「視覚障がい者と聴覚障がい者との恋愛の可能性と個人的希望」SEE HEAR LOVE 見えなくても聞こえなくても愛してる てつさんの映画レビュー(感想・評価)
視覚障がい者と聴覚障がい者との恋愛の可能性と個人的希望
視覚障がい者と聴覚障がい者との恋愛が、どのようにして成立するのかにまず興味が湧きました。少し前に、NHKE テレの『超多様性トークショーなれそめ』で、視覚障がいの女性と聴覚障がいの男性のアスリート同士のカップルが出演していて、どのようなきっかけで付き合い始めたのか、ということでは、視覚障がいの女性が手話を習いたいという申し出をして、聴覚障がいの男性が声で答えていくという関係だということでした。本作では、初対面で新木優子氏演じる聴覚障がいの響が筆談を試みたのに対して、山下智久氏演じる視覚障がいの真治は、絶望感も伴って、拒絶してしまいます。その後、道路からみあげて、真治がバルコニーの柵を乗り越えようとしたのをみて、階段を駆け上がって引き留めるのですが、声が出ないにしても、周りの人にも呼びかけて、助けを求めることもできたのではないかという気がしました。真治は死ぬつもりだったので、傷だらけになるのも厭わなかったとは思いましたが、響の御蔭で割れたガラス他の危険物の取り片づけができて少し安心しました。その後の試行錯誤の経緯はよくわかりませんが、スマートフォンの UD トークという音声文字変換アプリケーションの活用によって、真治の気持ちが響に届き、響は文字を直接入力したり、真治の掌に文字を書いて伝えていましたが、響は真治の右手を握っていたので、白杖を左手に握らなければならなくなって、少し困った感じでした。他の介助者のときには、右手に白杖を握っていました。スマートフォンの活用は、テレビドラマ『ファイト・ソング』や『サイレント』でも取り上げられた、最新鋭のコミュニケーション手段です。本作ではさらに、点字を習得した真治がブレイルメモという機器で点字を記述している様子が窺えます。ただ、深水元基氏演じる哲也がわざわざ点字の学習教材をもってきてくれても、なかなか取りかかろうとしていなかったので、その段階から習得するまでの努力も並大抵ではないと思うので、その過程がかなり省略されているところにも、難がある気はします。夏木マリ氏演じる多恵が肢体不自由者であったことは、自分にも介助を必要としていながら、孫に心配をかけたくない、そして心配な孫の婚約者のことまで考えなければいけないのか、二人が頑張ることで自分のリハビリに頑張る気持ちに励みを受けたという心理の推移が描かれているようには思いました。高杉真宙氏は、前に『みえない目撃者』に出演していた印象が強いのですが、本作で演じる大輔は、響に異常に付き纏い、偽善的な言動を振り撒き、吃音でのコンプレックスを抱えていて、幼少期の響との接触もありながら、他の入所者との関係は乏しかったようでした。山口紗弥加氏演じる恵の心情も、複雑なものがあったようにみうけられましたが、大輔に比べると切替が早く、その二人の役回りは、面白おかしいものでした。菅原大吉氏演じる省吾は、朝ドラでの役回りと同様に憎まれ役に徹していました。山本舞香氏演じる沙織は、失意の真治を支える最も重要な役回りだったはずで、むしろ二人の仲を妨害するようなこともあり得たところ、控えめな描かれ方だったのが、もったいない気がしました。最後に教会の結婚式で出演していた牧師が手話を使っていて、ろうの当事者かもしれないし、出演していた子どもたちもろうの子が含まれていたのかもしれませんが、できるだけ主演に起用してほしいのが一番の願いです。