「高橋一生の演技の幅とルーブルの臨場感を楽しむ」岸辺露伴 ルーヴルへ行く ニコさんの映画レビュー(感想・評価)
高橋一生の演技の幅とルーブルの臨場感を楽しむ
2020年、NHKでドラマ版第1期の配役を知った時、高橋一生が岸辺露伴?顔が似てないような?と浅はかな私は思った。
それが、始まってみればあのオーラ。彼の演技力と年季の入った原作愛で、実写露伴としての存在感十分。それだけでなく脚本やロケ地、美術からキャスティングに至るまで、制作陣のひとかたならぬ気合を感じるシリーズだ。
満を持して映画化された本作。大筋は原作通りだが、オリジナルエピソードもある。特に、原作では言葉での説明中心になっていた仁左右衛門と奈々瀬の生前の物語を、しっかり時間をかけて描いていたのが印象的だった。奈々瀬が若き露伴の前に現れた理由がより理解しやすくなっていて、いいアレンジだったと思う。
脚本を手がけた小林氏によると、ここは原作者の荒木氏が漫画を描いた時にページ数の問題があって描けなかった部分で、荒木氏の希望を踏まえながら書いたそうだ。
高橋一生は、いつもの貫禄の露伴ぶりだ。ドラマを3期見てきてつい慣れっこになっていたが、長尾謙杜の露伴が出てきた時に、露伴オーラの標高差のようなものをすごく感じてしまった(ファンの方、すみません)。若い頃の役なのでその分演技が違うものになるのはわかるが、印象が薄かった。同じ場面に白石加代子がいたので余計に食われてしまった感がある。それで回想パート中ちょっと眠くなってしまい、直後の高橋露伴とルーブルでバチっと目が覚めた。
高橋一生が仁左右衛門も演じたのは驚いたが、どちらもエネルギーがいりそうなふたつの役柄を、さらっと演じ分けているのはさすがだ。黒い樹液に染まってゆく仁左右衛門は鬼気迫るものがあった。
原作では登場しない泉京香が自然に物語に絡んで、好ましい化学反応を起こしている。彼女は露伴の世界観と現実世界の一般人の感覚をつないで、露伴がいる場の空気を適度に攪拌するサーキュレーターのような役目を果たしていて、実写露伴には必須の存在だ。飯豊まりえが、何もかも絶妙。
フランスロケは、期待よりちょっと尺が短い気もしたが、やはりスクリーン映えする。
2024年のオリンピック開催を前に、撮影規制が強化される直前だったそうだ。また、今年の初頭までロケをおこなっていたようだが、直後から現地では年金改革反対デモが激化している。ぎりぎりのタイミングで撮れた貴重なロケ映像だ。
大昔だが、ルーブル美術館に行ったことがある。時間帯にもよるかもしれないが館内は混んでいて、特にモナリザ前はかなりごった返していた。観光地のようなものなので仕方ないが、一度は静かな館内を歩いてみたいと誰もが思うことだろう。
人払いをした館内は、たまにEテレなどのアート系番組で見られることもあるが、やはり大きなスクリーンで見ると臨場感が増して、見ているだけで楽しかった。
地下倉庫での怪異のシーンは、先祖や肉親の姿におののく描写がほとんどキャストの演技だけで、彼らが見ている幻についての映像表現が少ないことと、原作の描写のグロテスクさがかなり薄められていたせいか、少々盛り上がりに欠けた。
こういった見せ場に、映画ならではの特別な、ドラマを凌駕する高揚感がない。もともとドラマの方のクオリティが高いので、出来が悪いということとは違うのかもしれないが、ドラマを超えた何かを期待し過ぎたのだろうか。
とはいえ、大画面で見るルーブルの美しさと、高橋一生による露伴と仁左右衛門の演じ分けは一見の価値あり。
失礼します
大変貴重なコメント、感謝します
原作にそういうコマの台詞があったのですね ということはこの"蜘蛛"は原作ファンの目配せということで腑に落ちました 新仮面ライダーもそうですが、目配せは大事だと思っております 勿論本作の自分の向き合う姿勢もそうですが、知らない人からすれば理解不能なところも、ご存じの方はそういう表現方法を描くということで擽られる事なのでしょう 私は決して否定派ではありませんので、理解出来れば敬服致します^^
高橋一生さんの仁左右衛門シークエンスは、確かに少なからず驚きましたね 妻の血筋なのだから、直接的には関係はないのだろうけど しかし、こちらのシークエンスの方が私的には高橋さん味がある演技だと感じました どこか浮世然とした演技よりもドロドロした人間模様の怨念を演じるところに役者冥利を享受したい心持ちが彼にはあるのではと勘ぐった次第です
失礼しました
今晩は
コメント有難うございます。
ルーブル美術館を二日間貸し切りですと!吃驚。
コロナ禍前に仕事の合間に行った時には、モナリザの絵の前は大混雑で(且つ、あの絵は非常に小さい。)隣に居たアメリカ人と話していた時に”too small!"と言ってましたから・・。
NHKの力かな。
故、谷口ジロー氏の名作「千年の翼、百年の夢」で描かれていた事が実現していたのですね。
今作でもチラッと映ったサモトラケのニケの様な彫像は観光客が多くても堪能しましたが。
今作は、荒木さんの世界観を知らなくても面白く鑑賞出来た作品でした。重ねてお礼を申し上げます。有難うございました。