「ご近所物語」オットーという男 uzさんの映画レビュー(感想・評価)
ご近所物語
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最初のホームセンターの一件以外、オットーは嫌なヤツでも嫌われモノでもありません。
近所の住人からは挨拶もされるし、むしろ距離の近い人ほど嫌っていない。
首を吊る際にもスーツを着込み、(天井に穴は開けるが)床に新聞紙を敷き詰める。
寝るときは片側を律儀に空け、左手はちょうど誰かの手を握る位置に。
このあたりで冒頭からアッサリ善性をバラしてしまう点は好みが別れるかも。
派手な展開も意外な出来事もないTHE王道だが、バランスが素晴らしい。
適度なユーモアがご都合主義を相殺し、織り込まれる様々な要素も“添え物”に徹し、本筋を邪魔しない。
台詞で説明しすぎない脚本に、主演、助演から子役、猫(必見!)に至るまでの名演技。
シャツの衿ひとつにもキチンと時代を反映させ、“雪のないシーン”の使い方も単純ではあるが効果的。
ここまでしっかり纏まっている作品も逆に珍しい。
40手前、しかも独身の自分がオットーに感情移入して涙腺緩むくらいです。
不満点は、晩年の夫婦関係が見たかったのと、エンドロール後半のインスト曲がイマイチって所くらい。
マリソルのように無遠慮に、しかし愛情をもって柵を跨ぐ人間に支えられたことのある自分には、とても良い作品でした。
エンドロールの写真でオットーが娘たちに向ける、劇中一番の笑顔が沁みる。
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