「「便所」と「トイレ」「坊ちゃん」と「若旦那」」君たちはどう生きるか seventh-heavenさんの映画レビュー(感想・評価)
「便所」と「トイレ」「坊ちゃん」と「若旦那」
これは下手にCMを打つと、思っていたのと違っていたという批判を呼んで、下手すれば大コケになるかもしれない映画だったように思う。予備知識なしで観させたからこそ、文句が言えない、感じる人は感じる、でも大半の人は苦笑いで劇場を出る、それくらいで済んだ映画だったように思う。
眞人は冒頭、熱に浮かされながら「どこにいくんですか」と聞かれて「便所」と答えて部屋を出る。しかし、下の世界でキリコには「トイレはどこですか」と尋ねている。
これは、上の世界は日本の戦中であることを表していて、下の世界は洋風な、現代に近しい時代である事を示しているのではないかと感じた。
また、キリコは森の中に入る前まで眞人の事を「坊ちゃん」と呼んでいるが、途中洞窟を抜けた先で急に「若旦那!」と呼んだ。ここの時点ですでに見た目に変化はなくとも時空の歪みがあり、むしろ最初の世界より先の、眞人が若旦那になる未来のキリコがそう呼んだのかもしれない…
どうにも夏子に、奥底に隠しきれない女らしい嫌らしさを眞人が感じてしまっている表現が上手く、それを強調された口紅や、黒く長い髪を振り乱す表現で伝えるあたり、高度なテクニックだなと感じた。対比で自分の母親は美しい少女の姿のままで、高潔で髪をきちんと結い、手作りの料理でもてなし、死因となった火さえも自分の力としていく芯の強さや優しさを表現している。
それにしても、宮崎駿監督はそんなに鳥がお嫌い?フンや細かい毛がフワフワと浮くあの感じ、匂いまでこちらに漂ってきそうで途中鼻を覆いたくなるような表現が素晴らしかった。
長編大作の夢を見た後のような、どっと疲れた、しかしあんまり覚えてない、場面場面は綺麗だったけど…。そんな印象を残した映画でした。