「『一切事前情報のない映画』を見れるだけで価値がある」君たちはどう生きるか 太郎太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
『一切事前情報のない映画』を見れるだけで価値がある
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このレビューのタイトルの通り、事前情報が全く無い状態で映画を見れるというその体験そのものに非常に価値があると私は思う。
昨今は映画を見に行くかどうかを、事前に放送されるCMやネットの口コミでしか判断できない人間だらけになってしまった。そういった世相の中でこういった広告戦略を行ったことを自分はとても評価したい。
また、「ストーリーが難解」という批判とともに発狂したかのように低評価の嵐だが、そんなシンエヴァやピングドラムのように訳が分からないと称されるような内容ではない。ストーリーの軸はいたってシンプルで『新しい母を受け入れる』ことであり、『どう生きるか』なのだ。
そして宮崎駿の映像技術は健在である。多くをセリフで語らずに"画"で語る構成は見事と言わざるを得ない。世界観も相変わらず素晴らしく、キャラクターも非常に魅力的でコミカルだ。
『何故義母は異世界の産屋へ行く必要があったのか?』『序盤の門は何だったのか?』『積み木とはなんなのか?』『あの世界は何だったのか?』非常に謎が多いように見えるが、見終わったあとにじっくり考えればあなたの解釈が見つかるはず。これこそが文学であり芸術であり映画なのだ。
しかし、ある意味この芸術性が反動として低評価を産んでしまっている。
昨今の過剰なまでにセリフで説明し、アクションシーンでは派手なエフェクトを付けて、テンポの良い()展開で進んでいくそういった幼稚なアニメばかり見ている現代日本人にはこの作品は早すぎた。
ある程度の教養と知性を持っていなければこの作品は楽しめないだろう。
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