「数々の名場面オマージュ⭐でも新しい物語」君たちはどう生きるか Myさんの映画レビュー(感想・評価)
数々の名場面オマージュ⭐でも新しい物語
宮崎監督が子どもの時に感動した小説『君たちはどう生きるか』は私も数年前に読んだ。小説の内容とは全然違う。子どもの時に受けた感動を、大人になってから、こんなに大きく想像の翼を広げて形にしたのですね。
見る前の予想として、主人公は『風立ちぬ』の少年時代みたいな昭和初期の雰囲気かな、てとこだけ当たって、物語は先の読めない冒険ファンタジーへと展開してゆき、面白かった!
近日中に2回目絶対見る!
随所にこれまでの宮崎作品の名場面を彷彿とさせ、これが集大成として最後となるかもしれないんだな…と郷愁のような切なさを感じながらも、物語は先の読めない展開で、新しい作品になってる。
数々の名場面を思い出す…
冒頭は風立ちぬ、
裕福で「ある所にはある」火垂るの墓、
幼少時に母を亡くす悲しみ(実際は病気回復し生き延びたけど)はずっと宮崎監督のトラウマになってるんだな。トトロのサツキ…。
引越先で不思議な建物に惹かれ冒険が始まるのは思い出のマーニー、森を歩く風景も。
塔の中、トンネルをくぐり羽根を拾い辿ってゆくのは、どんぐり拾いトトロを探すメイ。夕暮れに捜索されてる。
アオサギはもののけ姫のジコ坊。
ばあや達はポニョのひまわりの家のおばあちゃん達。
読書して泣く姿、虹色に光る洞窟は耳をすませば。
弓矢がひとりでに強力に射抜く、アシタカ。
ワラワラは可愛くなったコダマ。
いちごジャムいっぱいの顔は、ポニョみたいに無邪気だけど、口が血まみれのサンかもしれない。
ドロドロになる母の姿はハウルもシシ神も。
離れのトイレに行くのは キキ。
キリコに抱きつく姿は「家族」と慕うマルクル。
たくさんの船は 紅の豚の飛行機の墓場。
扉で異世界につながる ハウルの扉。
星降る夜は ハウルの魔法の夜。
木の根を伝い壁を登る パズー。
火の中の母はナウシカのようだけど後半は明るいカルシファー。
大伯父がいたあづま屋はジーナの秘密の場所。
爪に火を灯すヒミは 湯婆の魔法
(でも、ナウシカでは水と風に敵対して描いた火を、今回は魅力的に描き、監督が火に対し謝り 火も含めた森羅万象の大切さを描き直したように思う。)
敵もいつの間にか妙な味方になっちゃうのが、千と千尋などジブリ作品の味。
今回は飛行機は無く、鳥がたくさん。主人公は飛ばない。これにはどんな意味があるのかな?
前半、新海誠監督の『星を追う子ども』の「それは、さよならを言うための旅」の雰囲気を感じた。隕石は『君の名は。』を思い出し…。
かつて新海監督が、宮崎監督への憧れと尊敬と超えたい想いを込めた作品『星を…』から12年後、宮崎監督が「あの時は手紙をありがとう、返事が遅れたけれど、君の作品も素敵だよ、君は君の道を行け」と返事を送ったように感じた。言葉でそんなことは言わないけど。エンドロールでスタッフにコミックスウェーブフィルムの名を見つけて、やっぱり!と感激。すずめも、ジブリオマージュ場面がたくさんあったから、宮崎監督なりのおちゃめな返事かな。
スタジオポノックの名もあり、ジブリを巣立った米林監督も協力したのね。マーニーを思い出す場面が多かったのは、宮崎監督からマロ監督への感謝の手紙かも。
スタジオ地図も協力。落ちて崩れた赤いバラは、竜とそばかす姫かな。地図作品は時かけが好きだけど他は私はあまり好きじゃなくてちゃんと見てない。細田守好きな人から見たら、オマージュ場面が色々見つかるのかもしれない。
スタジオカラーは庵野秀明。エヴァっぽいシーンは思い当たらないけど、父への複雑な感情、エディプスコンプレックス的なシンジとも共通点あるかな。
ジブリは後継者問題が話題になるけど、直接の後継者でなくとも、宮崎監督の想いは、新海誠や庵野秀明、近藤嘉宏や米林昌宏や百瀬義行のほか、細田守、ディズニーやピクサーなど世界中のアニメ監督を育ててきたんだなと実感して胸が熱くなった。
「世界を君に託したい。美しい世界を作るのだ」これまで宮崎監督にリスペクトオマージュを捧げてきた後輩達に、宮崎監督からの感謝や期待を込めた、茶目っ気ある返事の仕方がこの映画なのだなと思う。