「超人キャラの属性盛り過ぎは、ユニバース展開には悪手かも」THE WITCH 魔女 増殖 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)
超人キャラの属性盛り過ぎは、ユニバース展開には悪手かも
「The Witch 魔女」(2018)に続く〈魔女ユニバース〉の第2弾と銘打たれた本作では、前作に続きパク・フンジョンが監督・脚本を手がけている。遺伝子操作で最凶のアサシンを養成する“魔女プロジェクト”が長年にわたり極秘裏に行われているというのが共通の世界観で、超能力の要素がなければ、マット・デイモンが元CIA暗殺者を演じた「ボーン」シリーズのような設定だ。
実際、第1作は養成施設から脱出した幼少期までの記憶をなくした主人公ジャユンが、成長したのちテレビ出演したことで組織側から見つかり、送り込まれた刺客たちと闘う過程で自身のルーツの秘密に迫っていくという、「ボーン」シリーズに似た筋をたどる。ただし、「The Witch 魔女」には(未見の方への配慮でぼかして書くと)ストーリーの見え方がある段階でがらりと変わる驚きの仕掛けがあり、それがジャユンのキャラターをより一層強烈にする効果もあった。
だがこの仕掛けは、さすがに第2作では再利用できない。そこで本作では新たな少女を主人公に据え、施設から脱出したのち一般人の家族に保護され一緒に暮らすという序盤をなぞりつつ、少女を抹殺すべく複数の勢力がバトルロイヤルを繰り広げるという方向でエンタメ成分を増強した。
ただ、この少女、端的に言えば属性を盛り過ぎなのだ。遺伝子操作によって超人的なパワーを身につけ、怪力、高速移動、念力を繰り出して敵を次々に瞬殺。さらに刺されても被弾しても数秒で自然治癒する驚異の再生能力。「SEOBOK ソボク」(2021)のレビューにも「人類初のクローンで、永遠の命を持ち、おまけにテレキネシスの使い手なんて、属性盛り過ぎのキャラクター」と書いたが、韓国のSF風味のアクション映画に共通する傾向なのだろうか。
CGを駆使して大勢の超人キャラが入り乱れる超高速バトルを描くアクションシークエンスも、マーベル・シネマティック・ユニバースやDCエクステンデッド・ユニバースを手本に健闘しているが、魔女ユニバースでは闘う相手も遺伝子操作されて似たような能力を持つ者たちなのでバトルに多様性が乏しいのが難点。漫画の話に飛んで恐縮だが、「ジョジョの奇妙な冒険」が息の長い人気シリーズになった理由の1つは、「1人1能力(スタンド)」という大原則が確立され、個性的なキャラクターに紐づけられた戦闘スタイルに多様性が生まれたことだと思っている。魔女ユニバースも3作目以降を目指すなら、全部盛りの万能キャラを量産するのではなく、キャラごとに得意技を振り分けてタイマンやチーム戦のバラエティーを増やす方向に進化してほしい。