劇場公開日 2023年4月7日

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「観る価値」ノック 終末の訪問者 TWDeraさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0観る価値

2023年4月10日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

M・ナイト・シャマラン、彼の作る映画はスリラーやホラーというジャンルで言い表すより「シャマラン映画」と表現する方がしっくりくるほど、彼特有の世界観があります。今回もやはりスリラー演出はお手の物ですし、お約束のカメオ出演も含めそれなりの見応えはあります。ただ含みのある言い方になってしまうのは、肝心のストーリーに対して難を感じるからです。ストレートに言えば、作品に面白さや映画化する意義が感じられないこと。要するに「観る価値」を問われると、積極的に推すことは出来ません。
この作品は原作があります。それはキリスト教がベースにあり、ある日突然やってくる終末を食い止めるため、ある家族の前に現れる訪問者とその家族の話です。私は原作未読ですし、キリスト教を含む宗教については全く知識も信仰もありません。ただ、映画などの作品から、聖書には少なからず残酷な表現や内容が含まれることは薄々ながら知っています。そして、この作品もまた不条理で残酷な決断を迫られるわけですが、私にはこの話の教訓が全く理解できません。利他的な行動をとることの意義は解るのですが、その犠牲として命を捧げることを選択、強要されることはむしろ生(せい)に対する冒とくに思えてしまい、スリルを楽しむよりも先に違和感が先立って、さらにはそんなことをエンタメにすることに趣味の悪さすら感じてしまいます。何なら、終盤の状況において物語内における人々に、信仰心を持ち続ける人がどれだけいるのか疑問だったり、何なら生き続ける意味を失う人が続出しそうで、いよいよ作品の意義が見えなくなります。
と、殆ど酷評のようになってしまいましたが、この作品において、まさに「救いの神」とも言えるのがウェン役の子役クリステン・ツイ。利発でキュートな彼女の存在感は大きく、いいキャスティングであり、今後の活躍も楽しみな俳優だと思います。

TWDera