ワイルド・スピード ファイヤーブースト : 映画評論・批評
2023年5月22日更新
2023年5月19日よりTOHOシネマズ日比谷ほかにてロードショー
22年の歴史と新キャラを掛け合わせ、怒涛のテンションで走り抜ける!
シリーズ新作が公開されるたび、出演者たちのテンションに負けぬようフェスに集うくらいの心持ちで鑑賞に臨んでいる私だが、22年に渡る「ワイスピ」史で最も興奮したのはどれかと問われたら、間違いなく5作目を挙げる。
あの水上に伸びる一本道、一台の車がチェーンで括り付けた鋼鉄の金庫を振り回して敵をなぎ倒す姿は、カーアクションでありながらどこかチャンバラ十人斬りにも等しい気概を感じさせたものだ。それゆえ最新作が、まさかの5作目の別視点クライマックスから始動した時は「あっ!」と声を上げずにいられなかった。
今回、新たに登場するのは、かつてリオで倒した麻薬王レイエスの息子。ジェイソン・モモアが復讐心に燃えるエキセントリックな役をねっとりと怪演し、ドミニク(ビン・ディーゼル)の家族や仲間たちを地獄の果てまで追い詰める――と、ストーリー的には「追って、追われて」の一直線なので、あらすじを知らなくても助手席に乗り込む覚悟さえあれば大丈夫。それに、昔の敵が今日の仲間になるというお決まりの流れも、これだけシリーズを重ねると誰もが「でしょうね!」と笑顔で受け入れてしまうこと間違いなしだ。
一方、カーアクションになると、さすがジャンル最前線を担うだけあって、気合がほとばしる。前作で宇宙へと飛び出したその先の境地なんてあるのか!?と思っていたら、序盤のローマからもうテンションはMAX。バチカンに向けて転がりゆく巨大な球体爆弾を止めようと奮闘するくだりなど、ワイドに広がる地形を駆使したあの手この手のアイディアが満載で、スクリーンで見るにふさわしい濃密な場面に仕上がっている。かと思えば、クライマックスになると、ひたすら伸びゆく高速道路を駆使した圧巻の肉弾戦へとなだれ込み、相変わらず見応えは抜群だ。
そうそう、今回登板したルイ・ルテリエ監督といえば、22年前の「トランスポーター」製作中、ジェイソン・ステイサムと共に「ワイルド・スピード」を観て感化され、「僕らもこういう映画を目指そう!」と熱く語り合ったことで知られる。その二人がいま「ワイスピ」の地平に立っているのだから、人生は本当に何が起こるか予測不能である。
いよいよ最終章に突入するシリーズがどんな予想外の展開へと向かうのか。再び平和なバーベキュー場面は訪れるのか。こうなれば一蓮托生。アドレナリンを絶やさぬまま、最後までしっかりと見届けるほかない。
(牛津厚信)