「多彩なメタファーを含みながら美しくファンタジックに進行する深みのある作品。」君たちはどう生きるか atsuhitoさんの映画レビュー(感想・評価)
多彩なメタファーを含みながら美しくファンタジックに進行する深みのある作品。
宣伝を派手にしないビッグネームの新作だったので驚きました。きっとシンプルな冒険物語として楽しく観るだけの作品では恐らくないのだろうな、いやむしろ、そうであって欲しいな…!と思いながら劇場に足を運びました。
色んなメタファーを含んだままファンタジックに展開していく作品で、それぞれが何の暗喩なのかを考えながら、結局それと同時に映像の美しさや新しい表現に引き込まれるように観ていました。
それぞれの登場人物が何の暗喩なのかを紐解いて整理すれば、この映画に込められた宮崎駿監督の思いがよりくっきりみえてきそうな気がして、その時にまたもうひとつグッとくるんだろうなというのが鑑賞直後の今の気持ちです。
そもそも死へと向かう自分達の並行世界として生へ向かう世界が存在しているという死生観自体がファンタジックで素敵だなと思いました。直人と母が世界線を越えて接触し、再び別のドアへと旅立つシーンが、個人的にすごく感動しました。そんな風な事があったら、そんな仕組みでこの世界ができていたら、とても素敵だなぁと。
なんだか最近、すっかりお金、ステータス、欲で動く大人の世界についつい違和感を覚えなくなってしまっていた、自分もあのインコ達のようだなぁと。でもあのインコ達、悪意を感じないんですよね。
神は神の意図を持ってこの世界を作り、バランスを保っている。一方でそれに問いかけを投げかけながら作り上げてきたこれまでの人間社会。その構図が限界を迎えつつあり大きく変革の時を迎えているいま、僕たちは何を考え、どんなシステムを作り上げていくべきなのか。個人としてどのように生きていくべきなのか。そんな問題提起をあらためて受けたような気持ちになりました。
一筋の思いが裏に確固として通ったようなジブリ作品を観ることが出来た!という気持ち。色んなレビューを見てみたいです。