劇場公開日 2023年7月14日

「暗喩とか一旦置いといて」君たちはどう生きるか chiliさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0 暗喩とか一旦置いといて

2025年9月24日
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鑑賞方法:TV地上波

映画館で見逃し、地上波放送を録画も中々視聴せず観たくなったタイミングで観よう、と思っていたらとても中途半端な時期に。誰の目にも触れないレビューかもしれません笑
そしてあらゆる考察が出揃っていて、なるほどと思うことばかりなので、良いも悪いも言うべきことは見つかりません。
なので、個人的に心が動いた部分だけを、メモとして。

居場所をうまく探し出せない、真人の細やかな表情、仕草、説明ができない感情、それが冒頭にぎゅっと詰まっていて、なんとか彼が楽になれることを、願っていました。父も、義母も、愛情を注いでいるのは間違いないけどそれにうまく馴染めない、反発しているわけではない、でもそれに力を抜いて甘える自分にはなれない、ほんとのおかあさんを忘れるわけにはいかない、まだ子供なのに子供でいるわけにいかないと自分を律している姿、台詞にはないけれどここまで表すことができるのは、凄いことだと思います。お腹に触れさせられてギョッとした顔、おそらくは抱いてはいけない嫌悪感に対する自己嫌悪、2、3秒で表現できるのはジブリ映像作品ならでは。
夏子さんに心を許したい気持ちは、産屋で激しく拒否されるシーンに逆説的に表現されています。自分が拒否しているつもりが、相手からされたときの衝撃。それを恐れていた自分の無意識が見せたものなのではないでしょうか。

実は先にジョン・コナリー「失われたものたちの本」を読んでいました。クレジットにも、影響を受けた本として流れてきますが、ストーリー的にも設定的にもこっちのほうが原作なんじゃないかと思うくらい似ています。主人公の苦しみの種類が同じなんです。
「居場所」を探す物語、どちらも大円団ということもなく、これからも時々苦しいことがあるだろうな、でもちょっとだけ解決したかな、という塩梅まで似ています。ファンタジーパートのモンスター?が違うだけ。

映像に関しては、ちょっと残念だっかな‥海の表現は千と千尋のほうがとびぬけて素晴らしいし、パンもラピュタのほうが美味しそう。家や塔はさすが!と思いました。
音が良かったです。アオサギの屋根を踏む音、重たそうな翼の音、キリコさんちの古い船の庭の足音。

説明しなくては物語がまとまらないのかもしれませんが、大叔父さんのシーンはまるっといらないかも。気配だけでもよかったのかな‥説教くさいと感じると反発してしまう性分なので笑‥
成り立ちや意味などわからなくてもいい、でも行ったことがある気がする世界、知っているような気がする世界、いつか忘れてしまう世界、わたしがジブリ作品からいつも受け取る感覚です。

chili