「宮崎駿と司馬遼太郎が日本人に遺したもの」君たちはどう生きるか キッドマンさんの映画レビュー(感想・評価)
宮崎駿と司馬遼太郎が日本人に遺したもの
最後の作品にして紛れもなく傑作でしょう。
賛否両論渦巻いていますが。
私は熱心なジブリファンという訳ではないですが、ジブリの世界観は日本人なら誰にでも身体感覚として持っているような気がします。
なので誰でも語る資格があるということでご容赦ください 笑
まず過去のジブリ作品が走馬灯のように思い起こされるという不思議な感覚に陥ります。
比類なき創作の才能。
宮崎駿さんが幼少の時に想像を膨らませていた世界が、大人になっても、ビジネスで成功しても、年老いても尚、燃え続けていて、それが深化し続けてていたのだと思いました。
そしてやはりこのタイトル。
吉野源三郎さんの本が出版されたのは1937年。
ウクライナで戦争が起き、タモリさんが戦争前夜と表現した混迷を増す現在において、このタイトルをつけた意図を想像せずにはいられません。
そうしたことを考えると引退作品であった『風立ちぬ』はリアル過ぎたのかもしれません。
最後はファンタジーとして、宮崎駿の世界観を貫徹したかった。
作品のテーマやメタファーについての考察はマニアの鋭い人がたくさん書いていらっしゃいます(中には舌を巻くほどの深いものも!)ので、私は別の切り口で考えたことを纏めてみます。
宮崎駿さんは司馬遼太郎さんに重なるところが多いなと感じています。
どちらも創作の名手。
一方は小説で、一方はアニメで。
司馬遼太郎さんも幼少の頃は図書館で本を読んでは想像の世界にのめり込んでいたようです。
司馬遼太郎さんの処女小説は『ペルシャの幻術師』、伝奇小説というジャンルでファンタジーです。
そして両人とも現代日本とその未来を憂えてたと思います。
司馬遼太郎さんは子供たちに唯一書き下ろしの随筆を残しています。
『二十一世紀を生きる君たちへ』
そして
『君たちはどう生きるか』
私には小説とアニメの世界で類稀なる才能を持った両巨人の二つの作品が、今そしてこれからを生きる日本人に残した遺作として重なって映るのです。