「宮崎駿監督が粉骨砕身して本気で遊ぶフルアニメ!」君たちはどう生きるか かせさんさんの映画レビュー(感想・評価)
宮崎駿監督が粉骨砕身して本気で遊ぶフルアニメ!
原作、脚本、監督は宮崎駿。
ゴールデングローブ賞アニメーション作品賞受賞。
アカデミー賞長編アニメ映画賞受賞。
【ストーリー】
時は太平洋戦争末期、空襲で母が亡くなり、田舎に疎開した少年眞人は、そこで奇妙な屋敷に住むことになる。
屋敷には、好奇心を隠しもしない妖怪のような老婆が8人、使用人として住み込んでいた。
家では新たな継母となった叔母・夏子とギクシャクし、学校へゆけば皆と毛色の違うと集団で乱暴を受ける。
苛立つ眞人は、大きな石を拾い、それで自分のコメカミを傷つける。
学校へねじ込むと息巻く父親にも、それをやめさせようとする継母に何も話さず、眞人はただベッドで寝込む。
何よりも眞人を苛立たせたのは、まるでこちらを監視するかのように姿を現しては嫌な鳴き声を聴かせる、一羽のアオサギだった。
夢うつつに眞人はそのアオサギと対決するが、そいつはまるで人間のように言葉を巧みに話し、眞人を誘い込んで手の木刀を粉々にしてしまう。
眞人にまとわりつく手強いアオサギを、手製の弓と矢でどうにか追い払うも、夏子が森に姿を消してしまう。
眞人は夏子を追いかけて、大叔父が遺したという塔に入ってゆくが、そこは魔術のような世界だった。
監督自身の記憶、思い出、心象風景、トラウマをごった煮にした塔の世界を、主人公・眞人が次々と冒険します。
時に乗り越えられないような大きな危険も、そこは宮崎主人公、苦痛を顧みずに突破をはかる益荒男ぶりは皆の知るところ。
クライマックスに提示された選択にも、悩むそぶりなど見せず、自分の弱さ愚かしさを受け入れます。
……というような見れば誰でも分かる内容は置いといて、出色なのはアニメーションです。
動画のモーションがツボを押さえていてまたいいのなんの。
流石です、宮崎監督。
しかもフルアニメ!
実はジブリ作品は、ここぞという場面以外の日常シーンはコマ落とし、つまりリミテッドアニメであることが多いのですが、この映画は全編フルアニメーションを実現しています。
手描きにこだわる宮崎駿監督ですから、人物のアニメは中割りソフト(という物があるんです)を使っていないのではないかと思われます。
これはもう非常に手間と時間とお金のかかる制作方法で、かつて大友克洋が監督したAKIRAが、それで11億円もかかったという恐ろしい前例も。
背景の精緻なる美しさも目を見張りますが、塔の世界が崩壊するシーンは背景動画ではなくCGを使っていて、これまた猛烈に手間のかかるクオリティ。
ラピュタもここまでやりたかったんだろうなあ、と過去作の無念や妄念をこれでもかと手をかけて鎮魂しています。
ジブリでCGといえば『もののけ姫』のイノシシ、乙事主の身体を侵したもの凄い数のワーム形タタリ神が有名ですけれど、あれを専属でやっていたアニメーターさんは、2年間もあの冒頭シーンに費やしたとか。
監督ほんと無茶苦茶させるよなあ……。
タイトルの説教くささと「宮崎さん本物の左◯だから」と某アニメ監督から言われるような、私生活における思想的言動の多さ、パワハラぶりも伝えられる宮崎駿。
これはもう人生最後に言いたい事全部行ってやる系の、全力かつ渾身かつ粉骨砕身の老骨滅却の大パノラマお説教作品に違いない、自分のような田夫野人(でんぶやじん)は、心砕けるまで説教タイムされるのだろうか……ああ、今から自分はお金を出して説教されにゆくのか……と悲しい気持で劇場に向かいましたが、ご安心ください、上級のエンタメです。
よかった。
隣に座った母子も楽しんでいる様子でしたので、お子様を連れていっても、きっと大丈夫ですよ。
スタッフロールにはなかよしこよし庵野秀明のいるカラーなどの制作スタジオの中に、しれっとスタジオ地図も混ざっていました。
宮崎監督、細田守監督に、ちゃんとごめんなさいしましたか?
ちゃんとしないと、没後に非道が伝えられて、ジャニー宮崎とか言われちゃいますよ(言いすぎ!)。
いやあ、面白かったですよ。
尻込みしましたが、見てよかった。
二の足を踏んでいる方はぜひぜひどうぞ。
コメントありがとうございました!
正直、そこまで面白いとは…という作品でしたが、やはり巨匠・宮﨑駿の評価に、またハクがつきました。日本らしい繊細で美しい映像、外国人は大好きです。
かせさん、魔女宅ジワジワ愛のコメントありがとうございます。
本作のパンフレットも購入後にポカ~ンとなりましたが、早速ジワジワ愛が育ってきている今日この頃です。
欲求のようなものがあるが解消方法を持たない年代があり、その子供達の内面世界を深く理解しているんだと思います。宮﨑駿や高畑勲は…。やはり、対象は子供の作品だと思います。個人的には、中学1年生男子のヴィヴィッドな感想が面白かったです。女性=お母さんの期間の子供はキモ可愛いですね(笑)
私はウィズ子供五人とでしたけど、中学生の男女のディスカスが凄かったですよ。子供も全然大丈夫ですよ。大人の理解力によりますけど…目指す方角くらい判るとより良いと思うけどね。
かせさんさん、コメントをいただきましてありがとうございました。
返事が遅くなりまして大変申し訳ありませんでした。
パンフレット出回っているそうですね(しっかりと確認していません、スミマセン)
ネットでいろいろな検証がおこなわれており『賛否両論』とか『遺言』とかいろいろ言われていますが、はっきり言って「どうでもいいことだ」と最近思います。
それは観客が「カントク、今までに観たこともない映画を一丁つくってくださいな!」というご期待に宮﨑監督が答えて、「どうだこれは、はっはっはっ」と出されたものを観客が「こんな知らない話にはついてゆけない」というクリエイター殺しを世間に広く流布しているんじゃあないのかなぁと感じるからです。
これを機に『風立ちぬ』のパンフレットを出したら一緒にスポーツ報知の公開特別号が出てきました。ユーミンのインタビューを含めて32ページの大特集でした。auやローソンとのコラボやグッズもたくさん出ていました。
これを見るに鈴木プロデューサーがこれらの調整にお疲れになって、今回の広報規制につながったのかなぁとも思いました。
ともあれ、もう一回観てパンフレットを買いにいきます。
映画は映画館で観てこそ華なのですから。
それではまた、かせさんさんと何処かで巡り会えますように!
かせさんコメントありがとうございました。
アニメ業界にお詳しいですね。凄いです。知らなかった事がいっぱい。もしかして業界の方ですか?
この映画は賛否両論ありますが、私は楽しめました。
ただパンフレットが・・・
一種のリドルストーリーかもしれません。
かせさん、こんにちは。共感とコメントありがとうございます。最近の邦画で(アニメを除く)面白かったなぁ、良かったなぁ、と思ったもの少ないし、この後年末まで観たいなぁ、と思うものも少ない。一方、アニメは観たいなぁ、と思うものが数本有るので今年後半はアニメに偏りそうです。
子供の頃はアニメ映画好きでしたが、その後実写映画ばかり観るようになって(年代的にリアルタイムの『ガンダム』も『エヴァンゲリオン』も一本も観てません)(宮崎駿作品だけはまあまあ観てましたが)アニメ映画は一段低いものと見なしていた私に、日本のアニメ映画の素晴らしさを再認識させてくれたのは実はフランス人の友達という皮肉さ、です😅
ありがとうございました。
自分は作品への愛を謳いあげるためにここに文章をあげていて、そもそもレビューというものは作品を楽しんだのなら贔屓の引き倒しでも構わないと思っています。
自分の隣に座った子たちが「僕ね、このアニメ好き」と言った場面を見て、ああ子供も楽しめる作品なのだと感じたのも事実。
その論で語るならば、この映画を子どもたちに酷い内容と書いたらんまさんは、彼らの鑑賞機会を奪いかねなかったとも言えます。
子供も十分楽しめるから大丈夫、などと書かれているが、客観性の無い評価に過ぎず、言い過ぎだろう。少なくとも私の周りでは、真逆の状況であった。よくある宮崎ファンによる贔屓の引き倒しかな。。
かせさんさんコメントありがとうございます。本作は最近の宮崎作品と比較していくぶん娯楽性が上がったかわりに監督の魂の説教、メッセージ性が少し薄かったような気がします。タイトルと内容の結び付きがやや弱かったのもその影響でしょうか。
しかしながら娯楽性に溢れた初期のジブリ作品が好きな私としては少しでも娯楽に振ってくれた事を嬉しく思えた作品でした☺️
かせさん様
共感&コメントありがとうございます。アニメに精通されたレビューに感心しました。素人からみてもやはり素晴らしい映像は感動を与えてくれること、改めて実感した次第です。
宮崎駿はアーティストだと思いますね。今の世界を憂えて本作に自分の思いを込めて、いや念をかけて削り出したのではないかと感じました。以前のように観客に夢を与えるようなものじゃなく彼自身のメッセージが強く全面に出ているのはそのせいだと思った次第です。だから、彼がやり尽くしたとしたらこれが遺作になると思いました。
かせさんさん、共感&コメントありがとうございます。
多くの方のレビューのおかげで、この作品の印象が少しずつ変わってきました。といってもあいかわらず理解できてないのですが…。今週末販売のパンフレットで復習しようと思っています。
こんばんは❗️
パンダコパンダ、残念ながら見たことがないのです。
かせさんさんの色々と詳しいレビューを拝読してたら、4回目にチャレンジしたくなりました。
解釈や面白かったかどうかは人それぞれですが、宮﨑駿監督が何をどう考えてこの映画を作ったのか、満足してるのか、やり損なった点があるのかないのか。
それらを考えるだけでも大いに楽しめる映画だと、私は思います。
かせさん様、
コメントありがとうございました!
まさかの
鳥ルートエンドでしたねw
しかし、眞人はアオサギ君を忘れてしまうんでしょうか。。
そして!
アニメーションについてとてもお詳しいのですね!
アニメーターさんの事やCGについて、他の作品の裏話(?)など、大変興味深く、レビュー拝読させて頂きました!
やはり[通]の方は1回観ただけでここまで読み解けるのですね!
すごいです。
11日からパンフも発売になりますね!
私はパンフはお財布事情により買えないのですがw
本作は気になります!鑑賞の時間はとれなさそうなので、とりあえずパンフだけ買いに行く予定です!
が、、
かせさんさんのレビュー拝読したら3回目観たくなってます!
今晩は。
今作は多様な見方が出来る作品ですが、宮崎監督の子供達が幼かった頃に観た多数の作品から発信されていた人間性肯定感及び、世の不思議を肯定する思想及び未来に希望を持つ大切さに満ちた映画だと思いながら鑑賞しましたよ。では。
かせさん、コメントありがとうございます。
(↑ 呼び捨てになってたらすいません)
>またしれっと鈴木敏夫おじいちゃんのお部屋を訪ねて、
>「やあ新しいアニメ考えたんだけど」とマシンガントークしそう
もしまた宮崎監督の新作が作られるのならば
「えー」とか言いながら
絶対に観に行くと思います。 …きっと。
最後の作品まで見届けたいですから。・_・ハイ
共感&コメントありがとうございました
レビュー拝見する限り、かなりのアニメ通だとお察し申し上げます
解説の件もさることながら、業界の実情も仄めかす差込に、ニヤッと思いました^^
只々消費し尽くすだけの映像表現、その虚しさの中で、御大はどう願っているのか、でも願っても叶うことでもないでしょうし。。。 今作のターゲットは思うに、制作側、業界、そしてクリエーターの卵や、その素地を持つ子供達へのメッセージかなと思っております
私はあくまで消費者側のみに過ぎませんので、蚊帳の外です(苦笑
コメントありがとうございました!
宮崎アニメは実のところ、ハウル以降の主人公はみんな、あまり共感性は高くないんですよね(笑)。個人的には、二郎さんは絵にかいたような電車&飛行機好きのアスペで、とても愛すべきキャラだと思いましたが。
共感&コメントありがとうございます。
仰る様に、弱さを知り、それを素直に認めることができるのが、
本当に強い人だと思います。
本作の主人公・眞人は宮崎監督がモデルだと思います。
俺は、ここまでやった。では、観客の皆さん=君たちは、この混とんとした現代社会をどう生きるのか、よく考えて行動するんだよ。という宮崎監督の声が聞こえてきそうでした。
では、また共感作で。
ー以上ー
共感、コメントありがとうございます。
他の方のレビュー見てると、ジブリや宮崎駿監督の私生活まで詳しい方が多くてびっくりです。
そんな人たちにとって刺さるものが有るのはわかります。
教養が無いとコメントで指摘され、消えた方がいましたが、気に障ったようで、レビュー書くのもなかなか難しいですね。
引き続きよろしくお願いします。
こんばんは。コメントありがとうございました。
人の動きはからだの傾きによって微妙にバランスをかえるところなど細部まで目をみはるようでしたね👏
監督の思いは、こんこんと湧く泉のようでそこから広がる世界は広がる海に向かって自由に強弱をつけ流れる生き生きとした川のようでした。
かせさん、こんにちは。共感&コメントありがとうございます。
「君たちはどう生きるか」ヒジョーに宮崎駿監督らしい作品だったと思います!!宮崎駿監督も我が強いみたいだし、でも天才って呼ばれる人は大体そうですよね