「作品としてのみ語るならば」君たちはどう生きるか Fさんの映画レビュー(感想・評価)
作品としてのみ語るならば
ジブリ作品は好きですが、背景事情で物語を語るほどは知らないので。
戦争を描くかと思えば火事で拍子抜けしましたが「母の死」への後悔と死への誘惑を断ち切って、新しい家族を受けていれて生きるかどうか、という物語として見ました。
(母そっくりの後妻は意味不明。似せなくても成り立つのになぜ?父親の選択へのキモさが勝り、不快感がノイズ。)
慣れない場所を家とすることへの抵抗から、不思議な鳥と曰くつきの塔に魅せられる。新しい人間関係からの逃避の自傷が痛々しい。
「死」に近いところへ誘われる子どもを引き戻す愛ある叱咤としての矢。祝福されるか不安な子を産むことへの不安から体調を崩し閉じこもった後妻。心配だから現実逃避の遊びに付いてきてくれる世話人の優しさ。あの世からの誘惑に攻撃的に抗うも興味津々で近づき、様子のおかしい母とは呼べない人を救いに行けず、まずは死んだはずの母を探しに行ってしまう子ども。
「塔」へ行ってからは、子どもが人の死を理解するためのプロセスを描いた絵本のような解釈で楽しみました。
(PRの名誉あるメインなのに)ちょっとキモい青鷺に途中からはクスッと笑わせられました。当初は塔へガンガン誘ってきたくせに「行かない方がいい」ってどの口が言っているのか?とツッコミ。
母親まがいのものを作って見せてくるくだりも、VRなんかで死者を再現しようとする技術のことを考えたり。
大叔父の概念が壊さないように守っていた綺麗なはずの「あの世」。確かに幼い頃って誰か絶対的に偉い人が1人いて、全部コントロールしてるものかと思っていた時があったなあと思いつつ。
囚われた鳥たちのことを思えば、解放したれよ…と哀れに思いつつ、食べようとする武器がリアルすぎてまたノイズ。あの役に立たない王様はなんだ。一回あの場所に入れてたんだからまたコソコソ入らなくても。謎。
火で死んだ母親が、実は火を自由自在に扱えていて、もし苦しんでいなかったのなら、そしてあの世でも楽しく暮らせていたならと願う心に共感しました。
どんな遊びや夢でも、必ず現実に戻る時は来るものですが、そこに浸るより、自分で現実に戻ることを選べた方がいいし、新しい形の家族と現実を生きた方がいいと、そういう結びは良かったと思います。
焼け野原ってセリフがあったので、その後の東京大空襲→それでも生きる!を描くと思ったら戦争をモノローグだけで終わらせてスパンっと終わったので、ちょっぴり不完全燃焼。
ただ何回も見るかと聞かれたらうーん…という感じです。私は時間をかけて自分なりに「人の死」を乗り越えてしまっているので、この物語は必要ないみたいです。
お子さんにとって怖いシーンもあるようですが、上記したような「人の死」を見せる目的なら語り継がれる作品になるのかも。
それはまた別のお話…って感じですかね。
久しぶりに展開も何もわからないワクワクを味わえたので0.5追加です。