君たちはどう生きるかのレビュー・感想・評価
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宮崎駿の論功行賞
炎はループし飛びつづける
未来少年コナンに夢中になって以来、なんだかんだずーっと見続けてきた宮崎監督作品。「もののけ」以降は好き嫌い半々位、という程度のオタクですが、宮崎さん高畑さん(大塚康生さんも)の映像群はもうほぼ原風景というか。
開始1分で「あぁ、馴染んだやつを見ている」という沁み入るような感覚をおぼえ、前半のテンポも音も抑えた静かな展開、後半の「ハヤオてんこ盛り」スペクタクルも楽しみました。
面白かったという以上に、自分の内部に何か沸々と湧くものがありました。
鑑賞してから1年以上たち、レビューもいっぱい読んだのですが、特にマヒトの父母と叔母ナツコの関係性について言及してるものに当たらなかったので、今更ですが記しておきたいと思います。あくまで私見です。
亡くなった妻(夫)のきょうだいとの再婚は、現代の感覚からするとトンデモでも昔の日本にはよくあった風習、というのは色んな方が書かれてましたが、あと1つ、「姉妹なら姉のほうが先に結婚しなければならない」という暗黙のルールみたいなものも、昭和には普通にあったんですよね。
ヒサコとナツコ姉妹の場合も、縁談は当然先に長女にきて、しかしマヒトの父に「恋していた」のは妹のナツコのほうだったのでは、と推測しました。
ループする炎の少女であるヒサコは、「マヒトを産む」ために結婚、夫に対してさほど気持ちは無かったんじゃないかなぁ、となんとなく思いました。
清々しい炎のヒミちゃんが作中最も魅力的で、あまりにアッケラカンと晴れ晴れしてて、作中の時制がどうあれ、現世には拘りや未練が全く無さそうなんですよね。
マヒト父、別に悪い奴じゃないけど家父長野郎パパガイバーという感じがあんまり…だったので、少女のヒミちゃんがマヒト父を全く気にかけてない感じがむしろヨカッタ(笑)ですし、「子供に対する母親の愛情に、父親はあんま関係ない」と言い切られたようでもあります。(父と子にはまた全然別の関係性がある)
普段、1番見ないジャンルが「恋愛もの」でラブの機微には疎いほうですが、この映画に限っては、宮崎作品には割と珍しいエロスのある「父と後妻」と、思春期以前の姿で縦横無尽に飛び回る「母」があまりに対照的?で、そんなことを考えてみました。
わかりたいタイプの人には不親切な作品だったかと思いますが、全体通しての隙間やいびつさを私は楽しみました。クライマックスから着地が尻すぼみ気味なのもハヤオ通常運行と思いましたし まだ作りそう、とも。
二週目の鑑賞、ようやくですね
正解も不正解もない、自分で決めるだけ。経営の道を進むと決意した当時の自分を思い出した。
うーーん、微妙
ジブリは、もう純粋なエンタメ映画は作らないんだろうか…。
天空の城ラピュタや、風の谷のナウシカ、となりのトトロ…映画館のない田舎に住んでいた高校生まで、金曜ロードショーで観られるジブリ作品が私をワクワクさせてくれていたはずなのに…。
タイトルだけ借りてきただけで、名著である『君たちはどう生きるか』とは全く別物。かすりもしていない。
というか、この作品から「君たちはどう生きるか?」というメッセージは感じ取れない。
ボヤッとしたシーンが続き、哲学的というには登場人物の考えが浅く、監督の自己満足じゃないかな…という感想にしかならなかった。
昔ながらの手法で作られた映像は、さすがジブリと思う部分もあったけど、ストーリーは微妙。やっと話が動き出したかと思うと盛り上がりもなく終わってしまい、冒険のワクワクはない。
米津玄師の曲は良かったです。
悪くはないけど
前評判を聞いてたからある程度は覚悟してみたけど、やっぱりこういう現実的なストーリーが無くて、観る人に委ねる系の感じで進んでいくのね。
作品として悪くはないけど、忙しいのに時間をなんとか作って観たい!って感じではなかったかな。
今までで最高の作品
タイトルサギ
観客に「どう生きるか?」を問うているのではなく、宮崎駿氏がどう生きてるかを表現した作品
随所にこれってあの作品のあれをオマージュしてるんだろうなと思う所が数えきれないほど出てくる。
特にハウルを感じる演出が目についた。
上映数十分で急にアオサギが喋ったり、下の世界など出てきて情報過多になる。
結局、この広げ過ぎた風呂敷を畳まないままエンディングを迎える。
この作品は小説「君たちはどう生きるか」を題材にしているのではないということが、作中に小説「君たちはどう生きるか」が登場することで察することが出来る。
この作品は観客に「君たちはどう生きるか?」を問う作品ではなく、宮崎駿氏が小説「君たちはどう生きるか」を読んでどのような生き方・考え方をしているかという彼自身の人生を表現してる作品であると考えた方が納得がいく。
下の世界はスタジオジブリを表してるという説は納得が行った。
積み木の数が13や3日ごとに1個という意味深な数字を考えると
鈴木氏の「約125分の作品で完成までまだ3年はかかる」発言から約3年ごとに今まで作ってきて、13作品が出来たということ(どの作品を13作品に含めているのかは分からない)を表してる。
後継者問題やさまざまな内部のしがらみをインコで表現しているのではなかろうか。
本作、個人的に一番引っかかった点は、ヒミの存在。
キリコはキリコなのになぜヒサコはヒミなのか、なぜヒミだけが火の魔法を使えるのか。この2点が非常に気になった。
過去と未来、結果と原因が入れ替わるからヒサコが火で死んだことによってヒミは火を使えるみたいな考察があったが流石にそれはない。そんな設定はおもんなすぎる。
千と千尋同様に名前を奪うことに何かの意図がありそう。何かの契約?
まじないが解けた後のハウルの髪色とヒミの髪色が似てる(姉妹なのに髪の色が違う、眞人の髪色からも遺伝的にヒミの髪色だけおかしい)。
ハウルはカルシファーに心臓を与えて契約し魔法を使えるようになった。ヒミも何らかの契約を行ったのではないかと推察。(ヒミは火で死ぬことを伝えられても動じていないので将来火で死ぬことが確定している?)
大伯父のセリフ的にもヒミが後継者になるような雰囲気を全く感じないので死ぬのは既に確定っぽい。
ただ、名を奪われることと火で死ぬことの2つが条件の契約であるとは考えにくい。
失踪から1年後に笑顔で帰ってきたということは記憶が残っていることを示唆しているのでは?(眞人のような良い子を将来産めることを喜んでいる)
下の世界の何かを持ち帰ってる可能性がある。
(仮説)下の世界に来た直後、インコに襲われて致命傷を負った際に、石もしくは大伯父と契約(名前を奪うことを条件に)して火が使える石を心臓に埋め込まれて一命を取り留めた。
とかじゃないと辻褄が合わんな。
あとは、インコ、ペリカンも何かのメタファーだろうと思うが納得のいく考察が見つからない。
大衆のメタファーであるという結果論からの紐づけを見かけるが、インコに大衆のイメージがない。誰かが端を発した言葉から口々に真似た(ような)言葉を無責任に繰り返すという皮肉は込められてはいるだろうが。
ペリカンは自分が生きるために無抵抗のワラワラを虐殺するが、これも何かに例えられているはず。ペリカンたちはテロリストを表現してるというのも見かけたが、老ペリカンの発言からテロリズムには該当しないと思われる。ただ生き残るのための戦争という印象。当時の第二次世界大戦とも違う理由での戦争。
「火は怖くない」を京アニに宛てたメッセージとするのなら私はあまりに無神経だなと思ってしまう。「外野から何をふざけたことを言ってるのか?」と。これこそまさに平和ボケという感じがする。
戦時中の上に、別世界の話に飛ぶから正直よく分からんという感想が一番しっくりくる。
現代をベースにしていたら分かりやすかったのかもしれん。
とはいえ、真相は宮崎駿氏の中ってのは相変わらずジブリっぽい感じはする。
戦時中の話なのに冒頭しか戦争の描写が出てこないから見やすい作品。
どんな作品かと言えば"宮崎駿氏の自己表現"に尽きるかな。
ジブリが好き
僕たちはどう読み解くか
キービジュアルと公開日の告知以外、予告編なし、ストーリー情報なし、キャスト発表なし、パンフレットの販売すら公開日当日ではなく後日発売という徹底した情報のシャットアウトぶり。
“ジブリ”“宮﨑駿”という一大ブランドだからこそ成せる力技と言えるし、プロデューサーの鈴木敏夫氏のこの強気な姿勢に非常に好感が持てたので、初日の昼IMAX版上映回にて鑑賞。
そんな一切の情報が与えられていない状態で本作を鑑賞する中で、最も理解の手助けとなったのは、監督の前作『風立ちぬ』だった。あちらで二郎とカプローニが会話する場所が、ダンテの「神曲」に代表される、現世とあの世の中間“煉獄”でのシーンであると考察されているが、今作はまさしく、宮﨑駿版「神曲」だったのではないかと思う。
作中でペリカンが語るように、あそこは“地獄”であり、あの世なのだ。
大雑把なあらすじとしては、舞台は第二次大戦中の日本。空襲によって母を喪った主人公の眞人は、父と共に東京を離れ、田舎町で父の再婚相手で亡き母の妹でもある継母と生活する事に。そこで出会った不思議なアオサギによって、眞人は継母を救う為に地獄巡りの旅へと誘われる。
物語のメインとなるのは、この継母を救う為の眞人の地獄巡りと、そこで自分の中の悪意、この世の悪意と向き合い、最後の選択を迫られるというものだが、途中、複数の世界へ通じる無数の扉が登場するシーンがある。
あれは、昨今流行りの多元宇宙論(マルチバース)ではとも思える。我々が空想する“もしもの世界”には、この世ではなくあの世で繋がっているのだと捉えると面白い。
作中、可愛らしい見た目の“わらわら”というキャラクターが登場するが、あの世の住人キリコは、わらわら達が「(これから人間として)生まれるんだよ」と語る。
もしかすると、Aという世界で生まれた人間が死後わらわらとなり、Bという世界で新たに生まれる事もあるかもしれない。輪廻転生は必ずしも同一の世界のみで起こるのではなく、よく都市伝説等で語られる前世の記憶とは、違う世界での前世かもしれないとまで考えを巡らせるのも楽しい。
わらわらが無数に空へと浮かび上がり、生命の二重螺旋構造的な螺旋状で上昇していく様はメタファーとして分かりやすいが、もう一つ、わらわらが白く可愛らしい見た目をしている点は、「生命は生まれた時点では罪も悪意もなき無垢なる存在である」という監督の性善説の肯定とも受け取れる。
また、あの世にて行方不明となった曾祖父が、積み木によって世界のバランスを保つという役割を担っていたが、あの石で出来た積み木は、我々の現実世界の象徴だろう。積み木=罪木なのだ。
実際問題として、この世界には大小様々な悪意が満ち溢れている。世界的に見れば、今も戦争、暴動、略奪があり、日本だけで見ても若年層の自殺率の高さ、SNSでの誹謗中傷、一部権力者や雇用者による人民の搾取と、誰しも1つは心当たりのある悪意があるだろう。眞人の頭部の傷の嘘や、彼を村八分にしようとした学生達だってそうだ。誰しも大なり小なりの悪意を孕んで生きている。
そんな悪意に満ち溢れ、崩壊しかかっている世界を唯一救う術が、穢れなき石だけの積み木で、新たに世界を構築する事だ。
しかし、眞人はそれを拒む。自らも頭部の傷を偽った悪意があり、だからこそ、自分は元居た悪意ある世界へ継母と共に帰っていくと。
物語だからといって、安易に理想郷を組み上げたりはしない監督の意思が、個人的には嬉しい。なぜなら、我々はこの悪意に満ちた世界で、それでも今日を生きなければならないのだから。だからこそ、ここでタイトルの『君たちはどう生きるか』に繋がるのだと思う。
あまりにもシンプルな、しかし決して避けては通れない問題を、監督は引退宣言を撤回してまで、(恐らく最後に)我々に問い掛けてきたのだ。
勿論、アニメーション表現の豊かさは健在だ。冒頭の空襲シーンで、眞人が階段を四つん這いで駆け上がる描写、母の入院する病院まで群衆の中を疾走する描写と、開始早々のジブリ節全開なアニメーション表現に早くも「あぁ、ジブリ作品観てる!」とテンションが上がる。
避難先の屋敷で、父の持ってきた豪華な手土産の入った荷物に群がる、まるでまっくろくろすけを彷彿とさせるような動きの個性的な老女のお手伝いさん達。どこかからタバコを調達して吸う老人お手伝いさんと、宮崎作品で度々目にしてきた老人描写の集大成とも言える演出の数々も光る。
その他、恐らく全て手書きによる人物表現、日本アニメーション技術の最高峰かつ集大成と言わんばかりの表現の数々は枚挙に暇がない。
…とはいえ、では作品としてストーリーが面白いのかと問われると、面白くはない。必要最低限のワードこそ出してはくれるが、それだけでは理解出来ない箇所や、登場人物の心境の変化等に唐突感が否めないシーンも少なくはないし、抽象的だが“行きて帰る”というお得意の王道冒険ストーリーなのに終始ワクワクしなかったのだ。メッセージ性を込みにしても、宮﨑駿監督作ワーストと言ってもいいし、個人的には、前作の『風立ちぬ』で止めておいてほしかったというのが正直な気持ちである。
因みに、チケット販売開始から半日以上経っていたにも関わらず、私が予約した時点では先客はたったの3人、当日も半分にも満たない疎らな客入り。土日の集客率はまだ分からないが、Twitterを見る限りでは、あまりの情報のシャットアウトぶりに、そもそも今日が公開日である事を気付いていない人も散見され、やはり多少の宣伝は必要だったのではと思わなくもない(笑)
とはいえ、事前情報一切なしの状態で映画を観るという貴重な経験を出来た事は良かった。別作品を鑑賞しに行った際の予告やチラシ、SNSでの告知や映画アカウント等、何かしらの情報は仕入れられてしまう現代において、このような経験は最早2度と出来ないのではとすら思うからだ。
何より、恐らくこれが本当に最後の監督作になるであろう宮﨑駿監督、本当にお疲れ様でした!
<鑑賞してほしい作品でした。>
・まず書籍「君たちはどう生きるか」のアニメでないのだと気づきました。原作者が違うので当然のことですけれど、まぎらわしいタイトルの付け方だと思いました。
・本作では、生き方において、自分で考えて行動することの大切さを伝えたかったのかなと思いました。主人公の真人(まひと)が自分で自分を傷つけ、その傷を学校のせいにしたという"うそ"をついたことがありました。けれども、自分をその名にふさわしくない者と恥じ、そのときの弱虫行動をしっかり悔いて生きているというところなどに、感動しました。
・(白い積み木で表現されておりましたが)地球のバランスがくずれ始めており、これから君たち?に世界を支えて一日でも長く安定させていってほしいという思いが表現されていたと感じました。
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