私、オルガ・ヘプナロヴァーのレビュー・感想・評価
全26件中、21~26件目を表示
"Collegium Musicum"
確かに『レオン』でマチルダを演じたナタリー・ポートマンのようで『ナイト・オン・ザ・プラネット』のウィノナ・ライダーみたいにお気楽ではないがトラヴィス・ビックルの女性版に思えてしまう、本来なら自己中で胸糞悪くなる物語が演じたミハリナ・オルシャニスカの魅力とボブヘアが似合い過ぎるキュートさに魅了されながらもオルガのキャラクターには理解不能で彼女の人間性に難解で知的な物をゴチャ混ぜに面倒臭さを感じてしまう。
雨が降る中で洗濯物を外に干す、同じく雨の中でテントを張る、布団を掛けてあげる場面と印象的ながら、観ている側の準備が整わない呆気なく起きてしまう顛末に意表を突く展開にすらならない、最後は食卓を囲む家族が映し出され、名も無き自殺者にならない為の行動を選んだ彼女を救える術は何だったのだろう。
プリューゲルクナーベ
1973年、22歳の時にトラックで路面電車の停留所に故意に突っ込み翌年死刑となった女性オルガ・ヘプナロヴァーの話。
家族から孤立している様に感じ、精神安定剤を大量摂取し、と始まっていくけれど、いつの間にか入院し退院し、家を出てて一人暮らししたい?場面転換が急過ぎて、序盤は少々判り難いし、冒頭の件は13歳らしいけど…。
当時は多様性が受け入れられる様な世情ではなかったであろうし、承認欲求とか被害妄想とかそういうものを拗らせた統合失調症なんだろうけど、描かれ方を見るに狂っているという様にはあまり感じられず…まあ、やったことを考えたら狂っている訳だし、収監されてからは本格的にイってしまっていた様だけど。
自殺願望はずっとあった様だけれど、感情が無な訳でもなく、拗らせた思想を加速させていく感じでもなく、なんだか突然の犯行に感じてしまいどう受け止めるべきなのか難しく感じた。
オルガは今なお存在する
鬱病に悩まされ、父親からはDV、母親からは事務的な愛情をそれぞれ受けてきたオルガ・ヘプナロヴァーは、居場所を求めて自立し、自分が同性愛者である事を自覚する。しかし、旧ソ連の傀儡的存在だったチェコスロバキアで暮らす事は容易ではない。
もし彼女がチェコ以外の国で生まれていたら、もし彼女が生まれたのが社会的弱者への施しが70年代よりも手厚かった(完璧とはいえないものの)現代だったら、もし彼女の事を心から理解してくれる人物が1人でもいたら…そんな様々な“たられば”が重なっていたら、彼女はトラックで町の群衆に突っ込む事はしなかったのかもしれない。
華奢で猫背体型のオルガを演じたミハリナ・オルシャンスカは、そのヘアスタイルもあってか『レオン』の少女マチルダ(ナタリー・ポートマン)を彷彿とさせる。マチルダはレオンのような暗殺者になろうとするが、オルガは暗殺ではなく大量殺人への準備を進めていく。
「殺人をしたのは、今後このような事が起こらないようにするため」、そう言ってオルガは絞首刑に処された。しかし現実ではトラックの代わりに銃や刃物、毒ガスを使った無差別大量殺人が繰り返されている。彼女は今でも存在している。
劇伴を一切使わずにドキュメンタリータッチで捉える構成は、近作の『母の聖戦』同様、観客を主人公と同化させていく。つまりこれは、事情は十人十色あれど、人は誰しもオルガになる素養を持っているという事実を体感させる狙いもあるのだろう。
本作を日本配給したクレプスキュール・フィルムは、配給第1作『WANDA/ワンダ』(この作品も劇伴未使用)といい次作『ノベンバー』といい、観客に“問い”を与える作品ばかり。実に骨があるというかクセがありすぎる。
全26件中、21~26件目を表示