「地球儀」君たちはどう生きるか ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
地球儀
スタジオジブリ作品を劇場で鑑賞するのは初めてです。毎年金ローでやっているので、テレビでしか見たことがないので、こうやって大スクリーンで観れることに感謝したいです。
中々にクセの強い…というかとにかくやりたい事を詰め込んだ遊び心の強い作品だなと思いました。すごい振り回されましたが、好きな感じの作風でしたし、アニメーションのクオリティはジブリ+αの進化を果たしていてとても良かったなと思いました。
物語は主人公の眞人が疎開先で不思議な塔に出くわし、そこにいた青鷺に導かれて様々な世界へ行く…というジブリらしいファンタジー作品に仕上がっていました。「風立ちぬ」に続いて戦争の色が濃く描かれる時代を舞台にしていますが、戦争が物語に強く関わってきませんでした。
戦争の是非を問う作品なのかなと思ったら、特段そういうわけではなく、生命の誕生を描くのかな?と思いきや、それもまたフリで、中盤から様々な時代の人々と出会う異世界転生みたいになっていきました。
実母、義母、青鷺にインコにモフモフ、未知の人との出会いは今までのジブリが辿ってきた道を共に歩いてる感覚になりました。
積み木が崩れると世界が崩れるというのも、現実のシリーズもののメタファーだと思いますし、アニメ作りの困難さ、苦悩や葛藤がファンタジーとして盛り込まれているように思えました。それが故に置いてけぼりにされる事も多々ありましたが、アニメの美麗さに助けられて世界観についていくことができました。ラストがあっさりだったのは惜しいですが。
アニメーションのクオリティはジブリど真ん中の素晴らしいクオリティでした。カラフルな絵柄から躍動感溢れるアクション、不思議な生き物たちのデザイン、背景の炎や水の美しさ、新海監督の描く美麗な背景とはまた違う魅力は10年のブランクがあろうと関係なしで健在でした。
ふわふわたちや、ムキムキインコたちのデザインが絶妙なラインをついてきてくれてとても好きでした。
ジブリ飯、今作ではそこまで映っていませんでしたが、外はサクッと中はふんわりの食パンに結構大きめのバターを塗りたくって、ジャムを目一杯塗り塗りして、口周りがベチャベチャになっちゃうくらいの美味い朝飯を頬張るシーン、素晴らしい飯テロでした。簡単にできそうですが、食費とカロリーが中々…💦。いつかはやってみたいやつです。
「君たちはどう生きるか」というタイトルの通り、宮崎駿監督が恐らく人生のフィナーレを飾るために今作は作られたんだろうなと思います。
ジブリ作品や、様々な名作たちの要素を混ぜながらも、宮崎駿監督の色は決して濁さず、自分自身の想いをこれでもかとアニメに詰め込み、メッセージ性を静かに残してエンドロールへと突入する流れは、巨匠が撮る最後の作品なんだな…とどこか寂しく思えてしまいました。
登場してきたキャラクターとの関係性も、自身の両親や息子の吾郎監督、ジブリのメンバーたちや、復帰のきっかけを与えた新たな日本を代表するアニメ映画の監督たちとの繋がりをモチーフに描いているかのようでした。
決してリアルタイムで観てきたわけではないのに、なぜこんなにも心がくすぐられるんだろうなと思いました。
エンドロールは米津玄師さんの「地球儀」が優しく包み込んでくれます。誰が声を当てているのか分からない状態で観るのは不思議な感覚でしたが、本職の声優さんはほとんどいないだろうなと思って流れてくる名前を見たら、この人が当ててたんだと目が大きくなるばかりでした。可もなく不可もなくって感じの声の演技でしたが、多くのジブリ作品の中でも棒読みチックなシーンはかなり少なく、全体的に聞きやすかったのが良かったです。
ジブリと共に生きてきた人の目からどう映るのかは分かりませんが、ライトファンな自分にとっては不可思議な世界を堪能できる楽しい奇怪な作品になっていたなと思います。もう少し長くても良かったかなとは思いましたが、これが集大成か、としたを唸ってしまいました。アニメの力はやはり凄いです。
鑑賞日 7/14
鑑賞時間 10:45〜13:05
座席 L-22