、リリー・フランキーはああいう役が本当に似合う。しかも原作の探偵と雰囲気がもうそっくり。順番は逆だが当て書きしたかのようなフィット感。ぱっと見いい加減そうで、ドライな雰囲気を漂わせながら、彼独特のあの手この手でかなえを慰め、最後までかなえに付き合う優しさに癒された。
永山瑛太は、「怪物」での演技といい、何を考えているかわかりづらい、善人とも悪人ともつかない空気感を出すのが上手い。井浦新や江口のり子、康すおんも、適材適所のキャスティングだった。
髭面が1010に入るな!汚い。
髭面の演出家は地雷監督だった。しかも、“新”たなる問題が重なり、見る前から予想がついた。予想通りの映画だった。
ただのコミック作品を芸術作品っぽく作ったお話。
テーマがはっきりしない。
なぜ?1010なんだろう?
1010は他人と同じお湯につかるので、余り入りたいと思えない。のだが、大連に行った時、余りにも汗をかいたので、
1010に入った。ところがなんとまぁ!社会主義国なのに!と思う程の『ピンク色の出来事』があった。勿論、そんな事はしない。
今後はCAST、演出家をきちんと見て見る事にする。日本人にはフランス映画の真似すんな!って言いたい。見ていて何に怒ったり、何を笑ったり、何に泣いたりして良いか分からない映画は御免被りたい。
真っ黒過ぎるワンちゃんだよー!
せめて『女将さーん時間ですよ』見たいな話ならね。
やっぱ、裸でしょ。
あと20分。火曜サスペンス〇場の崖。しかも、人称が残り20分で変わるドタバタ。俳句で言えば、季語が二つある事と同じ。
黙って消えるな
過去に自分でもわからない怖い過去を持つ
かなえ。
大学時代の同級生だった夫悟は一年前から失踪。
父のあとを継ぎしばらく休業していたが、
やっと再開し始めた銭湯を切り盛りするかなえの元に堀という謎の男が雇ってくれ、と来る。
結局、自分でも認める虚言癖の悟に上手く利用されつつあったのが、良心の呵責でかなえを騙しきれずに出たのだろう。 唯一の誠意だ。
かなえが将来の生活設計を語っても心ここに在らずな悟。もうかなえを騙し続けるには無理があると感じたのだろう。
堀は、かなえの子供の頃の友達さなえの兄だった。かなえは、そのさなえにまつわることで
幼い頃から自責の念に苛まれ怖い夢を見るのだ。
自分であれば良かった、と。
堀は事件後、両親と共にこの地を去るが、両親共にショックから抜け出せず、悲惨な生活だったようだ。その中で育って来た堀の心の変容は‥。
故意に避けて来た土地だったがかなえを見かけたことをきっかけに、近づくことになる。
かなえに妹の成長した姿を重ねつつ、楽しかった子供の頃の生活に触れるように住み着くのは、それまでの人生が耐えがたかったからだろう、もうホッとしたい気持ちがあったのではないか。
悟には見切りをつけて新しい生活をスタートさせるかなえと堀の姿に希望を感じる。
蛇足❓
•じいさんの髭が湯に浸かっている。髭がきれいか凄く気になった。
•作業終わったからと従業員が一番風呂に入る?
•バスからかなえとわかるかなぁ?
•嘘つき悟は本当のことを言えない。
•悟がかなえにひっぱたかせてと言われて、うん、と言ったけど、ごっついオッサンやったら、うん、て言うたかなぁ?
終わり方が絶妙
原作は未読で鑑賞。
人はどう見せたいか意識して動く部分と見せないように隠す部分、相手の望む姿になったり、自分でも気が付かないままに持っている部分が,混ざり合っている。同じ人を見てもみる人によってどう見えるか違うこともある。だから、人をわかるというのは難しいのだろう。この映画はそれをいろんな方法で表現していて興味深い。
最後に井浦が早苗の妹だと告白した後画面が切り替わり、真木が1人で犬の散歩の場面になる。ちょっと残念な気持ちになったところで井浦が後を歩いて行く。そこにちょっと暖かさがあって,今泉監督らしいなぁと思った。
悟。お前のウソはどう考えてもダメだろ。
最近派手な映画やドラマばかり観て少しお疲れというか、飽きたからあまり体温の上がらない映画をチョイス。ミステリー要素もあり、登場人物たちへの感情移入もあり、お兄さんの告白シーンは普通に泣きました。飽きずに淡々とみられました。井浦新さんが俺的にはツボでした。良い人過ぎ。あと、あの誘拐された女の子が無事で本当に良かった。子供連れ去りの件は本当にしんどかった。無事だと分かり心底ホッとした。それだけ映画に乗せられているという事で役者さん達の凄みを体感した。ってかほんと連れ去りとかする奴ら許せん。取っ捕まえて拷問して殺してやりたい。土に埋めてアソコに木を植えてやりたい。あれ?何の映画観たんだっけか?笑 脳がマッドマックスになってる。フュリオサ!
演者がみんないい
他の作品で見たことないような演者さんたち
本当に良かった!!
オーディションかな。
犬が芸達者、めちゃめちゃかわいかった。
ドローンカメラからのアングルでポーズ変えたのとかすごすぎる。
小さいカエルも良かった。
カエルをかわいいと思ったの初めてかも。
いつも側にいる人が急にいなくなるのは、
悲しいよね、本当に。とても
最後、堀さんもいなくなろうとして
たばこ屋のおじさんがきっかけでやめて戻ったラストは
光があってとてもいいなと思った
相手や自分自身の“アンダーカレント”を知った時…
人が分かるって、どういう事ですか…?
劇中の印象的な台詞。
家族や友人、恋人など親しく一緒にいたり、長く共に暮らしているが…、本当に相手の事を分かっているのか…?
たまに俺は相手の事をよく知っている。人を見る目がある。…なんて抜かす輩がいるが、人の心読めるのかよ? どんだけ傲慢なんだよ?
人は友情や絆や愛で結ばれるが、結局は赤の他人。血が繋がっている家族でさえも。
長く付き合っているのに相手の事を真に知らない。初めて知る事も。
その為人は、何かしらの嘘を付く。が、それは決して相手を欺こうとしたり、貶めようとしたりではない。相手の為に。
まさに本作はそれを象徴。
あなたは人を分かっていますか…?
この問いは同時にこうも聞こえた。
あなたは自分を分かっていますか…?
かなえ。
父亡き後休業していた家業の銭湯を継ぎ、再開。夫の悟と共同経営で、これからや子供の事も考えていたが…、突然夫が失踪。
心当たりナシ。…いや、夫が何か話したげだったのを私が気付けなかった…?
そんなかなえが時折見る夢。水の中に没していく。
ある朧気な記憶も思い出す。何者かに首を絞められ…。
子供時代、かなえには仲良しのさなえがいた。背格好も似てて、唯一違うのは髪の長さくらい。
ある日さなえは不審者に首を絞められ殺され、沼に沈められた。
ショックと自責から記憶が曖昧。
首を絞められるイメージは私が殺されば良かった…? それを望んでいる…?
親友を亡くし、夫がいなくなり、私は何を望んでいる…?
堀。
銭湯組合の紹介でやって来た男。住み込みで働く事に。
口数少ないが、真面目。謎めいているが、男手失ったかなえにとって、少しずつ心開ける存在。
黙っていなくならないで下さい、とまで。
そんなかなえに対し堀は、何処か微妙な距離感。
組合の紹介ではなく、本当は自分から働きを申し出たという。
何故、この銭湯を…?
この町やかなえとは全くの無関係ではなかった。
かつてこの町に住んでいた。妹がいた。妹は殺された。
堀は、さなえの兄だった。
以来この町を避けていたが、ある時たまたま通り掛かり、かなえを見かけ…。
妹と双子のようだったかなえに亡き妹の面影を見たのか…?
自分は何を求めていたのか…?
悟。
かなえの失踪した夫。
かなえが友人の紹介で雇った探偵の調査で、驚きの事実を知る。
出身地は別。幼い頃に交通事故死と聞かされていた両親は最近まで存命だった。
嘘を付いていた…?
探偵が居所を見つける。会いに行く。
再会。
夫の口から話される失踪の理由、自分の人生。
ずっと嘘を付いて生きてきた。その嘘を隠す為に、また嘘を。
それがバレそうになると姿を消し、また別の地で嘘を。
そんな時出会ったかなえ。彼女にだけは本当の自分を明かそうとしたが…、結局出来なかった。
かなえとの将来に口をつぐんだのもそれ。
嘘で塗り固め、嘘から逃げ、また嘘で塗り固め、また嘘から逃げ…。
自分は何者…?
自分自身に彷徨うかのような3人。
その孤独な心、本心を知られたくないが為に、自分の心を偽る。
脆く、今にも壊れてしまいそうな心を守る為に。
相手に合わせ、相手を思いやる為に。
それは優しさなのか、哀しみなのか…?
真木よう子、井浦新、永山瑛太が複雑な役所を、繊細かつ巧みに熱演。
胡散臭そうながらも有能な探偵でリリー・フランキーが好助演。カラオケでの選曲が秀逸!
美しい映像や音楽。
海外でも高い評価の原作コミック。
スローテンポながらもじっくりと、今泉力哉が手腕を存分に。
タイトルの“アンダーカレント”とは、発言の根底にある抑えられた感情。つまり、心の奥底。
また潜流とも呼ばれ、表層部の海流と独立して流れる海面下の海流をも指す。
全く相反する意味や流れだが、不思議と何故かそれらが相乗するような心と思いやりをも感じた。
心の奥底や海面下なんて見えやしないが、相手の為に付いた嘘、本心を知った時…
人が分かるって、どういう事ですか…?
あなたは自分自身を分かっていますか…?
水面を漂い、彷徨うかのように。
不安定に流れ揺らめきながらも、“アンダーカレント”に身を委ねる自分がいた。
どじょうの話
悟は今を
堀は過去を
かなえは傷ついた記憶を
封印する。
銭湯の客がする噂話を
遠くの雑音にすることで
普段通りの時間が流れるように
彼らはそうやって調節して生きる。
そして私やそれ以外の誰かも。
〝ずっと一緒にいた〟悟の、
そのままにしてある部屋だけが
わかっていたようでわかっていなかった夫を
責めるつもりもないかなえの気持ちに
リンクするように佇む。
それは優しさなんかではなく
弱さでもない。
抗えないことがあるのをわかっているから。
探偵を頼んでみたけれど
本当はその〝こたえ〟も
とうに心の奥にある。
ただそうするしかないのを
誰よりも知っている彼女だから。
程なく夫が見つかった知らせを受けた時
安堵と不安をうわまわり
堀を大切に感じる気持ちが
水面に向かう空気の玉のように
彼女の心に浮かびあがったのを
見たように感じた。
知っていた〝こたえ〟のありかを
ひとかきされて
水底が動きをみせた瞬間。
悟に再会し対峙した彼女は
新たな流れのなかで凛としていた。
だからあのマフラーには
これで最後と決めたひとかけらの愛情と
精一杯の赦しのサインを込めることが
できたのだと思う。
under currentー
蒼白い水の中で揺れてさまよう心。
そこに
かたちを変えながらようやく差して込んできた光は
すこし離れて歩くふたりに届くだろうか。
これからの
二人の時間に思いを馳せる静かな余白を
膝のうえの両手でそっと包みたくなった。
修正済み
夫・・・わたしの知らない他人
原作もいいのでしょうが、
監督が好きなのことも重なり、上手いなぁ、流石だなぁと
思いました。
父親から譲り受けた銭湯「月乃湯」を夫の悟(永山瑛太)と
経営していたかなえ(真木よう子)。
悟が突然、蒸発した。
かなえにはまったく心当たりがない。
父親が一年前に亡くなり閉めていた「月乃湯」を再開したばかり。
そこへ謎の男・堀(井浦新)が現れる。
①夫の失踪の原因
②謎の男・堀は何者か?
次々と興味を惹かれてわくわくして観ました。
かなえの大学の友達・菅野ようこ(江口のりこ)と再会した所から、
物語りが動き出します。
格安料金で探偵の山崎(リリー・フランキー)を紹介されます。
有能な山崎から知らされる夫・悟の数々の嘘。
本籍地が違うに始まって、小さい時に両親を交通事故で亡くして、
養護施設で育ったとは真っ赤な嘘。
高校まで親元で育ち、
正しかったのは大学の4年間位で、
ようこもかなえも悟との接点は大学でした。
③かなえの心でトラウマとなっている小学校の親友のさなえが
………誘拐されて絞殺されて池に沈められた事件。
映画では何度も何度も何度もかなえの回想として大人のかなえが、
水に溺れたり、首を絞められたりするシーンが再現されます。
ラストのあたりで「月乃湯」の常連のシングルマザー美奈
(内田理央)の娘・みゆが突然連れ去られます。
この事件が無事に解決したのを聞いたかなえは、
突然失神してしまうのです。
子供心に親友が殺された事件がいかに大きな心の傷となっていたか・・・
真木よう子のかなえも、深刻には描かれません。
水の心象風景を多用して、銭湯の湯に浸るシーンも、
沈むシーンも恍惚としたような柔らかな表情です。
井浦新も謎の男・堀の寡黙で誠実で傷ついた心を訥々と演じて、
ラストの慟哭へと繋がる難しい役を、身体全体で表出しました。
後半あと37分でやっと現れる永山瑛太、
(リリー探偵の手腕で発見される)
悟の告白にはかなえも凡人の私も、
驚くばかりですが、
広い世間に犯罪者スレスレ、戸籍なしでも生きていける種類の
人間がいるのですね。
(日本の行方不明者・年間8万5000人との情報)
永山瑛太のカメレオン俳優にも、
そしてリリーさんの役割は大きかったです。
「アナログ」の寡黙な喫茶店主から180度変わって、
ラストでコーヒーを出す演技も同じコーヒーの置き方でも、
何と違うものかとびっくり。
役者たちのほとんどが本気でその役になりきり、
映画のイチピースとして光輝き動いている。
江口のりこも、中村久美も、そして
堀の秘密を誰よりも知る煙草屋の店主・田島役の康すおん。
康さんの働きは大きかった。
一見、講談師のような口調で、重い話を温かくしてくれた。
この「アンダーカレント」は人間の、面の顔と裏の顔。
《あなたの見ている、
《見えている彼は?彼女は?
《そして自分は?》
ホントは、何が見えているのだろう?
見たいものを見ているだけなのではないだろうか?
と問いかけています。
そして描きすぎない手法。
答えを聞こうとする瞬間に画面が暗転。
次には違う場面に切り替わっている。
そしてYMOの細野晴臣さん作曲のピアノ旋律や楽曲が重なる。
重すぎないのに深い映画で、とても好き。
そして、最後のシーン、
かなえのクラと散歩する、
5メートル後ろの人物!!
尾行しているみたいで、ちょっと怪しい距離!
表面に現れない本当の感情
リリーフランキー演じる探偵 山崎道夫のキャラクターがとてもよかった。
恰好から、発言から、何から何まで胡散臭いが、仕事はしっかりこなす。
変なんだけど、言動にかっこよさを感じるから段々と好きになっていく。
特に、主人公が、夫のことは私の方が分かっていると発言したのに対して「人をわかるってどういうことですか?」と考えを揺さぶる問いを投げかけるシーンが印象に残った。
真木よう子、永山瑛太もとてもよかった。
「怪物」の時も思ったが永山瑛太の、自分の感情を隠しながら取り繕って生きる演技がとても良い。
ラストでかなえと悟が本当の感情について語り合うシーンでは、本当の気持ちとは何だろうか、実は自分でも自身のことはほとんどわかってないよなと考えさせられた。
観た後の満足度が高いわけではなかったが、ふとした時に何度も思い返し、考えさせられる。嚙み締めることで面白さが沸き上がってくるそんな作品だと感じた。
原作はアフタヌーンコミックスということを見た後に知った。
「スキップとローファー」や「ヴィンランドサガ」など最近みて面白いと思った作品はアフタヌーンであることが多い。
「Undercurrent」
1.底流、下層流
→奥底に動いている思想、感情
2.(表面に現れない)暗流
→表面に立たない不穏な動き
やりきれてないと思われる。
なんじゃこりゃ?
そこそこ期待してたのだけど…何なのかがよく分からない。瑛太氏だけが芯を喰ってたような気がする。
夫の失踪から話が始まって、なんかウダウダ展開していくのだけど、よく分からない。
登場人物としては…
友達を見殺しにした過去をもつ、夫に失踪された女
その友達の兄(妹が大好きだった)
虚言癖をもち失踪した夫
で、
何も起こらない。
いや、起こるのだけど至極どうでもいい。
フランスでは人気の漫画らしい。
静止画と動画ってのが明らかに違う。
絵画でない限り静止画には脳内の補填が必要不可欠に思う。で、その補填される様々は見た人の人生経験から想起されるものだと思われる。
映画はそこが根本的に違う。
補填するわけではなく、読み取ろうとすると思う。
答えは全て絵の中にある。
…で、頑張ったけどよく分からない。
例えば、海岸のカフェで対面するシーンとかでも、胸中は煮えたぎってんじゃないのかと思われる。
夫に対する愛情は薄れていたとしても、その責任感の無さとか自身のプライドとか費やした8年もの時間とか、どえらい事になってんじゃないかと。
で、そこを隠すからアンダーカレントなんて題名がつくんじゃないかと思うのだけど…
完璧に隠しすぎて最早「無」だよね。
そして、あなた相当強いよね、強すぎるよね。
最後の台詞が全く皮肉に聞こえない程、切り捨てたよね。
アレが正解なのかしら?
あのフルサイズの引き絵が正解なんでしょうか?
慮れとでも言うのか?
それぞれの表に出さない内面を汲み取れと?
ならば、その前にキャラに感情移入できるだけの材料をくれよ。
退屈で寝たわー
原作読んでないけど、この配役で合ってるのかしら?
総体的に線が太いように思う。
兄とかもなんでそこまで暗いのかよく分からない。お前が妹を殺したのか?って感じだ。
瑛太氏はクズ男をやらしたら日本一だと思う。
ウダウダ御託並べてたけど、子供に縛られる未来が悍ましかったんだよね?
唯一、彼には落とし所があったように思う。
なんか、人を理解する事の幻想みたいなレビューも多いのだけど、他人なんか理解できる訳がない。他人を理解出来ると思う事自体が傲慢ではないか?だからこそ思いやりなんて文化があんじゃないのか?
…などと常日頃から思う俺は、よっぽどさもしい人間で、寂しい人間なんだなと思う。
合掌。
かなえの幼馴染を殺した犯人があの人ならラストはゾッとする
2023年映画館鑑賞60作品目
10月22日(日)フォーラム仙台
スタンプ会員1500円
原作未読
監督と脚本は『愛がなんだ』『アイネクライネナハトムジーク』『mellow』『his』『街の上で』『あの頃。』『愛なのに』『猫は逃げた』『窓辺にて』『ちひろさん』の今泉力哉
脚本は他に『影裏』『愛がなんだ』『Arc アーク』『ちひろさん』の澤井香織
銭湯屋月の湯の共同経営者で婿養子の悟が組合の旅行中に失踪した
組合の紹介で堀が面接にやってきた
その日から働くことになった
アパートが見つかるまで同居することに
友人の菅野の紹介で失踪をした悟の調査を探偵の山﨑に依頼した
両親は子供の頃に交通事故で亡くなり兵庫県の施設で育ったと聞かされていた悟の過去は嘘
本当は最近まで両親は生きていて悟は山形出身
悟は子供の頃から嘘つき
嘘で塗り固めた人生だった
嘘に耐えきれずかなえの元から去り失踪したのだ
今泉監督の要求だろうけど真木よう子の芝居に不満がある
もう少し悲壮感がほしい
『ある男』の安藤サクラのような
客商売だから表向き明るく振る舞う必要があってもあれはない
真木よう子だって無名塾出身なんだからやればできる子のはず
今泉監督の意図がわからない
原作もあんな感じなんだろうか
カラオケ屋で重要報告したあとにオハコを熱唱する山崎とかなえのツーショットが面白い
悟も山﨑も含蓄のある発言をいくつかしてるのだが今となっては全く覚えていない
知的で弁が立つ男はちょくちょく女を言いくるめてしまうものだが女だって納得してるわけではない
ヒスを起こしてブチギレるのはクールな大人の女としてはみっともないという羞恥心のあらわれだろう
「なに言ってんの・・・」内心では怒りを通り越して呆れてるのかもしれない
田島の爺さんがまさかの名推理ぶりを発揮するわけだが詰めが甘かった
金田一耕助が毎回毎回やる「しまった!」みたいなものである
かなえが子供の頃に幼馴染だった女の子が殺された
堀の妹だ
かなえも現場にいて逃げた
殺した犯人はまだわかっていない
犯人はおそらく彼だろう
そうなるとラストがゾッとする
配役
銭湯屋月の湯を経営する関口かなえに真木よう子
銭湯組合の旅行中に失踪するかなえの夫の白石悟に永山瑛太
危険物取扱資格とボイラー技能士の資格を持つ月の湯の新従業員の堀隆之に井浦新
失踪した白石の調査をする探偵の山崎道夫にリリー・フランキー
かなえの大学時代の友人で康平というまだ赤ん坊の息子がいる菅野よう子に江口のりこ
堀の正体を見破った煙草屋の老人の田島三郎に康すおん
月の湯のお手伝いをしているオバさんの木島敏恵に中村久美
月の湯によく来るみゆという小学生の娘を持つシングルマザーの藤川美奈に内田理央
温泉組合の世話役に諏訪太朗
堀さんの涙
豊田徹也さんによる原作が大好きである
上流の肩の力が抜けた自然さ 穏やかさ 素朴な生活感
それらの下流に確かにある偽り 疑念 他人や自分への諦念
誰しもが持ち合わせ、コントロールしあぐねている心の波の断層を
静かに温かく それこそ映画のような美しさで切り込んだ一冊に 思春期の私は完全に陶酔し、瞼に映像を映しては余韻に浸りまくっていた
そのアンダーカレントが映画化、監督は今泉監督、音楽は細野晴臣という文句のつけようがない布陣が報じられ ドキドキしながら観に行ったが
期待を裏切らない143分でした
ふとした会話の合間合間にギリギリまで溜め込む間
全体的に寒色が強めな静かな色調
年季の入った銭湯兼自宅の美しい庭と調度品
再会と最後の会話に相応しい海辺のロケーション
台詞も概ね忠実で、とても原作の独特な空気感を大事にしつつ
あやとりや蛙でのシーンの繋ぎ方はとても上手だなと思った
そんな原作へのリスペクトが感じられる中、一番驚いたのが 堀さんの涙である
クールで無表情で飄々としていて
クールで(2回目)かっこいい堀さん
原作では涙なんて想像できなかった
映画での井浦新演じる堀さんは 終始どこか困り顔で 背負う哀愁がものすごい
(35.6歳設定にしてはキャストの年齢が少し高すぎないかな…と薄々感じながら観てました)
バスを見送った堀さんが一度目頭を抑えてから静かに歩き出す原作のラストがたまらなく好きなので
その終わり方を踏襲してくれるだろうと勝手に思い込んでいた自分は 家でかなえと食事をするシーンまで続いたことにかなり驚いた
けれど、本当はドジョウが苦手だけれど好きだと勘違いされ続けちゃって もう本当のこと言い出せないんだよね 、と笑うかなえを前に涙と隠していた真相を零す堀さんを観て
ああ これはこれで なんて綺麗な終わり方なんだろうと思った
これは個人の解釈だが、この作品のテーマは「人の多層性、人を分かるということの不確かさ」
そしてこんなにも好きな所以は、美しさもさることながら「悲しみや嘘、本音を下流にたたえながら 静かに 時に激しく流れ続ける今を生きていかなければならない市井の人々による日々の営みへの 作者の眼差しの優しさ」である
言葉にできない ありのままに表せない 本当が分からない「嘘」を
ドジョウのささやかな一件でさらりと表現し
かなえは笑い
堀さんは泣いた
そこには今泉監督による生活への優しい眼差しが見えて、この人が実写化をしてくれて良かったと思えたのだった
素晴らしいアンダーカレントをありがとうございました
(原作との比較雑感)
・湖で堀さんが石を投げるシーン
漫画で狂おしいほど好きなシーンなので、一瞬で終わって残念だった…あそここそたっぷり間を使って映像化してほしかった…!
・山崎さん
リリーフランキーが山崎さんすぎてとんでもなく良かった 自己紹介時の「釣りバカ日誌のハマちゃんと同じです」の言い方で最高のキャスティングだと痺れた
・下着を盗んだ少年を諌めるシーン
ここも堀さんがかっこよくて好きなので、なくて少し残念だった
でも連載作ではない1本の映画で、映画の堀さんの描き方では不要だったのかもしれない
・CharaのDuca
初見の時Ducaを知らなくて、後々聴いた時に カラオケでいきなり振るには難しすぎる!と笑った
どうしてこの曲を歌ったのか不思議だったので、映画にはなくて笑った
Charaを好きになったきっかけでした カラオケでは歌わないけどね
いい湯だな‼️
ヒロインは夫に蒸発され、おばちゃんと一緒に銭湯を切り盛りする女性。そんな時一人の男が住み込みで働くことになったり、友人より紹介された探偵と一緒に夫を探したりするヒロインだったが・・・要はこの作品はトラウマの映画ではないかな⁉️ヒロインは幼い頃、仲の良かった友達と共に事件に巻き込まれ、友達を死なせてしまった事‼️夫は自分が嘘をつくことで、いろんな人を不幸にしてきた過去‼️住み込みの男はヒロインの死んだ友達の兄‼️それぞれがトラウマを受け止め、頑張ってトラウマと向き合っていこうという物語だと思います‼️終盤、ヒロインと夫との海辺での会話シーンや、ラスト、ヒロインの後ろを井浦さんが見守るように歩いていくシーンがホント素敵です‼️「パッチギ!」から18年、いつまでも魅力的な真木よう子さん‼️
嘘の本音
今泉監督久々の新作という事で鑑賞。遅めの上映だったので人入りは少なかったですがゆったり観れました。原作は未読です。
スローなテンポでの日常ドラマを見せるのかと思いきや、ミステリーの方向へと舵を切っていくという斬新なスタイルの作風に良い意味で振り回されました。
旦那が失踪したため一時期銭湯を休業していたかなえ、近所のおばちゃんと共になんとか営業再開したタイミングで堀さんという方が銭湯に働きに来て…といった感じのゆったりした作品です。
堀さんは寡黙で不思議な人ですが、仕事はしっかりしてくれるし、ご飯は一緒に食べてくれるし、休日でも用事があれば付き合ってくれる、互いに好意は無いにしても少しずつ信頼関係が生まれてくる様子の描き方が本当に上手いなと思いました。
構成自体は前半と後半でガラッと変わるのですが、大きな事件の描写がほぼ無いので怪しげな雰囲気を混ぜつつも根幹にある"嘘と本当"をテーマ的に貫き通していたのには好感を持てました。
失踪した旦那の失踪した理由がその場所にいられなくなった、嘘をつき過ぎて何が何だか分からなくなった、という共感できなさそうで、意外と引っ掛かるところがあるという不思議な共感の仕方ができました。思いっきり引っ叩いていい?と聞くシーンは笑えました。
堀さんがかなえの元にやってきた理由もなんとなくは分かっていましたが、かなえの友達が堀さんの妹で、仕事でふらっと寄った時にかなえが当時のあの子と1発で分かって、どこか罪滅ぼしのような事をしなきゃという使命感だったんだろうなと思いました。優しい人だからこそ忘れようとしても忘れられないというのがビシバシ伝わってきました。
兄だという事を明かしてからのシーンは多く映さず、犬の散歩をするかなえを後ろから見守るようについていく姿と共にタイトルを出して終わるというなんともオシャレな終わり方でした。物語に余韻も残していましたし、今泉監督らしさを再体験する事ができました。
役者陣も今泉組の面々から珍しい人選などなど様々な面で楽しむ事ができました。キチっとした役の多い真木よう子さんが少し抜けた感じな役割が好みでしたし、井浦さんの感情を表に出せない感じがプンプン伝わってくるのも好きですし、出番は多くないけれど存在感バッチリな江口のりこさん、胡散臭さの中にある優しさが沁みるリリー・フランキーさんと豪華な顔ぶれを贅沢に起用していて不思議な感覚に陥る事ができました。
ここ最近は原作準拠の作品が多いので、ここいらで今泉監督のオリジナル作品が見たいなと思っている今日この頃です。
鑑賞日 10/17
鑑賞時間 19:45〜22:15
座席 C-11
ギャグエピソード減でシリアス増
原作から、少しニヤリとしてしまうようなギャグエピソードの多くがカットされてしまっており、
それに伴いなのか、一部の登場人物の性格も変わっており、
全体的にシリアスが強調された雰囲気になっています。
堀さんは、終始、悲観的に寄り過ぎている表情、声のトーンと喋り方で、
原作を尊重するのであれば、もっとプラマイゼロというかニュートラル寄りのキャラクターにして欲しかったです。
あとラストは原作と異なる終わり方ですが、
堀さんが泣くシーンは余計かなと思いました。
また、過去のトラウマを思い出して寝込んだかなえが、
看病しに来た堀さんに対して、
自分の首を締めるようにお願いするシーンがありますが、
カメラアングルがずっと引きで撮られているせいで、
堀さんがかなえの首を締めるのでは!と、一瞬見せかける、
視聴者に対してミスリードさせるような演出が分かりづらくなっており、
非常にもったいないと感じました。
山崎も、原作よりもお笑い要素がかなり少なくなっており、
リリー・フランキーがリリー・フランキーを演じているという感じでした。
原作の、遊園地で山崎が風船を空に飛ばすくだりが個人的にかなり好きだったのですが、
違う演出になっており残念でした。
サブ爺も、原作ではチャランポランなダメ人間だからこそ、
最後に堀さんを見送るシーンが際立つのに、
ギャグエピソードがカットされてしまっているせいで、
サブ爺の人となりも掘り下げられず普通のおっちゃんになっており、
コントラストが全く無くなってしまっているのが残念です。
個人的には、原作のギャグとシリアスの絶妙なバランス
からのラストの切ないエンディングがかなり好きだったので、
総じてやや残念、なんだか物足りない、という感想です。
あくまで、原作とは別物として楽しむ事をオススメします。
30台半ばのかなえ(真木よう子)は、しばらく休業していた銭湯「月乃...
30台半ばのかなえ(真木よう子)は、しばらく休業していた銭湯「月乃湯」を再開することにした。
休業していたのは、かなえの夫・悟が銭湯組合の慰安旅行先で、突然姿を消してしまったからだ。
叔母(中村久美)とふたりで再開したが、やはり女ふたりでの営業は厳しい。
そんなところへ、組合から紹介されたと堀と名乗る男性(井浦新)がやって来た。
無口な男であったが真面目そうでもあり、雇い入れることにした。
また、ある日のこと、かなえは大学時代の友人・よう子(江口のりこ)で出会い、旧交を懐かしんでいたのもつかの間、夫の失踪をよう子に告げ、彼女から私立探偵の山崎(リリー・フランキー)を紹介される。
得体のしれない山崎がかなえに持ってきた悟の報告者、かなえの知らないことだらけだった・・・
といった物語で、正体不明の夫・・・というと昨秋の『ある男』を思い出す。
「アンダーカレント」というのは、地下水流のことらしく、ひとそれぞれの隠された一面の暗喩。
ま、誰しも相手のことはよくわかっていると思いながらも知らないことが多かった、というのはしばしばあることで、山崎が初対面のかなえに対して「あなたはどれだけ悟さんのことを知っているというのですか」と問うが、山崎はその前にかなえから提示された写真を見て悟のことをあれやこれやと推察して、テキトーなことを告げている。
この場面が結構面白い。
ひと皆、相手のことは第一印象のバイアスがかかっていて、だいたいあやふやな印象を引きずったまま、相手を見てしまう。
その態で行くと、テキトーな第一印象を翻す山崎は、意外と人を見る目がある(この時点では、そんなことは微塵も感じさせないリリー・フランキーの演技が素晴らしい)。
さて、かなえの知らなかった悟という人物が立ち上がってくると同時に、無口でほとんで何も語らない堀の過去も立ち上がってくる。
いや、このふたりよりも大きく立ち上がってくるのは、かなえの過去。
トラウマのように何度も夢でみる、水底へ落ちていく自身の姿・・・
そこにあるもの・・・
と、この繰り返される水底のかなえの図は、これまでの今泉監督の撮ってきた画と印象が異なり、パッと観たときに、江戸川乱歩の小説の一部かと思ったほど。
江戸川乱歩的、というのはあながち間違いではなく、最終的に三者三様の心底のアンダーカレントが浮かび上がってくるからね。
ということで、映画の物語的には非常に興味深く観れたのだけれど、気になったところもいくつか。
本作では、フェードアウト&長めの黒味での場面転換が多様されているが、月が変わる際の表現としてはよいものの、同一日のうちなどでも用いられると、時制が混乱してしまう。
別の技法を用いる方がすっきりしていたのではないか。
もうひとつは、堀の過去が立ち上がる際のキーパーソンとなるタバコ屋の主人。
原作での扱いがどうかは知らないが、映画中では少々しゃべらせすぎ。
主人がしゃべることで、映画自体が持つ謎性のようなものが薄まった感じ。
「どうして戻って来たんだい」というのは拙く、「まぁ、戻ってきたんだね」と堀に寄り添う台詞を言った後は聞き役に徹する方がよかったかもしれない。
で、別れ際に「にいさんの沸かした湯はよかったよ」と言って去る、とか。
ただし、そうすると脚本がすこぶる難しくなるのだけれど。
このタバコ屋主人と堀のエピソードとクロスカットで描かれるのが、かなえと悟(永山瑛太)の対峙シーンだが、ここはふたりがうまく、納得。
特に、永山瑛太の繊細な演技が光る。
「きみのことが好きになったから一緒にいるのがつらくなった、と言えばいいのかな」という悟の台詞、「と言えばいいのかな」というところが、台詞としての重み。
人物像が立ち上がってきて、いいですね。
そのほか、いくつかのロケーションを組み合わせて、「月乃湯」のある架空の町を作り上げているのだけれど、下町なのか郊外の住宅街なのか、ちょっと印象がバラついた感じになっているのも気になったところ。
と、いくつか気になる点を挙げたけれど、個人的には好きな映画です。
自分自身に向き合いながらも誰かに委ねることを問う作品かと思います。
今泉力哉監督の作品は流れる空気感と言うか、世界観が結構好きなんですが、今作も気になっていた作品なので鑑賞しました。
で、感想はと言うと…良いすね♪
独特の世界観でゆっくりと流れる時間。台詞もBGMも光量でさえ、最小限で留めている。和食のような素材の良さを活かす感じで味付けは素朴な感じ。
空気感すらご馳走に感じる味わいは他の方も仰られてますが、文学のような味わい。
ここに昔ながらの薪で沸かす銭湯が舞台と言うのが良い。個人的にはひとっ風呂浴びた後の瓶のフルーツ牛乳やコーヒー牛乳、マミー等をグビッと味わうシーンがあったら文句無しw
原作は未読ですが、漫画が原作と思えないくらいに淡々とした世界観に今泉力哉節が活きている。
個人的に好きなのは場面転換の暗転が多用されていて、何処か演劇のような雰囲気も感じるんですよね。
夫の突然の疾走と謎の男の訪問と突然の就労。近所の女の子の事件とそれぞれの過去の想いと回想。
それぞれの出来事は鷹の爪や山椒のようにピリリと辛くも刺激的な切っ掛けであるけど、それが邪魔している感じはしない。
あくまでもアクセントになっているのが心地好い。
だが、かなえの心の奥底には静かにそして時折澱むかのような水流(アンダーカレント)が存在している。
今泉力哉監督とメイン脚本を担当されている澤井香織さんと組み合わせの妙に日常の静かさと誰もが心の奥底にある水流との対比が文学的なのではないかと。
プロレスで言えば、アメリカンプロレスでもハイスパートレスリングでも無く、キャッチアズキャッチキャンのランカシャーレスリングのような味わいと言うか…って解り難いですねw
真木よう子さんに井浦新さん。リリー・フランキーさん、永山瑛太さんと隙の無いキャスティング。
井浦新さんは自分が観る作品に御目にかかる機会がホント多いけど、良い味を出されているんですよね。
また、探偵の山崎役のリリー・フランキーさんが良い感じ。
雑多な探偵と想いながらも徐々に味わいと独特のニヒリズム漂う山崎が良いんですよね。遊園地のシーンやかなえと悟を引き合わせた海辺のカフェでのコーヒーの配膳の振る舞いなんてシブ過ぎ♪
また、カラオケ屋でのダウン・タウン・ブギウギ・バンドの「裏切り者の旅」を歌うなんて、変化球かつ皮肉が効いているのが良い。
ただ、個人的に感じた難点も無きにしもあらずで、ラスト30分ぐらいからの伏線の回収と言うか、それぞれの切っ掛け回収はちょっとどうかと。
特に悟の行方が判明した件は良いとしても、2人を引き合わせて、悟が失踪した理由を明らかにするのは個人的にはちょっと余計と言うか、戴けない。
かなえと山崎が悟との待ち合わせ場所に向かうところで止めていても良かったと思うし、ここは観る側の考察に委ねた方がスッキリすると言うか、“らしい”んではないかなと。
悟の今までの葛藤や理由を明らかにされてもちょっと勝手に感じるし、冷静に考えるとなかなかメンヘラでサイコパスなんですよねw
まあ、そうすると永山瑛太さんが回想のみなのでなかなか贅沢な使い方になるんですがw
かと言って、重油ボイラーをもらいに行った先の意味深な火災とか本筋に絡みそうで絡まない出来事もあり、ラストのかなえが犬の散歩をする後ろでストーカーのような絶妙の距離で付いていく堀との描写は観る側に委ねる素敵なラストだからこそ、余計にラスト手前からの回収パートは個人的には少し残念かな。
劇中で「自分は嘘つきです」と言う台詞があるけど、自分を正直者と言う人ほど、嘘臭いと思えるし、台詞にするとちょっとこっ恥ずかしくなる。
自分自身が時々分からなくなる時だってあるのに、ましてや家族と言えど、他者が分からないなんて、普通と言えば普通。
誰しもが自分の心に対しては当事者のようで何処か門外漢なのではないかと。かなえや堀、悟は赤裸々に語れば語るほど門外漢な自分の心との葛藤を悩まされるが、そこに居る人との距離が嬉しかったりするんですよね。
だからこそ、ラストが心になんか染み入ります。
143分と言う上映時間は長いと言えば長い。でも、鑑賞中の時間がなんか心地好く贅沢な時間にも感じる。
薪割りのボイラーの銭湯(また、中の湯船の周りの装飾が良いんだコレが♪)。飼い犬。たばこのピース。縁側。どじょう。ボイラー室の横の休憩部屋。近所の人との交流。エトセトラエトセトラ…と素敵なモノが詰まっている。
慌ただしい日常の中で、雲の流れを見ていたり、川側でゆっくりしてみたり、窓の外を見ながらお茶を飲んだりする時間を贅沢に感じ味わえる人で映画は劇場で観る主義の方なら余計に好きな作品ではないでしょうかとw
なので、是非劇場で味わって欲しい作品かと思います。
人を分かるとは
その人に表れた面から定義をするレッテル張りなのだろう
自分の心にさえ向き合わないように暮らしているのだ
嘘で繕う生活に耐えられなくなった男
癒やしようのない傷を共にすることを選んだ男
真木よう子、井浦新、そしてリリーフランキー!皆良い
細野さんの音楽も
100人/日
希死念慮が付きまとう出だしで、原作は未読だが今作は逃れられない何かを引きづる話だろうと想像する
とはいえ、今泉節もちょいちょい差込まれる 特にリリー・フランキーのおとぼけコメディリリーフは絶品だ それと対を成すかのうような康すおんの爺さん役は始め高名な落語家なのではと見紛った程、独特の節回しがやけに心地よい
父親を亡くし、旦那が失踪し、自分の周りからどんどん大事な人が消えていく憂き目に遭う主人公の喪失感を十二分に表現している真木よう子の演技力はキラリと光る そう、今作は配役が絶妙にピタリと嵌るキャスティングなのだ
1/2の負けの方は、卓球映画『ミックス。』の引用だろう(苦笑)
そして赤ちゃんの仇名は作家町田町蔵ではなく町田 康のギャグ まぁ本筋には全く関係無いところにスルリと入れ込んでくる(苦笑)
本題に戻るが、そんな幽霊的生き方をしている風呂屋にふらりと寡黙な男が求職に訪れる 抑揚を抑えた、何かスネに傷持つイメージを掻立てられる佇まいは井浦新の真骨頂だろう
そして、薪でくべていた燃料を重油に変更する際の器具を貰う約束をしていた別風呂屋の亭主も失踪し風呂屋はボヤ騒ぎを起こし、益々尋常じゃない雰囲気を醸し出す 一種のホラーかも知れない そしてクライムサスペンス張りに常連客である小学生女子が事件に巻き込まれ失踪する(最悪の事態は免れるが)
そこで主人公は初めて観客にその希死念慮の原因を訥々と表明する
そこからは怒濤のクライマックスへと疾走感がストーリーに彩りを付けていく
見付かった夫は"虚言癖"のサイコパスだったことを自ら吐露する 虚構で生きている男は、"子供"だ"ボイラー”だという現実が湧き出るからこそ、あの苦い顔を一瞬表面化する あのシチュエーションは今作の白眉であろう
人は表面のみで他人を判断する 知った振りをする イメージを落とし込む 本当の自分は水の底にしかない 主人公の小さい頃の壮絶な出来事は確かに異様でありトラウマとしてはこの上ない 自分の代わりに毒牙に懸かった顔立ちが似ている友達 その友達はいつも兄が迎えに来ていた その兄を含めた家族も又喪失感に苛まれ一家離散の憂き目に遭う
その兄が不気味な男であり、同じ傷を抱えた主人公に引き寄せられたのだ
本当に不思議で、でも『仄暗い水の底から』寄り添い共存できる関係を構築できる可能性を示唆したテーマなのである
どじょうはそれ程好きではない事実も、黙っていれば誰も気付かない
それでも、本当の自分をせめて米粒ほどでも知ってくれる人が傍にいる そんな幸せを、ラストの微妙な距離感で犬の散歩をしている2人に祈りたい、そんな想いに胸がいっぱいである
※題名は一日の自殺者数
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