赦しのレビュー・感想・評価
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償うとは何をすることなのか、時に感情を持ち出す裁判制度とはなんなのか。
興味深い作品。犯罪被害者と加害者の双方の傷をあぶり出す演出。
前から気になっていた作品で、見応えありました。
娘(当時17歳)を同学年の少女(夏奈=松浦りょう)に殺された
両親(尚玄とMEGUMI)
7年後の再審で、当時の苦しみが蒸し返され
またもや心の傷を抉られる話し。
見応えある映画でした。
監督は来日10年以上になるインド人監督のアンシェル・チョウハン
(38歳)
写真を見るとかなりのイケ面(ポートレートが如何にも写真家が撮影した、
と分かる斜めから写した・・かなり顔に自信ありそう、余談)
外国人(インド人)が撮った映画とは思えないリアルさがある反面
ちょっと違うなぁ、とのリアリティのなさの二つを同時に感じました。
再審が進むに従って次々明らかになっていく事実。
★母親は事件後に離婚して、既に再婚している。
(一応の心の整理は出来ている・・・)
★父親は今も娘の死に心の整理がつかず、酒浸りの日を
送っている。
そして3つの新事実が明かされる。
❶両親がそれぞれ加害者・夏奈の母親から高額の賠償金を
受け取っている事。
❷賠償金を払ったのちに、母親は自殺している事。
❸更に夏奈の告白。
・・・実はクラスメイトから酷いイジメにあっていて、その主犯格が
・・・殺された娘・恵未(成海花音)だった事実、
・・・の3点が明らかになる。
ここでリアリティがないと思った点。
❸のイジメの主犯格が娘の恵未?
これは7年後に明かされる事実とは思えない事。
夏奈本人が隠していたとしても周囲
(学校・生徒への聞き込みを警察はする筈だし、
今日日のSNS警察が騒ぎ立てて、隠せる事実では無いと思います)
(SNSの反響は敢えて隠す脚本なのかも?)
❶の賠償金を受け取っていた事実。
それなら民事裁判で両親側が勝訴して受け取った・・・か、
あるいは民間の弁護士を立て交渉したか?
なので、母親の自殺を知らないのはあまりに不自然だと思う。
❹7年前に出された判決=懲役20年。
これは少年犯罪として17歳の少女に出される刑期にしては
明らかに重すぎる。
再審の裁判長(真矢ミキ)が血も涙もあるとてもバランスの取れた
人格だったのはとても良かった。
人を人が殺める事の波紋。
加害者家族も被害者家族も家庭を壊され、父親は作家として
書く意欲を失いアルコール依存症になる。
学校だってクラスメートだって心の傷を負っている。
最後に、
主役の加害者・夏奈を演じた松浦りょう。
非常にインパクトのある眼差しで、丁寧語の受け答えと裏腹な狂気や
底知れぬ闇を体現していました。
ただ上品な物腰で、「7年前の私は別人でした」
そう言われても「はい、そうですか。」
と、人の心は切り替わらない。
彼女あっての映画「赦し」だった、とも思いました。
「動機」を後付けにした是非
タイトル通り、非常に難しい問題に焦点をあてた作品
両者の言い分が真っ向から対決しているわけではないことと、事件からすでに7年が経過してしまっている点がこの作品の特徴だと言える。
この少し時間経過したことが、関係者全員に変化を与えている。
特に面白いのが、監督やプロデューサーなどがインド人だということ。
なぜ彼らが日本の法律に関する作品を表現したかったのか、そこが一番気になる。
さて、
殺人事件が起きた。
被害者と加害者はクラスメートだった。
当時の裁判の問題点を突く形で始まった7年後の再審。
争点は当時未成年だったカナに対し20年という刑を下した是非と、その補償。
冒頭から娘を殺されたことで人生が壊れてしまった父と母とその憤りが描かれるが、何故カナがエミを殺したのかという点については触れられない。
これがこの事件の根幹であり、そもそもそこが明らかにされなければ殺人事件の刑期も明確にはできないはずだ。
これについては、カナが当時からずっと口をつぐんできたことになっている。
当時から再審途中までの間、カナの動機は全く触れられることなく、争点ではない単に殺人という「項目」のみに焦点が当てられてしまっていることに違和感を拭えない。
「赦し」
このタイトルにこそインド人監督の思いが詰まっているのは確かだろう。
それをそれぞれの事情と時間によって始末をつけていくのがこの物語だ。
テーマも内容も悪くないが、このカナの殺人に至る動機を途中で挿入してきた点にはモノ申したくなる部分がある。
これは裁判ではどんでん返し的な要素にはなるものの、いまの今までそこに焦点を当てなかったことは非常に考えにくい。
牢屋で眠るカナの夢に当時のいじめの様子が描かれることで彼女の動機がわかるが、まさかそれをずっと言わないでいたとは思いもしない。
加えてネグレクトだったカナの母が、娘の犯した罪の補償をして自殺したという心境は全く理解できない。
主人公はエミの父のカツだと思われるが、彼の壊れた人生と苦しみの代償をその原因であるカナにすべてをぶつけている点がこの物語の起点だ。
思いもしなかった再審などが始まり、再び過去と対峙しなければならなくなった苦悩。
その原因はカナにあると思い込んでいたことが少しずつ剥がされていく。
最後のシーンは印象的だ。
裁判所の前の道
傍聴人もすでにいなくなり、カツは自分の後ろにいる元妻のスミコの足音を聞き分ける。
でも彼は振り向くことなく太くまっすぐな道から左の細い道へ入る。
カツとは一定の距離を置きながらも、その道筋をその通りに付いて歩くスミコ
やがてフレームアウトする。
人生は順風満帆だと思われた。
しかし突然事件は起きた。
二人は人生が壊され彷徨いながら歩く。
エマの事件が解決するまでは、自分自身が納得できるまでは、結局のところ二人は同じ道を歩まざるを得ないのだろう。
カツが法廷で再度手錠を掛けられているカナを覗き見る。
カナの特徴ある目に映るのは、すべてをカナの所為にしてきた自分自身の姿だったのかもしれない。
フレームアウトした後、二人は別々の道を歩き始めるに違いない。
カツは酒浸りの生活にケリをつけた。
そしてスミコは直樹とやり直す決心をした。
結局のところ、
苦しみとは自分で終わらせるしかない。
監督はこのことを言いたかったのだろうと思う。
カツは酒浸ることをカナの所為にしてきた。
その苦悩をすべて彼女の所為にしてそれを生きる根拠に置き換えてきた。
エマにも大きな過失があった。
他人に殺意を抱かせ殺させるほどの過失だ。
特徴あるカナの顔つきは、どこか問題があるように思えてしまう。
いじめられていても不思議はない顔つきだ。
そして、カナの目に嘘はない。
これは物語の現時点ですでに一貫している。
正義という名のもとに補償というお金を窺う大人たちの本音
たまたま始まった再審によってカナは「正義」を押し付けられるが、自分自身の感覚とのギャップを感じる。
でもそれが彼女をこの事件を引き起こした深層心理へと誘う。
7年間で学んだこと
人と付き合うということを知らないでいたこと
やってしまったこと
取り返せないこと
もう一度自分が起こした事件を考えて出したことがスミコとの接見
謝罪と生い立ちと「人との付き合い方を知らなかった事」
話の途中で席を立ったスミコは、初めてカナの心境に触れ「動機」の一端を垣間見てしまった。
それは彼女の顔つきを見たときからすでに頭のどこかにあったのだろう。
「いじめ」
スミコが高校生だったら、きっとあの子をいじめている。そう思ったのかもしれない。
ただ、事件を起こした犯人としてしか見てこなかったことに対する「恐怖」
やがてカツも同じような心境へと変化したのだろう。
グラスの破片を袖口に忍ばせてエマの敵に一矢報いたいという思いが、寸前で思いとどまる。
河原はあの現場
娘と同じようにそこで血を洗う。
それが彼の赦しの象徴
若干わかりにくいところがあるがいい視点で作品を作ったと思う。
キャストが気になった
また裁判傍聴に行きたくなった。
娘はまだ生きている
2023年劇場鑑賞22本目 良作 61点
2021年の空白のような作品
空白は、娘を亡くした父と直前にコンタクトを取っていた店員とそれを取り巻くメディアと周囲の人々の構図で、今作は同じく娘を亡くした父と殺人犯の娘の同級生と元妻と現旦那と弁護士が少しの構図
空白に比べると、同級生側につく人や描きが少なく、如何にして娘を失った父と元妻が踏ん切りつけて前を向いて生きていくかのストーリーなので、必然的に構成が父よりになる
まぁ同級生の殺人に至る動機もドラマとしてありきたりながら理解できるし、全体の内容とそれぞれの心情や理屈は何回も擦られたような感じだから、映画鑑賞歴が長くない自分でも、真新しさを微塵も感じなくてお話的にも面白くない
演技もわざとなのか、そういった役者さんなのか定かではないが、主演の父役の棒読みと、コントのような腕の振り被りなどが鼻について上手く集中できなかった記憶です
こういった話は擦られに擦られただけに、捻りが欲しかったです。がしかし父の心の中には娘はまだ生きていて、それに一回蓋をすることを赦すということなのでしょう
こういった邦画ミニシアターの考えさせられる作品が好きなので、期待していただけに残念です
赦しとは
キャストに難ありかな。
高校生の娘を殺された夫婦の物語。だが、二人は元夫婦。
この事件をきっかけに、別れたという設定なのでしょうが、
こういう夫婦は、壊れてしまう場合もあるけど、より絆が深まる場合もある。
そのストーリーも少しは描いても良かったんじゃないでしょうか。
殺した理由も、終盤になってわかってくるんだけど、
なんで今まで黙ってたの? ちょっと無理があるかな。
一番の難は、キャスティング。犯人の子、megumiさんはがんばってると
思うけど、父親役。初出演ですか? ずっと棒読みなのが
気になって気になって。素人かと思いました。
女子高生が同級生を刺殺。 被害者は一方的な被害者ではなく、加害者に...
裁判モノとして見る映画
「本物の裁判物」
テーマだけ
キャスティング次第。
これは題材がいいだけに本当にキャスティングが致命的。
そもそも17才の少女に懲役20年というのは確かに疑問には思うけど(個人的感情としてはそれでも短いけど。)そんな中で7年経ち犯人の口から語られること。それが真実なのか、釈放されたいが為の方便なのか、はたまた妄想なのか。犯人と被害者の両親によるギリギリの心理状態でのせめぎ合いや、心の動きをぶつけていくはずなのにこのキャスティングでは正直きつかった。
心に闇を抱える饒舌な殺人犯に松浦りょう。眼差しが印象的ですごく良かった。ただこちら側の3人よ。尚玄は台詞が半分聞き取れない。初めアル中で呂律が回ってない設定なのかと思ったほど。MEGUMIと藤森慎吾の組み合わせはバラエティ色が強すぎる。誰に対して何の赦しなのか。伝わってこなかった。
尚玄の風貌やオープニングとエンディングの演出なんかもお洒落なヨーロッパの映画みたいだったけど、最後は交差点に飲まれて雑踏の中に消えて行ってほしかったな。
「赦し 」の描かれ方を期待したのだが
とにかく夏奈役の松浦 りょうの表情、目が凄い。赦しを乞うてるようには見えず、怒りでもないく、彼女に関わる人の心の中を怪しく見透かしているような光。せっかく圧巻の表情が捉えられているのだから、もっとその周囲のドラマをなんとか出来なかったか。
雰囲気だけつくって不明瞭なストーリーと、定まっていないキャラクター設定に、説得力がなく、作り込まれていない脚本という印象だった。MEGUMIも活きていない。
残念。
ところで、Decemberって何なのだろう…??
今年102本目(合計753本目/今月(2023年3月度)37本目)。
さて、大阪市では1週間遅れになったこちらの作品です。
「人を赦すということ」という観点では、2022年に個人的に高評価にした「消えない虹」に似た論点があります(こちらは少年事件がメインの論点だが、趣旨的に似る)。
ただ…多くの方が書かれている通り、95分ほどで扱える内容だったのか…というと難しく、このためあちらこちらの描写が省略されたり飛んでしまったり、ある程度の法律の知識を補ってみる必要はありますが、それも95分ほどの映画なので、それを考えさせてくれる前にどんどんストーリーが進んでそのままおしまいになる、という点を抱えます。
映画といえば基本的に120~150分がメインで、180分を超えると特別料金になったりしますが、この映画で述べたい趣旨のことを100分足らずで述べるのは無理があるのでは…というところです。このため、「述べたいこと自体はわかるが、では映画は何を述べたいのか」という点は「ある程度」個人で別れてしまい(ただ、問題提起型の映画なので、常識的な解釈しかできない)、時間の短さも相まってこのあたりが惜しいな…というところです。
といっても、300分だの400分だの(これらは3000円コースで、「お体が不自由な方」でも割引がきかない特別一律料金なのが普通)になっても困りますが、もう少し長く(あと30分だけでも)描写できなかったのか…という点はどうしても残ります。
ただ、解釈は(常識的な範囲において)分かれるとしてもそれも2つか3つであり、問題的としてはなかなか描かれることがないことについて(私が知る限り、2022年だと「消えない虹」程度?)扱った、という点については高く評価しています。
評価は下記を考慮して4.6を4.5まで切り下げています。
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(減点0.3/映画の趣旨として、この長さではどうしても足りない)
・ 多くの方が書かれている通りです。300分や400分コースも困りますが、もうあと30分、40分が長ければ…というところです。
(減点0.1/結局、タイトル原題のDecemberって何??)
・ 大阪市立中央図書館等で調べても、この単語は単に「12月」という意味で、大英和等も含めてもそれ以外の意味は載っていないです。ただ、最初に聖書からの引用が見られるように、キリスト教の教養(プロテスタント?カトリック?)があればわかるのかもしれません。この点は正直私も???です(おそらくキリスト教絡みではないか、と思います)。
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