目の見えない白鳥さん、アートを見にいくのレビュー・感想・評価
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白鳥さんやその周囲の人を見ながら気づくこと。
全盲者・白鳥健二さんの芸術鑑賞の様子や、生活の様子、周囲の人々のインタビューをメインに構成されたドキュメンタリー。
「芸術とは」、「障害とは」、この2つの観点で見て面白い映画だった。
白鳥さんにとって芸術は他者とのコミュニケーションを楽しむ手段のようだし、障害があることは個人を構成する一つの要素でしかない。
物事の捉え方は人それぞれ。
芸術は自分が直送受け取って感じるだけじゃなく第三者を介して触れるのもまた鑑賞たりうる。
全盲者だってアートを鑑賞するし、自分で写真を撮る。
これに驚く私は「障害者に偏見はない」と自分自身で思っていても、「(見えない人は絵を見ない、写真は撮らないという)先入観」は持っていたんだな、とこの映画を見ながら気付きを得た。
白鳥さんご本人のコメントや周囲とのコミュニケーションの様子が淡々と伝えられて進んでいく感じで、間違いなく「視覚障害」を大きな要素として扱ってはいるのだけど、力むところがなくフラットというか、監督の主義主張は前面に出てきてないのもこの映画は良かった。
例えば白鳥さんが部屋で一人でおられる時は電気が付いていないのだけど、人によっては「白鳥さんは光を感じないので電気を付ける必要がないんですよ」という解説を(おそらく善意で)入れたくなるだろうという中で、そのあたりに全然触れず、ただ生活のそのままを写していたのが良かった。
作り手のスタンスも心地良い作品だった。
全盲の美術鑑賞者さんと、その周囲の人々との、アート鑑賞や、暮らしっ...
全盲の美術鑑賞者さんと、その周囲の人々との、アート鑑賞や、暮らしっぷりを綴ったドキュメンタリー。
周囲の人が言葉で表現する、会話が始まり、作品の解釈が人の数だけ生まれる、元の印象が人の言葉で変わることもある…
鑑賞というより、セッションやワークショップのような楽しみ方にもみえてきました。
自然体で飄々とした様子、大抵のことは時間をかければ解決できる、気づきや学びの多い鑑賞体験でした。
タイトルなし
白鳥さんの映画だった。そして白鳥さんが素晴らしかった。映画自体はジタバタしてる感。でも、白鳥さんの酔っ払ってるところを撮ったり、差別された記憶を聞いたり、視覚障害用の言葉をつけ、面白かったのは、視覚障害の側から言葉から画面上で映画を描いてみたりしていること。白鳥さんや視覚障害者は見られないんだけど、鑑賞体験をさらに複雑にメタに記述。
白鳥さんに写真をもたせた人は偉い。自分では見られないけど、写真を撮る行為。
現代アートとはこういうものなのだと思う。
正しい見かたがあるのではなく、そもそも人が世界を見ている見方に真実や正しさがあるわけではない。様々な世界との関係があるだけなのだ。白鳥さんは、そこで人々が会話しているのを聞くのが楽しいという。
全寮制の学校で、また優しいおばあちゃんにさえ健常者より努力しろと言われてきた白鳥さんの過去。それに抗ってきた白鳥さんの生の物語なのだと思う。
明るい。力がある。
全盲の視覚障がい者の暮らしと日常を、カメラは傍観者的な視点でとらえ...
全盲の視覚障がい者の暮らしと日常を、カメラは傍観者的な視点でとらえています。
白状を使って独りで歩くさま、という観察する視点としては入門?レベルから、買い物をする、食事をする、IT機器を使う、などなど。想像のつく不便さを次々とクリアしていく様子は、ときに想像を超えた果敢な行動に映ります。たとえば、歩き慣れた道ですらその日に限って工事中であれば、たちまちにして一歩踏み外せば滑落の山道を進むのにも似たリスクの渦中に置かれてしまうという、非日常的なな日常ぶり。
外国映画に出てくる日本が日本でないのに似て、映画に出てくる視覚障がい者というのは概して視覚障がい者らしくないです。障がいは物語のネタにされてますので、脚色されています。しかし本作は違います。ありのまま、素のまま。『そのまま撮ってどうすんの?』とツッコミ食らいそうなぐらいフツーに撮ってフツーに映してます。
視覚障がい者の知人を身近に持たない観賞者には、隣の人間国宝ならぬ隣のエイリアン的な視覚障がい者の生活の覗き見自体が新鮮でしょう。また少しは視覚障がい者の暮らしを存じている観賞者のかたには、全盲でありながら美術観賞を楽しむ術とはどういうものか、という点に惹かれるでしょう。
視覚障がい者と美術館といえば、知る人ぞ知る、この世界では有名な先達がいらっしゃいます。そう、広瀬浩二郎さんです。
普通は触っちゃダメとされている美術館の美術品を触りまくってOKとし、美術観賞の世界を拓いた方です。比べるところではないですが、こちらでは180度ちがう立ち位置で美術館を楽しんでいるという点が、心のなかで比べてみればおもしろい点です。
見えないことで楽しみを奪われているかのように思える視覚障がい者ですが、それはあくまで健常者の健常者的思考であって、全盲の世界に住むことを受け入れて、失ったものを数えることをやめて、その世界での楽しみをあきらめなければ、白鳥さんのように達観の笑みをうかべてこころ健やかに暮らせるんだなという、全人類を明るく照らす光がこの映像の光に重なっているなと気づかされました。無から有を産む楽しみの錬金術は、実はそこかしこにあり、見えない人ほど見つけやすいことなのかも。
白鳥さんの自然体の姿が、ひとつの答えを誘っているようで、全編通しておさまりよいのです。
白鳥さんと両監督
本を読んだ上で京都の出町座で映画を鑑賞してきました。同名タイトル本も同じように「すごい!」と感じたのですが、ここ最近観た映画の中でも名作です!美術館へ行くことや作品を観ることのハードルも下げてくれますし、ドキュメンタリー映画という枠を取り外しても名作です。 お二方の監督の編集はとても工夫されていて秀逸でした。途中で差し込まれるアニメーションやテロップも笑いを誘ってきます。そして「見えること」「見えないこと」について考えさせられることも、きっちりと作品の中に盛り込まれています。 上映後の白鳥さんや監督のお二方と裏話ありのトークセッションも軽妙でとても楽しみました。制作の裏話を聴くと映画が作られた時の雰囲気が、さらに身近なものに感じられました。 本を読まなくても充分に楽しめると思いますが、本を読んだ時の余白をうまく埋めていて、特に映画の中に登場する人たちのコメントがとてもいいのです。これが編集の妙なのです。 今の時期しか無理だと思いますが、舞台挨拶など白鳥さんや監督さんの映画に関わった方のお話を直接聞ける状態で鑑賞されることをおすすめします。面白さが倍増しますので!エンドロールの音楽もとてもいいですよ♪
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